2008/03/30

GENTLEMAN'S VOYAGE 2



『人間であることのプレジャー (pleasure:楽しみ、愉快、満足、)』

このフレーズが気に入った。ほとんどの凡人は多かれ少なかれ、人間であることの“プレッシャー(pressure:圧力、苦悩、重圧、)”を生きているだろうから。

会うと、のびのび呼吸できて子供のようなプレジャーな気分になる相手もいれば、会うと一言一言を注意しながら喋らないとならないプレッシャーな相手もいる。どちらにしても、状況に応じて、必要な人間だ。

K氏からススメられて 『桃田有造の痛快一代記、われファッション・ブランドを愛す』出石尚三著を読んだ。

とことん好きなことを追究しながら売上100億円を超す企業にまで持っていった人物ならではの説得力。ひたすらまわりを楽しくさせた男、凡人がついつい発動しがちな相手に向けての高圧的なプレッシャーを、楽しくやる気にさせるプレジャーへと変える男。そういう印象を持った。

右脳満開の手紙文、自身の感覚で、美しいもの、美しい生活を追い求めた人。


私は人間が好きだ。 / 人生を美しいと信じている。 / 人間であることのプレジャー、人間であることを謳歌すること。衣装や服飾はそのためのものでなければならない。、、、、、 P161より

リッツ・カールトンのクレド(credos:信条)のようなものだろうか、“10マキシムズ(maxims:格言、金言、処世訓)”というものがあったらしい(P162~)。それは、

1 Humanity 人間愛
2  Creativeness 創造力
3  Flexibility 柔軟な考え方
4  Organization 組織
5  Sensibility  感受性
6  Passion  情熱
7  Responsibility 責任感
8  Knowledge  知識
9  Open-mindedness広い心
10  Aspiration  ロマン


もうひとつ、線を引いときたい(実際は借りてる本なので、引いてません)箇所は、

桃田の考え方はこうである。たしかにこの広い世の中には芸術品のように美しい服がある。そして日本には決定的に不足しているから、輸入されるべきである。しかし美しい服は、服単独で存在するわけではない。人間が着ることによって、完成品となる。そしてまた人間は、生活背景があってこそ存在するものである。ということは美しい服と、美しい生活とは不即不離の関係にあるのだ、と。 P140より

先日のジョブス氏のスピーチとともに、パワーが沸いてくる素晴らしい内容でした。

2008/03/27

EDWARD Suit 3


昨日は納品のお客様に小岩の僕の自宅兼オフィスまでご足労いただいた。到着が午後6時だったこともあり、自宅にいる母が普通に夕食を用意してくれて一杯やりつつご一緒にごはんを食べた。ごはんしながら世間話、人生話、そしてビスポーク。

われながら相当に珍しい接客スタイルで、かなり楽しかった。食事をしたりお茶したりしながら話すほうが、会話に抜けがあって、自由に希望やライフスタイルなどが聴けるのかもしれない。

しかしながらママごはんを食べながら、FRATELLI TALLIA DI DELFINO【フラテッリ・タリアディ・デルフィノ】がですね~とかBAMBOO(竹)素材がどうだのこうだの素晴らしいですね~とオーダー話をやりとりしている図は、絵的にあり得ない感じで愉快でした。

しかしよく考えれば普通のことだ。今日、昼間プリンターの修理に来ていたエンジニアの方の作業が12時にかかったので一緒に昼ごはんを食べた。パソコン設定苦労ネタで盛り上がって僕が無線LANの設定で挫折したままだと話したら、明日午前中にたまたま余っているから、ご好意で純正部品持参してもう一度設定しに自宅に来てくださるとのこと。まことにありがたいです。

人との出会いは、一期一会でしばしば『瓢箪から駒』。想定外の展開になる。『小岩のアラン・フラッサー』そしてプライベートのビスポークスタイルに近づくために、立ち上げ期にママちゃんご飯も追い風になってくれるのかもしれない。


※BAMBOO(竹)バンブーは、やわらかいシャリ感、清涼感のある生地です。この生地は100%BAMBOOで黒、260g/mのもの。リネンやコットンのようなざっくりとした素材感ではなく、シルクのようにしなやかで、上質なモヘアのような光沢感がある。竹の繊維を溶かして、やわらかく再生させた繊維。吸湿性に優れ、涼感があり、綿や麻よりシワになりにくい特長を持っているので、竹は夏服の粋であるし、未来の定番、必然かもしれません。

※画像は、自宅の作業台、兼食台。朝焼け夕焼けの光の下で能率があがります。

2008/03/21

GENTLEMAN'S VOYAGE 1




歩いている。

急いで歩くと目立ってしまうが、僕は少々右足のほうが短い。昔は靴底を調整したりして、なんとか矯正しよう、と試みていたもののもともとの長さが違うから、いろいろやっても結局はズレてくる。

ジムでも、下がった右肩を筋肉によって高く上げようと矯正気味にトレーニングしていたが、うまくいかない。こどもの頃、橇(そり)で木に衝突し左足骨折して骨が接ぐ際にバランスが崩れた。

しかしながら、今ではそれはそれで将来おじいさんになるのを待たずして、早々にスネークウッド(※)の美しい杖を持つ口実ができた、と楽しみにしている。

渡辺実氏の『銀座壹番館物語』の『ヘンリー・プールに教えられた洋服の真髄』という147ページ目、ある老紳士の描写で、


、、、、、肉体的欠点を少しも隠すことなく、服は体にしっくりなじんで、
美しいシルエットをつくっているのですね。、、、、


体型の欠点は、対処療法で直す場合と、自然にまかせる場合と考え方はいろいろある。必要に迫られてごまかさねばならない時もあるだろうし。

そういえば引越ししたので、名刺を新しく作る際に裏面になにか好きなことばでも入れようかな、と考えていて、好きな映画のワン・シーン、、、をいろいろ考えていた。

あったあった、何度観ても飽きない映画、

砂漠に取り残された仲間を救うため、決死の思いで辿り着いたばかりの目的地から再びひとりで灼熱の砂漠に引き返そうとする主人公。その主人公を引き留めようとして、相棒が(砂漠に取り残された人間はもう生きてはいないだろう、諦めるべきだ、という気持ちで)放った言葉


“It is written.”   それは運命だ


救出に成功して主人公がぽろっと言う、


“Nothing is written.” 運命などないのだ。


                       “ LAWRENCE OF ARABIA ”


しかしさらにそれに応えて、仲間は前言とは違った意味でつぶやいていたかもしれない、


“まさにこれこそが運命なのだ”  


みなさんはどちらでしょう?どっちにしても、すてきじゃないですか。どちらも言っていることは同じでしょう、という過激かつ優雅な考え方もあります。その時、その状況で、より強烈に精神を揺さぶるほうが、そのひとにとっての答えなんでしょう。


※ 画像は3月19日エド本人、ロジャー氏撮影。

※ スネークウッド
杖と離れるとアラームが鳴る、とか、忘れ物防止用のICタグをオプションでつけないと、ボケ気味で持ち歩くのはちょっと恐怖を感じる価格ですね。南米のやギアナが原産。極めて重厚で水に入れても沈む。心材が蛇の皮や象形文字のように見えることから、スネークウッドやレター(文字)ウッドと呼ばれる。硬さと木目の美しさから「木のダイヤ」「木の宝石」といわれる。模様が細かく均一に出ているほど美しいとされ、規格サイズに製材されず流通し、重さで値段が決まるほど貴重で高価な銘木。こちらのブログに、わかりやすくかかれていました。

※ P.S.
そういえば、水曜日は新宿伊勢丹 『UK WEEK』の「ロンドン カット」 に行った。さすがに歴史ゆえか、僕も現在取り扱っている老舗“デイビス・アンド・サン”も数点展示されていました。ホームページの対談も面白いしワクワクしますね。とは言っても、ぜひ来日してビスポークして欲しい、こんな魅力的なテーラーも発見した。 この戯れテーラーの隣の関連動画“ハ刺し”中の職人『Savile row Padding』も一見の価値ありだ。それから、たまたま通りがかりで、物凄い展示がさりげなく催されていて驚いた。ルオーはフェルメールと同じくらい好きな画家。ギャルリー ためなが 『ルオー展』。

2008/03/18

EDWARD knowledge 1




本日、同業者とイタリアン・スーツについて話していました。最近ぼくは彼に『ナポリ仕立て(小学館)』という本をプレゼントしました。この本はドラマティックに遠い歴史のドラマに誘われて職人の価値を大切にする文化的な背景と空気感が味わえます。

過去に師匠格から、イタリアン・スーツは大まかに以下4つを頭に置いて観察すべしと習いました。イタリアンスーツに関しては、確かに通常のブランド品と同じような見方はできません。

1 ナンバー1と認識されるのが、フル・オーダーのテーラーの中でも一部のアルティジャーノ(職人)の一群。イタリア国内で8000軒前後あるテーラーの頂点に君臨するカラチェニと呼ばれる5人のテーラー。ミラノ、ローマ、中央イタリア・マルケ地方にいて、創始者はドミニコ・カラチェニ。カラチェニとタグに表記できるの本家だけで後の人間たちは自分の名前を“カラチェニ”の前に入れなければならない、とミラノの裁判所で決められている。

2 次に位置するのが、サルトリア・プロダクション(仕立て屋縫製による生産方式)。ブランドとしてはブリオーニ、キトン、ベルベスト、イザイア、アットリーニ、セント・アンドリュース、バルベラなど。既製服づくりと昔ながらのビスポークが可能な人たち。エルメス、ランバン、プラダ、アルニス、エトロなどの縫製ファクトリーでもある。
 
3 3番手のグループは2つに分かれる。

(A) グループは伝統的なサルトリア手法を使用して工業化したグループ、ゼニア(日本人ビジネスマンは、このブランドが世界1だと思っているケースが多い)、カナーリ、コルネリアーニ、ヒルトンタイムなど。

(B) スティリスタ(デザイナー)のグループ。サンローラン、ヴァレンティノ、ロメオ・ジリ(僕がイタリアンスーツを最初に買ったのがこのブランドだった。)、ランバン、ディオール、フェラガモ、アルマーニなどの縫製レベル。

4 その他、メイドイン・イタリー既成ノーブランド商品群。

ものづくりと文化的背景、そしていわゆるブランドな威光を放っているスーツといえるのは1と2。ちなみに、“存在の耐えられない甘さ”を体現したら圧倒的(エド主観コメント)なマルチェロ・マストロヤンニの魅力を支えていたのが1、とは大いに納得だ。

2008/03/16

EDWARD Suit 2



商品クオリティ、好み反映の完璧度、納期までの時間、コスト、ブランド知名度、、、、ものさしの要素は無限にありますから、オーダーとして、どれが一番優れているかという問題ではありません。すべての選択はお客様の状況、価値観、考え方によって、どれがベストか変わってきます。正解はありません。

ちなみに、当管理人のエドワードが現在、販売しているスーツは 『 4 』 です。トータルなバランス感覚から4をお薦めしています。

あくまでももし自分が客なら、という視点で購入を考えたときに、僕としてはまず基本的なビジネススーツのワードローブ(グレー・ネイビー・黒の無地・ストライプ、シングルスーツ、ダブルブレステッドスーツ、3ピース・スーツの組合せ)を揃えます。まずは基本的な春夏(いわゆるSSもの)・秋冬(いわゆるAWもの)の2分法でのベイシックなアイテムを揃えます。

次の段階として、四季折々、ワクワクできるよう御洒落に楽しむ段階に進みます。春はサマーウールやモヘア、夏はリネンやコットンなど秋はツイードジャケット、冬はフラノやカシミアといった感じで揃えます。そしてタキシードを一生のうち3回以上着る方なら、ワードローブに加えることをオススメします。

時間とお金をかけて一点豪華主義で究極の1着を購入するより、ある程度満足できる自分用に仕立てられたスーツを“Time時/Place場所/Occasion状況”に対応できるように揃えます。余裕ができたら、日本の美しい四季を楽しむことのできる理想的なワードローブを完成させようと考えながら目の前の買うべき1着を決定します。

納得できる品質、予算、時間、労力、満足度をモノサシにしながら、1着のスーツを単発として考えるのではなく、トータルで『ワードローブ・コンストラクション』の完成を考えます。たかがスーツ、されどスーツ。キャラクター確立においてスーツは一部分過ぎません。そして完璧なスーツですら、パーツに過ぎません。なぜなら最終的には、そこに登場する一番の主役は人間だからです。

たかが1着、されど1着。各人がこの『完璧なるスーツ』さらに言えば、『物自体』というものに対する健全な懐疑の念を持ち、健全な直観で未来を一望しつつ、自分に合ったクオリティを決めるのが粋であり“知恵”であり、楽しみです。

2008/03/15

EDWARD Suit 3



EDWARDが提案する、オーダーメイド・スーツについて。スーツをはじめて購入される方から 『そもそもオーダーメイド・スーツについて教えてください』 と質問があったので、普段口頭で説明していることを書きました。

オーダーメイド・スーツといっても、いろいろあります。一般的には、ショップで展示されている既成のスーツから、ほとんどの部分を手縫いで仕立てられるフルハンドメイドのスーツまであります。価格帯は1、2、3、4それぞれに生地によっておおよそ5万円~50万円まであり、5のフルハンドメイドの場合は30万円以上からになっています。

1.既製服 → 2.パターンオーダー → 3.イージーオーダー → 4.カスタムオーダー( ※ EDWARD SUIT ) → 5.フルハンドメイド

 1 → 5 に向かうにつれて、工程ごとの選択・自由度が上がる分、フィット感や好みのフィーチャー(仕様・特徴)が反映されていく度合いが上がっていきます。とはいっても、必ずしも → の方向で満足度が大きくなる、というわけでもありません。

たとえば、既成スーツでも全体が好みの感じでフィットしていて、生地も仕立ても全体の雰囲気も御自身にピッタリ合っていれば、すぐその場で持ち帰れますし、すぐに欲しい・すぐに着たいという状況ではなおさらありがたいものですね。帰り道はうれしくてワクワクしますし。

2 のパターンオーダーは、採寸用ゲージ(実際のサンプル・スーツ)を着用してからその差寸で出し(長く)・詰め(短く)の数字を決めます。既製服と同じ工場でサンプルゲージごとの固定型紙で生産します。細かい補正はできません。そのかわり納期も早いですし工賃も安いです。

3 のイージーオーダーは、採寸用ゲージ(この部分はパターンオーダーと同じ)を着用してその差寸の数字を決めますが、そこから各人ごとの型紙を差寸をもとにして作ります。通常オーダーメイド・スーツの工場で作られます。パターン・オーダー以上に細かく補正ができます。

4 のカスタムオーダーは、採寸用ゲージがありません。型紙をゼロがら起こします。採寸するフィッターの数字で新しい型紙を起こします。イージー・オーダー以上に細かい補正ができます。オーダーメイド専用工場で仕立てられます。仮縫いはありません。お仕立てにおいては手縫いの部分とマシンの部分があります。

5 フルハンドメイドも型紙ゼロから起こします。仮縫いを何度か繰り返し行い、各工程にもじっくり時間も人件費もじっくりかけて納得いくまで究極の1着を仕立てます。ほとんどの部分を手縫いで行います。

そこで、1~5全体を見渡して、どれを選択するかという判断になります。

(とりあえず続きは、明日)

2008/03/13

ロマンチシズム一滴



ロマンティック(romantic)
1.伝奇的。空想的。浪漫的。
2.雰囲気などの甘美なさま。

ロマンチシズム(romanticism)
1.フランス大革命後から19世紀初めにヨーロッパに展開された文学上・芸術上の思潮・運動のひとつ、、、
2.夢や空想の世界にあこがれ、現実を逃避し、甘い情感や感傷を好む傾向。

ドラマチック(dramatic)
1.劇的、波乱に富むさま。

               広辞苑(1992年10月9日 第四版)


この話は好きだ
この感覚は心に残る
そのフレーズにハッとさせられる

ふとしたコトバに美しい世界像がバーンと閃いた、、、

自然の美しい景色を見ながら、なんてことない世間話をしながら
のびのびした朗らかな気分でいると、そんな最高の感覚がやってくる。
またまた、K氏のご好意で湘南の海や港街の風景を楽しむことができた。

静かだった2月が過ぎ、先々週あたりからお客様アポが増え(ありがとうございます)バタバタしていたけれど、僕の頭の中はその一方で、全く別世界を夢想していて、それはそれでまた別軸で忙しい。書きたい素敵なネタが余ってダブついている。

妄想や空想が無意識的に本業と一致していく感じが大事だ。ちょっとした感覚がアイディアやアイデンティティに結実していくのは幸せなこと。ここぞという時に強い“前向き感”があれば、それらは仕事ともキッチリと一致していく(はずだ)。

どんどん研ぎ澄まされて小説読んでても物語を額面通り受け取るのでなく、
その描き出す世界観や微量のフィーリングをきっかけに
頭の中がグランド・ツアーを始める

ある人にとっては、通り過ぎていく話
別の人にとっては、かけがえのない話
人生という長旅を、楽しめる感覚は人それぞれ、


最近印象に残った話
“何の気なしに抜くのをやめて”

櫻井氏の談話、
“その車はまるでエイのように地面にへばりついて、信じられないようなスピードで走っている。それが式場君の輸入してきたポルシェ904だった。”


   画像 )エイは靴になっても優雅なんですね。



※ Galuchat(ガルーシャ)、Stingray(スティングレー):エイ革。Shagreen(シャグリーン):粒起皮・鮫皮。明るい色や淡い色は、黒のものよりも均一染めの加工が難しい。日本でも装飾武具装飾として刀の柄(つか)や、正倉院所蔵の「金銀鈿荘唐大刀(きんぎんでんかざりのからたち)」にも使われている。 1000年以上前から使用されている。博物館などで“鮫革”と呼ばれていても、実際はエイ革ということも多いでしょうね。 全日本爬虫類皮革産業協同組合の解説

2008/03/06

いつ種を蒔くかということを知っている者



“神主”の起源はそういうところだったらしい。

先日4日(火曜日)朝6時30分から九段会館にて朝の勉強会に出席し、神社の宮司さんのお話を聴いた。神社に参拝する際に水で清める行為作法について、、、

“左手を洗って、右手を洗って、手で口を漱(すす)ぐ、左手を洗う”という基本的なことから

“昇殿参拝(しょうでんさんぱい:お祓いの後、本殿にて玉串を奉り、参拝すること)ではネクタイ着用、モーニング着用”が理想的、とか

“厄年の御祓いに、ジーンズで来られるのはちょっとどうかと、、、”

などなど、たくさんの学びがあった。

礼儀作法は、それをしなくちゃ恥ずかしい、などと堅苦しく考えるのではなくて、ある意味、その作法をする(なぞる)ことは、先祖の歴史と知恵を追体験できる実にありがたい機会だ、と考えて堂々としているほうがいい。

所作としては既に日本人のDNAに刷り込まれているだろうし、その作法が継承されているのは、突き詰めると、歴史がそれを“知恵”だと認めているからだ。自分なりに文化的背景を楽しみながら、少しずつ理解して、ゆっくり深く味わう。

歴史や伝統、ファッションの世界でもいわゆる“トラッド”な意匠は“ゆっくり深く味わう”という姿勢に大して、そのままゆっくり深く付き合ってくれる。

仕事柄、お仕立てするお客様は、自然でありながら静かな自信に満ちて、世界中どこにいようと、何があろうと、堂々とした佇まいであらんことを、と願いながらビスポークしている。

タキシードの着こなしを日本人であるぼくらはある程度努力して学んで身につける。しかし、そのマインドまでは遠い。しかしそれを知りたい。マインドは世界共通だから、和のマインドを通して世界を理解できる。

ドレス・コードだけでは不十分だ。そのマインド・コードも感じたい。自分を知り、歴史も知り、とことん豊かに楽しむために。