2008/02/28

春の予感、春の余寒。



ファッション、そしてスタイルをあれこれ楽しく思い巡らせるに、何ものにも左右されない不動の装い、というのもちょっとツマラらない。だからといってメディアからの、特にファッション雑誌からの時々刻々の流行に左右されるのも退屈だ。

今年は“アメリカントラッドのニュアンス”がキーワードだという事で、よしよしアメリカなんだな、そうかワクワクするぜ!という感性ならば、その感性を生かして充分に楽しめるだろうが世の中は幸いなことにそういう人ばかりではない。

で、何か流動的なものはないか、と考える。むしろ左右されたくなるような、流動的な要素はないだろうか、と。

春の陽気の一方で、ぶり返す寒さを“余寒”というらしい。今日は陽気に誘われて、友人のプレゼントのために本屋に行ったついでに購入した、『俳句歳時記』(角川文庫、ちなみに角川春樹氏が詠む句は好きだ)を読みながら、妄想が展開し始めた。

場所はセヴィルロウ@ロンドンのパブ。僕がギネスを一口飲んでいる。そこに、老舗“アンダーソン&シェパード”勤続40年の老テーラーが隣に座る。そして隣の男が、東の果ての国からやってきたテーラー業の人間だと気づいて、話し掛けてくる。

発祥の地ゆえの、深い文化と歴史。そして現場のたくさんの貴重な物語を語ってくれる。最後に笑いながら言った

「君は何しにここに来たんだい?学ぶことはあったかい?」

そこで僕が応える。

「ぼくがいる国は、ここロンドンと違って、4つの季節とその前後の細やかな移りかわりを楽しむことができます。たとえば日本の春は、一発で場面が劇的に変化する“Spring”、というよりも、2つの季節を行ったり来たりする“Spiral staircase(らせん階段)”のような感じです。顧客とのビスポークはもちろんのこと、人々は日々、『季節とのビスポーク』を楽しんでいます」

余寒も予感も。そんな日本の四季を楽しみながら、誇りを持って、彼らを羨ましがらせてみたい。

2008/02/26

The first SPRING storm 春一番


※カントリージャケット(Country jaket)スポーツ・ジャケットの一種。本来は地方のカントリーハウスやカントリー・クラブで着用したスポーティな替え上衣。とりわけノーフォーク・タイプやシューティング(射撃)タイプのそれを指した。現在では一般に変わりデザイン(ひじ当てや肩当てや背バンドや変わり型ポケットなど)を特徴とするツイード系の服を指している。(※『男の服飾事典』 メンズクラブ)

友人のP氏と話していたら、イギリス人の友人のオートダイヤル機能には、“H”と“M”と“C”の文字があるんだ、と言っていた。それぞれ、“Home”“Mobile”“Country House”のことらしい。おおおさすが、と思い、その瞬間から、カントリーハウス幻想(妄想)が僕の中で大きく広がった。カントリー・スーツ、カントリー・ジャケット、カントリー・ウェア、カントリー・ツイード、、、。いつもの、ハンディ服飾事典にもいくつか登場する。

実家に帰省し、最近ようやく手入れした庭で、(ここは田舎にある僕の実家だ、ではなくここはカントリーハウスだ、という見立て妄想中なのだ)読書&アフタヌーンティー。読んでいる本は、タキの『ハイ・ライフ』、最近Kさんから教えてもらったすばらしいエッセイ・ブログに登場していて、実家に帰るなり記憶を辿り、本棚に直行した。

なるほど、当時姉貴から教えてもらってけっこう好きだったこの本、いってみればセレブリティカルチャーの本だったんだと再確認。当時の子どもだった僕にはセレブリティという概念すら無くて、当時は大藪春彦の小説『汚れた英雄』と同じ匂いがするということで読んでいた。

AGRITOURをお洒落に楽しんだり、ピクニックをお洒落に楽しんだり、パブリック・フットパスとは言わないまでも、公園散歩を楽しんだり、とたくさんのカントリー擬似体験は身近にできる。お洒落に楽しむ場合は、カントリーを単なる“田舎”とは訳さないとのことらしい。

田園?豊かな自然を持つ土地、とかそういう訳し方なのだろうか。いずれにしろ、とても優雅でおだやかな時間。記憶と失われた時を求めて、急遽、実家の庭に椅子を出して楽しんだ。気持ちよかった。

2008/02/11

的を射抜く



そうありたい、と願っている。パス回しばかりで一向にシュートの意志が見えないようではいけない。ビリヤードで的球を狙うとき、文章を書くとき、お客さまとビスポークしているとき、そしてプレゼントを贈るとき!的を打ち抜けた瞬間というのは不思議なもので、自分はど真ん中を射抜いた、ということをアクションした瞬間に知っている、悟っている。でも今回は射抜かれてしまった。



僕はお酒は強くないが楽しめる。“コニャック”は今年、仲間のロジャー氏との会話の中で2008年のちょっとしたキーワードになっているアイテムだった。贈っていただいたのは、かれこれ知り合って6、7年になるのだろうか、SさんFさんご夫婦から、僕のお祝いごとで。Sさんは、インスピレーションに満ちて、上品で、エロティックで、美しいものたちからの周波数を受けとめているひとだ。



プレゼントという行為は本当に楽しい。私が日々お金稼ぐ必要ない立場になったら、えんえんと知り会いにプレゼントを贈ることをやってみたい。結構深い世界だ。そして楽しい。今でも、旅行先でも、ああこれは○○さんが喜ぶだろうな、とか洋服屋に行っても、ああこれは○○さんの△△のアイテムをあわせたらめちゃめちゃカッコいいな、とかそういうことばかり考えてしまう。そういう時、精神はすこぶる健康でしあわせだ。

2008/02/06

Boutonniere その1 タイト・ジャケットの工夫。



Boutonniere、ブートニエールは「ボタン穴」を意味するフランス語で、広義では衿穴(眠り穴)と、そこに差すための花まで含む。自分用に仕立てているスーツはシルエットがやはりタイトだから、留めるボタンは常に過労気味だ。ついには生地の縫いつけ部分から伸びてきて最後はボロリと昇天してしまう。昨年仕立てたばかりのハリスツイードのジャケットも第2ボタンが伸びてしまって時間の問題で取れそうだ。

なぜ第2ボタンかというと、あらかじめ第1ボタンは装着頻度が高いのがわかっているので、第1ボタンの引っ張り消耗度数を少しでも減らすために、第2ボタンばかりを使っているうちに先に伸びてしまったのだ。確かにジャケットのインナーに厚着するスタイル、そして、そもそもがタイトすぎるからそうなるんだ、ということだろうが、生地にボタンを縫いこんであるという加工自体を根本的に考えてみた。

いつもピアスのトップを耳から引っ張っているような不安がある。そもそも一点引っ張り剛性、なんて想定されてない生地。縫い付けられている狭い範囲に集中的に力が掛からないように、できるだけ全体に引っ張られる力が分散されて消耗しないで済む方法があるはずだ。定期的にボタンが取れてくれて、メンテナンスにかこつけて次なるセールス展開が容易、という考えはこの際捨てる。スタッズボタンとしての機能を持つT字カフリンクス型のスタイルはどうかと思って出来上がった。



で、ちょっとしたアクセントにもなるし、手持ちのカフリンクスでも使えるものがあるはずだ。ナチュラルなロジャーブランドのカフリンクスを装着。さっそく、東京積雪の日曜日夜、知人のホームパーティにこれで参加した。黒の細コーデユロイ(生地は逆目、しかしコーデュロイはいつも逆目がいいとも限らない。昨年自分用に発注した淡ベージュのコーデュロイは逆目より順目の方がよりイメージに近かったとトライ・アンド・エラー中)結構使える。



ボタンを気にせず安心してタイトなジャケットが着られる。好き嫌いの問題かもしれないが、これで普通のボタン型カフリンクスをつけると、外から見ても何も変わらない。ただボタンまわりが消耗品ではなくなった、という点が違っている。

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2008/02/01

Lounge“THE AQUARIUM”@DUNHILL GINZA


Koh “伝説の男”Miyake氏、20年前からテーラーとして現在のスタイルを確立しています。

美しいもの、素敵なもの、ワクワクさせるものに対する天才的なアンテナを持つK氏。Lounge“THE AQUARIUM”@DUNHILL GINZAは、氏から教えていただき、銀座ど真ん中の静かな隠れ家ラウンジとして打ち合わせに使わせてもらっています。それにしても、世の中は狭いですね。



お気に入りの生地を手に入れたK氏の、ちょっとしたリクエストに応えようと思い、氏にKoh Miyake氏を紹介しました。2人の会話で、世の中の狭さをつくづく実感することとなりました。約20年ほど前から現在へ到るまで、テーラー業界の人と人の出会い。みながそれぞれに影響を受けつつ、与えつつ、教えつつ、教えられつつ、歴史があります。

ラペル周辺のディティールをボンヤリ見ながら、ぼんやりと空想します。お気に入りのスーツ⇒眠り穴、ラペル後のフックを手縫いで加工⇒フラワーホルダー選び⇒生けるお花を選んであしらう、準備万端整。ちょっとした緑のきれいな公園にでも、ワインと手作りサンドイッチを持って散歩に、あるいは畑に出掛ける。何て気持ちいい休日でしょうか。

ゆるく、おひとり様でも、みんなとでもO.K.。お洒落して、ちょっとジェームス・アイボリー映画な感じと、自然や人間に対する見識と知恵をあわせ持った、未来的なアウトドア・スタイル。シルクハットにステッキだけではない新しい紳士文化に向かって、着実にGENTLEMAN'S VOYAGEを楽しみたいです。