2010/05/09

先日の観劇の感想です、

なんだかんだ言って、今の日本は平和なものですね。先日 『帰ってきたおばあちゃん』を 観劇してつくづく感じました。飯田橋のお堀縁カフェで、あれこれ悠長に考えていられてブログに書き綴ったりできること自体が、平和ボケともいえるほど至極のんきですね。しかしながら、のんきはのんきなりに、ヘビー級の物語を反芻しながら、大いに考えさせられた次第です。(飯田橋キャナルカフェは本読んだり、じっくり考え事するのにいい場所です)

僕は映画は時々観ますが、舞台は直接ご縁があった範囲でしか観ることがありません。お客様でもある方の、晴れ舞台に花を買ってステージで手渡す、というのは大きな喜びです。しかし先日は母の日だったので、花屋は行列、行列並ぶのが好きではないので、急遽、やっぱり花より団子だ!と都合良く考え、池袋サンシャインの『Maison Kayser』でスイーツを買いました。選ぶのが花以上にえらく楽しかったんで、花はみなさん沢山もらっておられるし、今後は僕は花束替わりに美味いスイーツ、というスタイルを究めようと思いましたよ。

神田さち子さんとは、知人とのつながりで、ホームパーティーに御呼ばれした際ご一緒したり、すばらしいご飯を御馳走やおもてなしいただいたり、というお付き合いだったのですが、このたび彼女のライフワークである舞台を観ることができ、感動するとともに、彼女がやっておられることはまさに『大事業』だな、という認識を持ちました。

わたしの場合、歴史の教科書をいくら読んでも頭に入らなかったことが、この舞台を観て強烈な体験として意識の中に入ってきました。たびたび、戦争体験の問題は史実と、歴史認識の違いを指摘しあう険悪な場になりがちですが、この舞台を観ていると、いろんな気づきがあって、現状、泥沼のような戦後の問題が、どのような経過を辿って解決されていくのかまでもが、イメージできたような気がします。

どのような立場であってもいかなる国籍でも、必死で生き抜こうとする一人の人間の話は感動を誘いますし、何か人々の心の壁を溶かす大きな力を持つのですね。神田さんの名熱演を通して描き上げられる『鈴木春代』さんの人生を追体験して、個人のエネルギーとその人のパーソナリティーは国境の壁も超える、、、という納得もしました。

中国公演も大評判だっととのことですが、ある意味、物語の内容上、非常に神経を使う場だったり、いわば歴史認識が違ったりする立場からは、一触即発、ヘタすれば針のムシロとなるテーマなのでしょうが、立場は違えど、徐々にみなが深く共感して、主人公の人生に尊敬の念と感動させられることが、まさに神田さんの活動が平和づくりの『大事業』であるゆえんだと思いました。人間の生き方という普遍的な物語にはつくづく感動させられます。

文献的に、あるいは取材を通して、正確な史実を求めようという方向性は必要なのでしょうが、現状、歴史認識の違いは、ほとんどの場合、再び一層大きくて根深い“争い”のきっかけとなっています。世界各国の民族対立の現状や歴史的事実を見ても、“正確な史実を追求しよう”という対立する立場からの熱い意志が、純度100%の新たなるいがみ合いネタ(定期的にリニューアルして鮮度保ちます)作り、という結果になっていることは皮肉なものですね。

人は入口(史実の追求)⇒出口(争い)を、はなれたところから子供のように単純に見つめないので、永遠に同じパターンの行動を繰り返します。子どもは単純なので、入口と出口を素直にまっすぐ見るので騙されにくかったり、本質をストレートに理解できるのでしょうね。

たとえば、世界的な問題である、二酸化炭素削減を目的とした世界的な“排出権取引”(ここが入口)によって、複雑な数学的・金融工学的やりとりなどを通して(大人は、ココををありがたがって初期の目的を見失う)、結果的に“二酸化炭素の量が増えた”(ここが出口)という事実を、入口と出口を単純に見ている子供にとっては、大人がバカに見えてしかたがないわけですね。

ちょっと脇道にそれましたが、時間の経過は残酷なものなので、どんどん史実はとらえにくくなるわけですね。それ以上に、大きな歴史の中で、ふつうの人間たちが真剣に生きる中で、どういう考え方で、どういう行動をとったかという、国を超えて感動を呼ぶ話を先に味わいつくすことが大切だと思いました。まずは、問題解決の順番的には、共感をひとつでも増やして、フレンドリーで冷静な土壌をつくって、それから歴史的事実の解明も平行して淡々と進めていくと、力むことなく自然な形で平和に向かうんじゃないだろうか、と希望を持ちました。

事実に基づいた、身の回りのおじいさんおばあさんから聴いた、心を動かされるようなお話は、ストックしておくようにしてシェアすることが、まずは小さな平和活動になるのかと、可能な範囲なりの低いハードルからスタートしようと思った次第です。今年の夏、終戦記念日にジョン・レノンにちなんだ、ニッポン放送『イマジン・スタジオ』で『帰ってきたおばあちゃん』記念公開録画を行うようです。ご興味ありそうな方には詳細お知らせいたします。



ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌPavane pour une infante défunte』は、ほんとうは、『昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったような舞曲』というタイトルらしいですね。どちらのタイトルが付いたとしても、メロディは、深く静かに心を溶かす力を持っていますね。

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