2009/08/23

残暑、旅、佇まい


昨日土曜日は、谷中の全生庵本堂にて、園朝寄席を観に行きました。今年で25回目とのこと。かれこれ7、8年前にいったきり今回で2度目ですか。台東区という土地は佇まいも情緒もここかしこにある街で飽きません。寄席の冒頭にご挨拶をされた方がすてきことをおっしゃっておられました。

街並みは人並みからつくられる

人並みは人々の佇まいからつくられる

人々の佇まいは、人々の生き様からつくられる。

おそらく、台東区谷中界隈が情緒ゆたかな佇まいを保持している理由は、上の三行なのだろうと思いました。そう考えると、街並み含めて、歴史・伝統に対する、尊敬の姿勢がこの街の人々の生き様の集合体になっていて、結果美しい街並みが保持されているのでしょうね。



クラシックに対するレスペクト、まさにスーツにしてもそういうフィーチャーを感じさせたい、と思います。スタイルは生き様、できることならスーツの佇まいもそういうものであって欲しいと感じます。旅が人生のライフワークであるT氏のジャケットとトラウザーズ。ゆったりした豪華客船が似合いそうな優雅な上下。モノクロの写真を旅先で撮られる彼のスタイルには常に旅、とキーワードが感じられます。


2009/08/16

採寸とフィッティング、その他


本日は、同業の方々に採寸全般と注意点などを2時間ちかくスピーチしてきました。ほんと技術と学習について、つくづく考えるのですが、人様に教えると、教えながら逆に自分自身のいろんなところが客観的にみえてきます。

そして、よくやっている部分、と自己評価している点で曖昧なところがあったり、まだまだだな、と認識しているところが、自己評価以上に詳しくよく研究できている、ということがわかったりと、沢山発見があります。同時に、自身のキャリアをスタートさせたころの思い出が蘇ります。

話しながら、全然別の頭の片隅で、追いかけていた思考など備忘録がわりに僕自身の確認のため、文字にしておきます。

基本的には、採寸はスムーズにパパっとやった方がスマートに見えますが、あいまいな点がある時はとことんしつこく測り直したり、かっこうわるかろうが、再度、あるいは再再度、何度でも何度でも納得いくまで測って、数字を採ってくるという行動原則をつくることが大事ですね。

袖丈ひとつにしても、シャツの出方、シャツの手首周りのサイズ、時計のサイズ、着用するスーツの裏地の関係、などいろんな変動要素があって、完璧主義的に納得する袖周りを出現させるのも結構気を使うはずです。トラウザーズの丈にしても、履く靴によって、その靴の甲の高さによっても違いますし、もちろん、裾幅を19.5㎝にするのか、23㎝にするのかによっても違ってきます。

僕自身も大先輩にくらべれば、キャリアは浅いんでしょうが、思い返せば、2000年ごろから本格的に、いろんな先輩方から教えていただいた中で、参考にした意見、参考にしなかった意見、いろいろあります。

思い出してみれば実に面白いです。トラッド、クラシックに関しては、尊敬の念100%なので98%以上のアドヴァイスは素直に聴いてきた(その通りにやってきた)のですが、はっきりと『それは違う』と思って、次の日から正反対のことをした教えが僕には2点あります。

参考までに、採寸とは全く関係なくて接客についてですが、1点は、ビスポーク・テーラーとして、まずお客様とは『政治』 『宗教』 『野球』 の3つの話題はするな、それはタブーだ、というアドヴァイスでした。

これはその場では、きちんとノートに取ってうなずいていましたが、絶対にそれは違う、と瞬間的に深い部分での確信があったので、先輩には内緒で、その次の日にすぐ、顧客営業先で『政治』 『宗教』 『野球』の話題をエンジン全開でやってみました。

結果的はどうなったかというと、新規のお客様からスーツ2着分の注文をいただきました。妙な反骨精神エネルギーに着火されたせいで、スパークした状態で、プレゼンがノリまくったという理由もあったかもしれませんが、自分自身に関しては、これは当てはまらないのだな、ということを実証できて、未知の自信と力にできました。

取捨選択も大事ですね。クラシックやトラッドにしても、叩き台である点がすばらしいですね。ある意味先輩のアドヴァイスもたたき台ですから、いかようにも自身の栄養にすれば良いわけですね。

もうひとつは、売り手が、すでにもっている“良いスーツ”についての知識や、仕様など、手の内を最初から全部出してはいけない、小出しにすべきだ、でないと、お客様は飽きてくる、ちょっとずつちょっとずつ出して行って、ず~っとお付き合いしていくのが大事、というこの商売のコツのようなものでした。これも、僕は最初から違う、と感じたので一度も従いませんでした。

なぜならば、新規で1着目であっても、予算の範囲内で現時点で一番最高というものを提供できたとしても、そこからまだまだもっともっと良いフィッティングがあるかもしれないし、もっと良い仕様が出現するはずで、機械縫製であろうと、パターンオーダーであろうと、その範囲内で厳しい審美眼で仕上がったスーツを自己評価した時、美しさの先はまだあるわけだし、現時点でできる全力をやって、手のうち全部出してもまだ時間が足りないだろう、と感じるからです。これは現在でも同じです。

たとえ、それで、なるほどこれが君の最高で、君的には出し尽したわけね、と言われて顧客との関係が終わりになったとしても、全くもって上等よ、という気概が大事ですね。なんとなれば、顧客とテーラーの最高の人間関係づくりが出来る、より豊かな関係性がつくれる人はこの世界にその人以外にまだ数十億人いるわけですから。自身の活躍するステージを一層上げていく良い機会だと、割り切ってより正確にリアリティを感じれば良いだけですね。

仮に『イイものを安く』の姿勢が、極端に行き過ぎてしまうと、徹底してモノだけにフォーカスした付き合いになってしまうので、それは量販店にお任せしたほうが賢いわけです。いろんな意味で、『お互いの利のキャッチボール』が豊かな形で育っていく関係でないと、愉しくならないですし、本当の豊かさも共有できませんから、さらに良き付き合いへと進んでいけばよいわけですね。

船場吉兆や、世の中を賑わせたもろもろの事件のように、良いものをとにかくちょっとでも安く食べたいという買い手と、それに応えてしまう売り手の度外れた“WIN-LOSE合戦”になってしまうと、あらゆる意味での『利自体』が痩せ衰えていく関係になりますね。

価格競争にならないゆとりを持った関係づくりが最高ですね。一年に一度は、海外視察が出来て、その見聞をアドヴァイスとして、あるいは商品開発としてフィードバック、R&D出来たり、感謝の気持ちを持って、快くお客様にお土産を買ってきたくなったりする関係をつくるのには、充分考えられた納得できる価格設定が大事、ということになりますね。あれれ、以上、真面目に小難しいことを書きました。

2009/08/15

For 2010's SPRING & SUMMER Party

英国逸品生地も出揃って来て、2009AWがそろそろスタートという時期が来ました。しかしながら、気が早いのですが、来年の2010春夏用のパーティー企画を考えていました。(今年は神楽坂サロン開店でちょっと準備が無理でしたね)Jicoo号のパーティー開催は、2010年の8月になります。来年の今頃ですね。お客様である、K君のNY時代の大親友というつながりがあることが発覚した豪君。彼が夢を形にしたというJicoo号にて。

一昨年一度、乗っていて、えらく感動したものの、今までパーティーするまではいかなかったのでした。やっぱり改めてその気持ち良さを認識しました。すでに、ブランドのパーティなどで使われていて認知度も上がってきていますね。比較的良心的な価格で、パーティーの相談にのってくれる豪くん。ちょっとした50人~100人くらいのパーティーはお気軽に彼にご連絡(こちらにメール・フォーマットあります)ください。来年夏は、ぜひ、お客様にキャットウォークを歩いていただきたい、と考えております。



日の出埠頭は8時、9時、10時出航。お台場で食事などする場合は、8時30分、930、1030で埠頭まで迎えに来てもらえます。まだまだ夏まっさかり、ちょっとしたクールな納涼船がわりに、素敵なナイトクルーズですね。


2009/08/12

『THE AVENGERS』 --- Individual High Fashion


先日、アマゾンで『THE AVENGERS(1988年製作)』を購入して、最近また観直しています。やはり、はキーワード的には、
Classic×IndividualFuture です。最初にこれを観たのは、やはり10年前、二子玉川のおしゃれな美容室でした。ヘアカットしてもらいながら、鏡に映った画面を観ていました。

主役の英国紳士キャラが分かりやすいジョン・スティード役のレイフ・ファインズ、そして、爆発的なリビドーを持て余すマッド・サイエンティスト役(をえらく楽しそうに演じているの)がショーンコネりー。後々のガタカやキル・ビルのキャラクターのイメージ・ソースになったのではと思われる、ユマ・サーマン演じるエマ・ピール。



ストーリーも、なにかとタイムリーだな~という感じがします。気象兵器が登場しますね。今や、世界の商品相場にしてもアメリカのハリケーンの進路に左右される以上、限度を知らない資本の論理は、気象などすでにSF的想像力を超えていて、きっとコントロール可能なのではないか?と個人的には思っています。

日本にとっても、ある意味“革命”ともいえる今月末?に向けてあと20日間。何が起こっても不思議ではありません!?。異常気象、地震、世情不安、、、、世界は劇場型リアリティだからおもしろいですね!

このアヴンジャーズに登場するジャグアーに象徴されるクラシック・ギアのように、インディヴィジュアルでクラシックな意匠の中に、ものすごいテクノロジー内臓、というようなテイストが愉快ですね。外観は、ノスタルジックだったり、クラシックだったりするけれど、中身はものすごいスーパー・パフォーマンス、というようなスタイルですね。



現在、エドワード@神楽坂の営業日・時間は、毎週火曜日定休日、午前8時~午後8時まで。となっております。
午前10時以前の時間帯(※午前6時~8時は予約すれば可能です)に来ていただけますと、早割り10%割引となります。
さて、さて、そろそろ秋冬のお知らせを。ちなみに、今週(8月10~8月16日)のご注文ですと少なくとも9月14日の週には仕上がります。9月14日の週とはどういう週かというと、東京の平均最低気温が21.7度という肌持ち。1年52週のスケジュールで言うと38週目。一年の73%が過ぎた、という時期ですね、はやいものですね。

写真一番上)ユマ・サーマンが“ブードル”というジェントルマンズクラブに乱入するシーンはなかなかいいですね。

写真二番目)ロンドン、ノッティング・ヒルのマーケットに売られているツイード。今年も、100年着られるツイードをご用意いたします。

写真三番目)“V and A”ロンドン、ヴィクトリア・アルバート・ミュージーアムにあるトミー・ナッターの作品。

写真四番目)解説文、ここで、V & A では、無料閲覧で、小学生の女の子が課外授業でクロエのドレスをスケッチしてたりするんですね、かないません。

ヴィンテージはよくよく見ていると、どえらいフューチャーに見えてきません?逆に僕には、2、3年前後の直近・短期流行というのが一番古臭く、エッジが鈍く見えてしまいます。今の時代、インディヴィジュアルで適度にクラシックであることが、一番のハイ・ファッションではないでしょうか。

2009/08/05

早起きチーム、

タケシ氏ワイフ、マキちゃん(とマッフィーとユッキーさん)が日本橋に朝ごはん食べに行くということで、御近所ということもあって、ユニオンジャック屋根のミニ・クーパー(とそれを運転するおしゃれな女子、これはほんと絵になります、イギリス好きには永遠の萌えですね)にピックアップしてもらい、マンダリン38階 『K'shiki』にて朝ごはんしました。

といっても実のところ基本早起きの僕はすでに朝食は済ませていたので、ケシキの朝ごはんを僕にとっての昼ごはんにしよう、というエコノミックな計画で、いってきました。朝の和定食はお漬物も充実し、おいしかったです。

ホテルの朝ごはんは、メリットが沢山あります。朝、出勤前のスーパー・ビジネスマン(日・アジア系2、外国人8くらいの割合)のスーツスタイルをじっくり観察できる、というのがまず、うれしいところです。

トラウザーズはループなしで、仕立てていて、ウエストのベルト分の厚みをかせいでいる(細く見せているんだな)ということもここで、認識しました。5人中、4人の紳士がループなしでした(※一昨年夏の観察)

このケシキも好きですが、新橋にある、コンラッドホテルの『ゴードン・ラムゼイ』の朝ビュッフェもそうとう素敵です。味だけだったら、ここが一番好みです、イギリスびいきということ抜きにしてもそうですね。

ゴードンラムゼイでも、ケシキでも、ウエスティンのガーデンでもそうなのですが、ポロシャツによれよれのコットン・パンツで登場する紳士は必ずアジア人だ、ということも良くわかりました。つくづく、よし今年の冬はタイドアップするぞ、と決心してしまいます。

日本に輸入されてきた、妙なセレブ文化なのか、雑誌で特集されるハリウッドスターのプライベート映像に影響をうけたのかわかりませんが、アジア人の方ほど、ここぞ、というちょっとした場所での、カジュアルスタイルが多いです。緊張することも、ルールにしたがうことも、楽しみ方のひとつなのかも、という感覚が少ないのかもしれません。

アングロサクソンの方々には、日本人は、ただでさえ体格で負けているのですが、その上にスーツびしっと朝から決められると、ちょっとかないません。彼らはほとんど最低ジャケットは着用しています。その半分以上がネクタイまでキリリと締めております。

このネクタイまできりっと締めて、朝から気合十分の感じで朝ごはんを食べている彼らの佇まいを見ているだけで、こちらもどこからともなく闘志が湧いてきて、う~む、彼らには負けられん、と、手前勝手にモーチベーションが上がってきます。しかしながら、スーツ姿見て隣で勝手に熱くなっている人間、これはそうとうヘンな日本人ですね。

さて話変わって、上写真、ユッキーが手に持っているのが、最近オリジナルで作った、EDWARDのツーリスト・バックです。たいがい、黒がグレイの地味なバックが多いのですが、僕がなんとなくそれが好きじゃなくて、EDWARDカラーで不織布で作りました。

バーガンディを深く少しパープルを加えたような色彩に、金でEの文字が入っています。そうとう評判よいです。早朝、芝生の上で単品を撮影したのですが、ユッキーが持っているほうが、色が良く出ています。

2009/08/01

神楽坂の夏、一息入れて


神楽連の阿波踊りも終わり、(本日アップしようとしましたが、連続写真にしたいため、本日はタイムアップ)ちょっとした達成感とともに、一息いれております。今夜も、神楽坂で一番愛用させていただいているカフェ・レストランの 『Artdish(アーディッシュ)』の外のテーブルにて、ゆっくりと食事を楽しみました。オーナーのSさんともお話できて、おいしい時間をすごすことができて、ああ、2009年夏はすばらしい日々だった、と数年後にも記憶に残ることだろう、と確信しました。※↑、余談ながら、僕的には、着物の帯の位置は、腰高にし過ぎて、西洋人風にするよりも、右女性のように、昔からのまっとうな位置にした着こなしのほうが、日本的な美意識と風情を感じます。


このお店は、実は最初は、カフェ飯的食事なんだろうな、とタカをくくっていましたが、口にした時、これは只者ではない!(とはいっても、それほどわたしは自分の味覚に自信あるわけではありませんが)と感じたのでした。それから、僕のお客様でも相当なグルメ・ツワモノを連れて来て食べさせてみて、やはりみな感動する模様で、ますますここは相当おいしい店だ、と確信を深めたのでした。

本日、Sさんとお話をして、もろもろ納得しました。おいしいものを作るアプローチの仕方が非常に本質的(世の中的には個性的)だったのですが、野菜・肉の材料の調達から調理まで、独自のアプローチをされておられる、という点で、まあとにかくストレートに、ものすごくおいしいので、今週などは4、5日通っているくらいの、この引力の謎が解けた感じでした。お料理ができあがるまでの、人と人のつながりを大切にされておられるから、これだけ、おいしいものができるのですね。



アートは、なにも美術館だけにあるのではないよな~と実感します。料理といえば、市川のイタリアンVのみどりさんが作る前菜の色合いや佇まいにも凄いアートを感じさせられますし、話は飛びますが、雨の日の神楽坂の路地裏の石畳を歩く猫の面構え、お茶の水駅ホームに立つ人々と人々越しに見える萌える緑にも、アートを感じます。

最近のビスポークスーツ・オタク的ネタでいえば、セヴィルロー・ヤーン・カウントの生地(セヴィル・ローの職人たちが、あらゆる生地のなかかから、このくらいの生地が実は一番仕立て映えするんだよな、と選ぶ、いたずらに高価さを競った生地ではない、ほどよい打ち込みの生地)のバランスの良い艶にも職人の感性に響くアートを感じましたね。


夏の黄昏、(はマッカラーズの小説ですか)を感じるキャナル・カフェの風景ももちろん常に絵になります。飯田橋、神楽坂、日々、そのすばらしさを実感しております。