しかしながら、オーダー一着目は、敢えてそれらの要素をそれほど加味せず一気にパンチのあるゴージャスなキャメル地の3ピース・スーツをお納めいたしました。
もちろんタイ・シャツまでオリジナルで合わせて、DRESSSIR®としてミッションを果たすべく着付いたしました。最初の1着は決して普通のスーツにはすまい、と決めていました。
1着目に未知の高揚感を感じられておられたご様子でしたが、2着目3着目、この時点では固めに、エグゼクティブな風格を感じさせるビジネス用スーツをおつくりいたしました。氏の仕事においては必要十分のアイテムです。
そしてこの春夏はココでいったん一区切りかと思いましたが、私は夏用白系(盛夏用の白っぽい3ピース)のスーツを作ることを強くレコメンドしました。夏の紳士にふさわしい白地に淡いグレーの麻素材のコードレーンの3ピースです。
確かに2着目3着目のビジネス・スーツは、ビジネスにおいては必要十分の役割を果たしておりましたが、彼のポテンシャルに満ちた “人生全体において” はたしてそれは必要十分条件であるか?という問いとともに、絶対的に不足している何かを感じました。
ご了承いただき、夏白系のスーツの納品の日に神楽坂の帽子店にて購入したパナマハットを合わせて徐々に、優雅なプレゼンスが出来上がってきました。
しかし、まだ何か足りない、、、、
あれこれ思いあぐねつつ、ジグゾーパズルの決定的な最後の1ピースに気づきました。。。クールなステッキだ。
ステッキという答えにたどり着いた瞬間には、そのステッキのデザインや材質がはっきり映像として浮かびました。数年前、僕自身がビスポークした英国FOX社の銀無垢のアニマルヘッド(馬)の傘での体験が生きました。持ち手を握るタイプのシンプルな銀製の黒い支柱のステッキ。
ステッキ購入においても、サプライズながら、イイ出会いがありました。赤坂見附ニューオータニ内、“ ブティック・ロイ ” こちらのオーナーが、これまた素敵なセンスとマインドのマダムでいらっしゃいました。人生は常に想定外のQuestです、つくづく物語は良くできています。
ステッキの高さ調整カスタマイズのための待ち時間、こちらのオーナーママOさん。意気に感じて僕ら2人をホテル内のレストランにつれていってくださりました。パフェ(笑、役回り的に息子たちとお母様?失礼、お姉さま。)をごちそうしてくださいました。
I氏のプレゼンスがステッキの画竜点睛によって完成したことなどを話すと、大いに感動され、共感してくださりました。まるで、必然的に僕からOさんにバトンが渡ったようでした。。
さっそく彼女は、慣れないI氏のステッキでのウォーキングレッスンを買って出られました。驚くほど美しい脚(朝起きてやるべき脚の運動理論など明快で、説得力あるものでした)の超美魔女(ミーハーな表現を勘弁願います)であられました。もちろん、紳士のステッキ使いもよくご存じでいらっしゃいます。
ここで僕は次アポがあったため、その時間まるごとのお付き合いをすることはできませんでしたが、あとで聞くとオータニのメイン・ロビー廊下を、通行人や他店舗のスタッフたちの不審げな目線を一切気にすることなく1時間に渡って、決然たる様子で、感動的なスパルタ・レッスンが続いたそうです。まことにありがたいことです。感謝いたします。
僕自身トレーニングを数分間見ていたのですが、ここで大いなる発見がありました。そもそもI氏は、まわりに気づかって、ひじょうに急いで歩いておられたようです。そして、あえて杖も持っておられませんでした。自分(が他人に気づかう)目線と他人(がある程度客観的に見る)目線の違いがここにあります。
そのせいで、動きが非常に大仰になったおられた。上下運動・回転運動が激しくなってしまっていたようです。まず、周りの安全を確認することは前提としても、意識を少々変えて、世界は自分のためにある、といったん考えて見られてはいかがでしょう、、、と。無理のない範囲で、動きがとてもスムーズで平行移動、優雅になられたように感じられます。
真夏の昼間、ゆっくりと、ステッキを使って歩く、、、、絵になる風景です。ご婦人とすれ違う際に、悠然と立ち止まり、帽子をちょこっと持ち上げて、ご挨拶。白昼夢的かもしれませんが、それもまたラブリーな光景ではないでしょうか。
自分の世界を大事にしながら愉しむようにゆっくりと歩く特権的スタイル。うつくしいステッキを持った紳士がゆっくりと歩く姿は、まるで虹の上を歩いているよう。ふつうの人間には虹を歩くことはできません。虹は壊れやすいもの。不思議な力で虹の上の小道を、エレガントにゆっくり歩く、、
そんなシンプルなフレーズが浮かんだので、マダム・ミヤビに仏訳してもらいました。すてきなフレーズならすぐ覚えますよ。
Se balader sur un arc en ciel
スゥ バラデ スゥール アン ナルク エン シェル
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