2010/07/07

フィッティング


忙しすぎると仕事が荒れてしまう、と、このテーラー業界の先輩方は言おっしゃられます。僕は自身で切ったり縫ったりする立場でないですから、実際に職人的な疲労による仕事の荒れ、というのは直接的に関係ありませんが、やはり適量の充実した、良いリズムというのはあるように感じます。

職人と違い、過去・現在・未来に渡って、部屋にこもることを運命づけられた人間でもなく、逆にお客様に一番近い位置で日々自由に行動し、感じ、考え、世間話、そして対話をする中で、いくつかのキーワードを拾い、仮説を立てて、その方の哲学を込め、その方のその後の求めている人生にフィットした素材とデザインの服を誂えます。

実質的な意味で僕は 『フィッター』 作業をやらせていただいております。物自体のクオリティを微分的に追究することと、使い道を提案する積分発想を同時に爆発させます。

スーツ、シャツ、ネクタイ、ボウタイ、ベルト、手帳、財布、ヴェスト、タキシード、靴下、カシミアニット、、、、顧客クライアントのみのフルハンドメイドのサービスも交じっていますが、ほぼそれらを網羅することができました。これは僕自身が利用したいサービスでもあり、好みがうるさいアイテムのすべてをオーダーメイドすることは夢でした。

その立場ゆえ、ということもあるのですが、逆にオーダーメイドできないものについてイライラさせられることが多くなってきました。家電製品や携帯電話、スニーカーにいたるまで、みなさん結構そういうものは、配給制度のように一方的なもんだからしかたない、と信じ込まされています。しかし、たとえば、この部分は掃除しやすくするために、こういう曲線のほうがいイイ、とか、使う立場から赤ペン修正して、フィードバックできたらいいのに、と思うことがあります。

オーダーメイド、カスタムの場合、次回の発注の際に、改善点をフィードバックして、一歩ずつ着実に『物』を『自分の使いやすい愛用品へと』進化させていくことができます。しかし、家電製品などは、せっかく相性がイイ、使いやすくて気に入ったデザインを見つけたとしても、毎回毎回モデルチェンジで 『ガラガラポン』をやってしまうので、一旦、すべてをチャラにして、新しいマニュアル首っ引きで、 “こんなもんでましたけど!” というメーカーの配給品を受け取り、初心者としての操作学習が一から再スタートします。

キーボードにせっかく習熟したのに、新しい不満足なモデルに買い替えないとならない、、、それがそんなもんなんだ、と信じ込まされそうになります。オーダーメイドできないもの、というのは、スケジュール管理下でモデルチェンジが行われ、永遠に不満足を抱き合わせで買わされますので、永遠にものを買い続けることを期待されるわけですね。 『 そもそも ○○ は、なぜ必要だったっけ?』と考えてみることも、たまには大事ですね。

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