2014/01/31

Supreme mode and Edward Boys

 

数世紀にわたる服飾史を俯瞰した時、“ モード mode ” とは “ 出し抜く ” ことだ、ということがわかります。現在のように、少々高いお金をかけてモード服と呼ばれるものを購入し、モードなグループに入るという行為ほど本来のモードからかけ離れたものありません。


Dresssir®(ドレッサー:特殊スタイリスト)のboysたちにまず一番最初に指示するのは、

1.眉毛の形を作り込みすぎないで、自分が理想と思う形につくらないで、自然のままにすること。どうしても、という時も最低限整える程度。

2.髪型は、決してエアリーヘアにせず、スリーク・スタイル(7・3に整え、刈り上げ過ぎて今風にもしない)にすること。

昨今の20代前後の男子は、細眉で美容室メイドのヘアスタイルですから、上の2点をやると、一気に労せずして、同世代スタイルを出し抜けます。みんなが労力という名の足し算するところを、何もしないことによって違いを作ります。

眉は、自分でザッと整えるか、ガチのヘアメイクのプロに本気でナチュラル仕上げにしてもらうか、どちらかです。素人が自分の感性で理想的な眉形をつくろうとするから失敗してしまいます。眉によって表現されるのはその人独特の“素朴さ”ですし、そこまでが眉ができる最大限の仕事です。

その骨格で、その眉形は無いだろう、という強引な矛盾を作り出してしまいます。レベルの高いクラシックなお店であっても、スタッフがそのような雰囲気だと、感性のレベルの天井・限界を感じて息が詰まって、こちらは呼吸が苦しくなってしまいます。

19歳の国枝(くにえだ)君。先日、六本木の森アーツセンターギャラリーへ“ラファエル前派展”を観に行き、4時間のトレーニング。縫製職人ではなくドレッサー候補なので、手の仕事ではなく目・口・ハートの仕事です。

日本は製造業においても、手の人間、いわゆる職人は優秀な方がたくさんおられます。昨年、新潟の燕市小林研業の社長になぜに日本はモノづくりが優秀なのに国の豊かさにそれが反映されないのかを質問しました。

氏の応えは『PRが下手だから』でした。つまり、手(ものづくり)は十二分なのに、目(目利き・評価)、口(プレゼンテーション)、ハート(情熱)が不足というところです。目、口、ハートの使い方は自然の美や歴史や古典、哲学などの教養の力が必要で、それが世界へむけてのプレゼンの場面では底力になるように感じます。

ドレッサーたちも、色や形などのアイディアは、古典絵画・自然・歴史から学んでもらいます。ついでに言うと当日、煙草をやめることを宣言したので、お祝いにオリジナルのタイを贈りました。どなたでも、彼が一服しているところを見かけたら、ネクタイがもらえます(笑)


高校時代はずっとキックボクシング一筋でしたが、現在は物静かに闘志を燃やす青年です。髪型は仕事中はかっちり撫で付けて。カントリースタイルの日や休日はバーバーカットのままで自然にしていてもかまいません。後ろ姿がこれくらい端正だと、20歳とは思えない大人っぽくて、むしろ超越した雰囲気が漂います。

自然に鍛え上げた背中が洋服以上のプレゼンスになります。健康体の20代で、洋服で体型をカバーするためにオーダーしたい、などと言ってるような甘ったれているヒマがあったら、毎日、腹筋・背筋・スクワットを30回やって半年後にご来店ください。いかなる分野でもお金のかからないアタリマエの努力がプレゼンス(存在感・おし出し)を向上させます。歩く、とか早寝早起きとかきれいな挨拶とか。。


国枝君の先輩格である小島君。現在、熱海で修行中。小島君も野球でピッチャー一筋だったので、体格的に恵まれています。昭和の香りのする、気概のある男子の友達が多いのは小島君の人徳です。本格的にクラシックに徹することで昨今のファッションの世界から見ても、むしろモード的にも周囲を“出し抜いて”います。





出し抜きすぎて、もはや昭和の理容室に飾ってある写真くらいの勢いです。いいんです!ちょうどそれくらいで。精一杯きちんとした正統派を目指すという姿勢こそが大事です。たとえそれがパイプ椅子でも。手持ちの武器を総動員して最大限の努力で戦う、というマインドが自由度の高い無敵の大人をつくります。


オーダーメイド・ガイド Ⅱの撮影風景。この撮影用に購入したのは、代官山のヴィンテージ・ショップ “ デーヴィッツ ” にて購入したブルーのライダーズ・ジャケット(クライアントである山口氏用に購入)とブレイシーズのみ。トラウザーズは、ウエスト120cm用の方のゲージ・サンプル。この撮影で、小島君の俳優として才能を持つことがわかりました。プロデューサー、カメラマン、全員の意見でした。


こちらは、スリーク・スタイルが得意なAlex君。クリスマス・パーティーでも小島君とペアになってのドレス・ウォークで、優雅で妖艶なアドリブで観客を愉しませてくれました。この顔でベタのモードをまとうと、東京というモード空間において一撃で悲しいくらい効果的に埋没します。都市の臆病さである、無名性を生きるより、粒立ちの良い有名を生きたほうが愉しくないですか。


スコットランド土産のボウモアのミニボトルを贈ると、その場でさっそく味見をしてみた午前11時。ネクタイ、ポケットチーフ、いずれも正統派スタイルなので極めて定型的ですが、それで良いのです。スタイルの本質・核心部分は自分とスタイルの関係性なので、それが誰かと被ろうが違おうが知ったことではありません。見た目が同じでもマインドが違えばそれは立派な違いです。


さて、こちらは今本君。昨年のピクニックの際、誕生日だったので贈ったフレッド・アステアモデルのコーレスポンデント・シューズを履いています。ツイードスタイル、正確には国産・尾州産のヴィンテージ生地。淡いグリーンのホームスパンです。一番英国的(スコットランド・カントリー的)な風合い・色合いです。英国の田園風景の色そのものといえます。


今本君世代、トガったもの、スルドいもの、極端なもの、不自然で化学的素材・色彩・デザインのケミカルなものを好む傾向のある世代です。そこでむしろ柔らかく優しい素材を選び、本格的にクラシックな装いに仕上げてみせる。これ以上の逆張り、出し抜きはありません。緻密にマーケティングしても、あっさりと悠然とそれを逆に張ってみせる。Dresssir® はDandy予備軍です。


番外編)この兄弟生地(すこしトーンが違う)がこちら。レディズの3ピースでも製作しました。包み釦はスーツ生地と共生地を使います。違いを作らないという点でこれは引き算を意味します。同じトーン&カラーで続ける、ということです。綺麗なシャツの中はイタリアの老舗ネクタイブランドであるマリネッラのショート・アスコット。袖口は、スコットランドエジンバラでお土産として写真Hさんのために購入したアラン織りのスリーブ・ウォーマー。

2014/01/25

Advanced country classic " turtan "

 
 

はや1月も後半。今年は気持ちよく晴れ渡る日も続いて、なんとなく皆さんの機嫌も良い今日この頃。天気の良い日中は、お気に入りの音楽聞きながらゆっくり散歩するだけでも幸せを感じます。お天気次第で、着こなしの愉しみも広がります。

さて、洋服業界的にはそろそろ春夏物、という流れにあるのですが、エドワードエクリュ洋装店的には、まだまだ秋冬の装いを作り続けております。ツイードのジャケットはもちろん季節に合わせるわけですが、場面にも合わせて使います。

たとえば、1. City  2. Country  3. Formal と3区分で装いを組み立てますが、身近なところでたとえますと、街中のビジネス街で働くウィークデイの1.の着こなしから、休日には、2 のカントリーウェア(ドレッシング)の装いとなります。街中でも、たとえば銀座を散歩する休日に、ツイードもよろしいでしょう。

ちなみに、2014年のエドワードエクリュは、定休日を水曜日、日曜日と設定させていただいております。通常営業時間は午前9時から午後6時です。ご予約・ご紹介のみの営業ですが、ご予約のご相談で時間はある程度調整可能となっております。

スタッフの装いも、月・火・木はCityのビジネス寄りのスーツ・スタイル、金・土は、Country寄りのカントリードレス(カジュアル)となっております。もちろん、水曜日、日曜日もカントリーとなります。なんとなく、ロンドンの街中以上にスコットランドの田舎のほうが気になる、という志向性が出てしまっています(笑)

一番上は、スコットランドのアイラ島のミルにて現地で入手したラフロイグのヴィンテージ・タータンです。淡いグリーンのベースに淡く自然なコントラストがスコットランドのキュンとくる草原の風景を思わせます。日ごろロイヤル・カスタマーでありながら、多くを教えてくださるクライアントへの贈り物として2ピースでジャケット+ウェストコートを製作中です。

ヴィンテージだけに、下ごしらえに時間がかかりました。贅沢な世界です。時間の経過で柄が少し歪んでいたので、須田町の縮絨専門店で一度やり、それでも納得できなかったので、教えていただいた名古屋のシュランク専門業者で再度柄を整えていただき、製作にかかっています。もはや、本物の贅沢は田舎と歴史の中にある、ということを体現しているかのようです。


さて、さらにカントリー・スタイル、いやもはやカントリー・スピリッツをCityに持ち込む猛者どもも現れ始めました。昨年あたりからツイードに合わせるタイの相談を数人から承っておりました。そう簡単な合わせではありません。ヘビーオンスのツイードに負けないVゾーンは、高度な応用問題といえます。
 
ビジネスに使うツワモノたちは 敢えて白のリネンのポケットチーフに合わせて、ONの状況を表現したり、素材感が強いものの、オーガニックながらパワーのあるネクタイを合わせるなどの挑戦で切り込んでいきます。
 
この方向性はウォーム・ビズやクール・ビズのような機能志向によって色気を失くすドレッシング・スタイルとは違い、やわらかいメッセージ性と挑戦的なスピリッツがあります。クラシックな装いへのノスタルジーや素朴さを志向しています。
 
一方、年間を通して変わらずタキシードは作りつづけております。ブラック・タイはその手結びのボウタイから始まって、オニキスや白蝶貝のカフス&スタッズボタン、ロングホーズ、キャップ・トウのカーフの靴、、、など装い文化の優雅な集合体です。そろそろ、春夏の声も遠くで聞きながら、頭の片隅では2014年の柔らかいスーツに思いを馳せてしまいます。
 

 


2014/01/09

熱海から哲学を越える旅へ


 
2013年末、11月ごろからインターナショナルに活躍されておられるアカデミック界の方々とのご縁が続きました。いずれも文学・歴史・哲学に関わる方々でした。Gentlman'sVoyageの気が遠くなるような道中にて何かいままでとは違う人生の"Quest(探究)"が来た、という感覚がありました。何か違う流れが来ている、違う匂いがする、と。
 
そんな時、ジェッ子こと伊藤善之氏より、三重の医師で脳の進化(人化)を巡る究極の研究結果そしてAnswer を持っている人物がおられて、話を聞きたいんだけど、一緒に聞きませんか?という誘いがありました。世界に対するひとつのAnswerを導き出されておられるとのことで、非常に興味をそそられて行くことにしました。
 
未だ霊的な体験はしたことがなく、そのような能力も持っていないのですが、身近なジンクスを守ったり、小さなサインは信じています。その日、お手洗いに行った時、おもしろい数字と出会いました。5は、よく人生に登場する数字です。ご縁があるのかもしれません。4桁のぞろ目は時刻として目にしますが、5桁は珍しいです。

 
 
熱海の1泊2日で確かに世界観が更新させられました。哲学科で学んで、卒業後も無意識的に考えてきた最新の世界観だったのですが、たしかに書き換えることになりました。いっしょに参加していたのは、伊藤君、カリスマ編集者、建築会社社長、メディカル媒体経営及び慶応大学講師、理学療法士、というクルー(敢えて、Questな時間だったのでCrewというイメージ)でした。
 
。。。。人類は、紛争や戦争を意図的に生み出したり、核兵器を作ったり、貧困と富裕の格差を様々な手法を通して生み出したり、人類の手によって人類が生存しにくい方向へどんどん推し進めていく。なぜ?どうして?その明確な理由は何?
 
。。。。それは、救いようの無いほど、めっぽうややこしい生き物の集合体である人類は、今ここにフツーに生きていられる、というごく真っ当な有難味を(困難が存在しないところで)理解し、感謝し、味わうことが出来ない。敢えて次々にハンパなく困難な苦しみを感じないと有難味を感じることが出来ないから。。。。

 

2014年1月4日の朝までは、上のようなおおざっぱな答え?イメージ?の世界観を持っていたのですが、ついに哲学科以来、約25年ぶりに世界の見立てを大はばに更新しました。

世に存在するものは、大きくいうと2つに分けられます。シンプルで深いもの、複雑で浅いもの。前者は不安になるほど物足りないので、エネルギーの持っていき場が内省的な方向に進むしかないもの。一方、後者は表層的でどんどんモデルチェンジして横展開して、いつまでも浅い、という方向性。

いずれが優だ、劣だではなく、いずれも元気に存在していて、多様性が確保されている状態が理想ですね。ただ、現在は全体からみると、圧倒的に複雑で浅い、という方向のもの一辺倒なので、過激にシンプルで深いという枠(わく)はガラ空きです。

話が少々それましたが学生当時は、遠くにあるもの、複雑なもの、理解できないものを真実のように捉えてありがたがる、という当時の哲学の風潮に違和感を持っていたので大学の卒論はイマニュアル・カント(独)の認識論を選びました。

が、今回はそれ以上にシンプルでニュートラルでごく身近でわかりやすいところから脳・人・世界に対する答えを出してこられました。紳士風情の旅人であるGentleman'sVoyageも、HumanQuestの大いなる世界水路の傍らを旅したいものだと考えた次第です。

2014/01/01

2014年、あけましておめでとうございます。

 

振り返るに、2013年は Very EDWARDECRUSなスタイルで営業させていただき感謝しています。まことにありがとうございます。

服飾業界では非常識と言われますが、全身一式を勝手に製作するというスタイルでありながら、純度を落とさず成長できているのは、理解と夢と(もしかすると?)先見の明をもっておられるクライアントのお陰です。

このまま、この不思議で特殊なトラッド・ショップが発展していくとなると、最終的にどうなるのだろうか、という実験心、好奇心でもかまいません。面白がりながら、ご贔屓いただけたらうれしく存じます。

さて、今年は午(うま)年です。

個人的な話でありますが、私は丙午(ひのえうま)、B型、乙女座、ペガサスという現実離れしたスペックを背負っておりますが、この特性に正直にまっすぐ全開ですっ飛ばしてまいりますので、よろしくご理解ご鞭撻のほど、お願い致します。

ペガサス的に世界を飛翔するにあたり、むしろふだんは鬼のように地味にワーカホリックに徹する所存です。ほとんどの魚が水の中以外の環境を知らないように、いやいや知らなくて結構、特に2014年は仕事の中に棲もうと思っています。

年の瀬いろんなことがありました。父親譲りの勝負強いネタ体質で、クリスマスの12月24日、はじめての娘も誕生しました。いっそ名前はマリアかノエルでしょ、ということでベタのど真ん中に決めました。もっとも今はマリアというより毬(まり)って風貌です。。

さて昨夜大晦日は本郷三丁目の佐山氏の道場で過ごしました。年が変わる30分前に皆様より一足先にひとり道場を出てタクシーで靖国をまわり神楽坂のサロンまで帰って来ました。そのまま今年の狙い通り仕事に没頭しながら年を越すことが出来ました。

一番やりたいことをやりたいようにやれている、ということにまず感謝ですが、世界に一軒くらいこんな洋服屋があってもいいじゃないだろうか、という3カメ目線のストロング・スタイルで粛々と前進いたします。

今年のイベント的なことで言うと、8月にパーティーと書いていましたが、現実的に考えて5月の早めに変更し、キャナル・カフェでカクテル・パーティーを催そうと思います。紳士は白系の涼しげな3ピーススタイル。女性はカクテルドレスというきわめて優雅なスタイルをドレス・コードにさせていただきます。

エドワードのオリジナルのカッティングでパリの工房で製作しているレディスのリトル・ブラック・ドレスの展開も徐々に増やそうと思います。女性のドレスはやっぱり掛け値なく素敵です。

2009年夏にキャナル・カフェで催したパーティーの時のようにデッキからの注目を集めることと思いますが、それも劇場型で面白がってみればよろしいかと存じます。夏は印象派の絵画のような設定でクラシックなピクニックを究めたいところです。

今年も皆様にとってすばらしく実りある、そして喜びに溢れた一年であることを祈りつつ。

下動画は、年末カラオケ行く機会あり、あれこれ動画も見ていてたまたま見つけたものですが、後半6分前後の、色即是空な表情はついついリピートしてしまいました。。イヴニングドレスも、大人の女性の魅力を引き出すトリガーですね。。