2017/01/23

和歌山のみかん男爵





上の画像は、Harrisons of Edinburgh Holland & Sherry William Halstead の英国の老舗一流生地が“ 上野さんという主役に向かって(合わせて) ”にじり寄っているの図、総動員されているの図です。今月14日土曜日。

これこそが、いわゆる“ブランド”といわれている物とのDestination : 終着駅的な付き合い方です。あくまでも、主役は着る人ご本人。ご本人のテーマにブランドを合わせる。

若いうちは、物の力を借りたり、物に自分を引っ張り上げてもらうような使い方もあります。少年、青年まではそれで充分ですが、大人になったら自分のテーマに物のほうに合わせてもらいましょう。上野さんは、ご自身のライフワーク、つまり確固たる人生のテーマをお持ちだからそうなれています。



和歌山のオレンジ男爵こと、上野さんは、紀伊国屋文左衛門という和歌山を拠点にして、みかんを中心にしたネット・ショップを経営しておられます。普段は和歌山におられ、たまに大阪そして先日は4年ぶりに東京ということだったようです。先日は楽天甲子園の講師として、上京されておられたようです。

もとは、著名な出版プロデューサーの会の二次会で出会いました。僕を誘ってくれた愛知県の実業家の方は、このプロデューサー氏自身の装いをなんとかしたいという友人愛のような願いから、実は裏ミッションありで僕が招集されていたのでした。

しかしながらちょっと世間話を交わした時に、装い分野において(表面的な)自我を手放せないタイプの方だな、潔くふんどし一丁でまな板の上に乗ってきてくれない人だ、とわかったので、僕はあっさりその場でプランB に移行してしまいました。

お酒飲んで、楽しんで、おもろそうな人間を見つけてバカ話でもしよう!と思っていた時になんとなく紹介されたのが上野さんで、そのままのノリで会話が始まりました。

上野さん)   ネットでみかん売ってます。そろそろ、自分の装いをプロの方にお願いしたいと思っているんです。

そうですか、それなら全身オレンジでしょう。

上野さん)   もちろん、そうです。(リアクションコンマ1秒でその線で考えてた感あり)

マジですか?(振ったわりに若干焦るが、そのドライブ感の良さに大物感アリ)

というやりとりだったと記憶しています。生真面目で少し内気な雰囲気でしたが、素朴で癒しを感じさせる笑顔で微笑んでおられました。これがたしか2005年夏のことです。最初は、国産生地の、ヤヤくすんだ蜜柑色(みかん業界用語では、晩生:おくて)でまだ、おしゃれにも振れる余地を残したものからのスタートでした。



顧客カルテの200名分のクリアファイルの中には、一か所左端寄りにひときわ目立つオレンジのファイルがあります。もちろん、オレンジ男爵こと上野さんのカルテです。いつも目の端に上野さんを見ていることになって、基本営業しないエドワード的にもシーズンごとに気になってしまいます。

自分色を使用しているから目立つ、間違いがおきない、という強みを発揮しておられます。この点をエドワードも真似し、好みもあって、エドワードエクリュのコピー用紙などの書類はすべてエクリュ色(オフ・ホワイト)を使用しています。

オレンジ色のファイルを手にとって、カルテを見ると面白いです。国産の中堅どころの生地からイタリアメーカーの彩りの良いジャケット生地の宝庫ロロ・ピアーナ、国産礼服生地“王侯の装い”まで、使用しています。カルテを見渡すたびに、この12年あまりの年月に感慨無量です。


いやおう無く目立つんだけど、愛嬌がある、でも基本を押さえた王道で作っています。神楽坂にてリオン料理のルグドルム・ヴション・リオネのオープンテラスにて、くつろぐの図。



そもそもがその爆発的な目立ち方ですが、一度、学芸大学駅前で前で待ち合わせしていたときに、駅前のとりわけ主張の激しい商店街の看板以上に目立っていて、登場されるシーンが看板の全てを無力化しながら、歩いておられるようで、感動を今でも鮮やかに記憶しています。駅前の看板超えしてる、という事実でした。素朴で、生真面目な印象の上野さんが、装うからこそ、俺が俺がというマインドというよりも、

これだけ、シンプルにしときましたんで、おぼえていただけますやろか?

と、ご贔屓筋への愛嬌ある親切心に思えてきます。間違いなく、エドワードでは振り切り系の元祖、先駆者といえます。(後々この分野では、モンスター・異星(性)人が登場しますが)




昨今では、御自身の純度の高い徹底性のおかげでTVCMで和歌山発の地元キャラクター名物(名士)として登場。綾瀬はるかさんとの共演された時のもの。(※ 現在はこのCMの方向性が、いかにも短期利益モデルが組み立てられそうな、ゆるキャラ登場にかわりつつあるけど、人か?ゆるキャラか?、といったら、意識の先進性はひと・ベースのほうが先に行っていたと思います)を愉しんだり、と地元の企業スポンサーのラジオ番組もレギュラーでやられておられます。

さらに、僕が上野さんの大ファンであり、共感する理由が、ITを駆使しているにも関わらず、その捨て身の全身オレンジスタイルの根っこにある、王道を進もうとする “ あきないの哲学 ” の部分です。このこともあって、表参道にてレディスのオートクチュール、メゾン・コペルの上原さんにも紹介した次第です。

今風の髪の毛ツンツン・ピタピタスーツのファッション業界ちっくな若者たちよりも、和歌山でみかん売ってる上野さんのほうが商いの王道を進みたいメゾン・コペルのインスピレーションの元になれると思ったからです。

氏は、書籍も出されています。僕もアマゾンの感想文を書かせていただいております。

昔からネットの技術に頼りすぎることには疑問をお持ちでおられました。SEO対策で上位表示に批判的だったように感じます。むしろ、時流に寄ってかわるものに、自分の軸を置いてはよくないですよ、というスタンス。

深い部分では、地方にいながら、その土地の豊かな歴史や文化や地場産業、ひいては地元で家族と一緒に平和に暮らすことや、地元の人々を豊かにしながらの、自身の生き方を確立する、という壮大な実験をやっておられるように思います。昨今、地方というコトバが、海外からのインバウンドの分野でも、それ以外の理由からも、無限のポテンシャル・ワードとなっています。




ビジネスの先駆性の部分では、最先端の商い“意識”を、かつての信用ベースで成立した“おまかせ”スタイルや、ご贔屓スタイルなど、古き良き日本の商いのスタイルから掘り起こしているように感じました。たとえば、納期を一日でも遅れたら、全額返金など、現在さかんにいわれる過剰サービス(≒アピール)寄りの無駄に気づき、その逆の発想をされていました。

鮮度を大切にする商品の場合に、納期・期日を厳密に決めてしまうと、店側は、どれだけおいしいものをお客様にお届けするか、というよりも、ペナルティをおそれて日程の帳尻あわせを優先順位第一にしてしまい、過剰な防腐剤や無理でしんどい物流作業を強いられたりします。

それとは逆に、ちょっとでも鮮度の良い美味しいものが届くのだったら、納期はおまかせします、とやっておいたほうが、皆が自然な流れで、美味しいものが届けられて、結果的にどれだけ賢いかということを10年前から言っておられました。販売者側の、がんばり(好き?)過ぎる、過剰労働傾向のある店側と消費者の意識のギャップを早くから理解しておられました。



サービスの工程全般での、落ち度やちょっとしたミスにつけこんでくる人々というのは、ネットショップをしているとごく一定の割合ながら経験するものですが、おそらくここにフォーカスしてしまって対応に過剰な“ディフェンス・コスト”をかけるくらいなら、より良い関係を農家さんとつくることに、情熱を注ぐ、というようなプライオリティ感覚を感じました。

くどいようですが、みかん色の装いの作り方とその心境をおさらいすると、


1.ただ、ちょっとフツウの人たちが無理っ(と勝手に怖気づく)と感じる羞恥心的な部分をいったん、横に置いてみる。

2.あえて、まず自分を石ころを見ているように俯瞰で見てみる。

3.その上で他人目線で自分を装ってみる。。

4.そもそも、自分はみかんを扱っている(商いをしている)

5.だから全身一式みかん色。


だれでも考えられそうだけど、自分を他人目線にもっていくのは、相当難しいです。みな単に、自分の気が済む様に、装ったときの自己満足を満たすためだけに、個人で起業しているひとであっても、なんとなく皆その業界のこなれた感じの装いを選んでいます。居心地よさそうに思えるから。

そしてさらに上の1~5を実際徹底的にやる人は1%くらい(200名の顧客中役2名)。それだけで、みなと違うスタンスを取ってそれでいて目立つ、というのは宣伝効果が期待できるので、結果的に扱うサービスのクオリティが高ければ売上げが上がる、ということになります。

外見が勝手に24時間営業しています。極端な話、社長がそれを着て街をうろうろしているだけで、働いていることになるわけですね。

そして、面白いことにというか皮肉なことに、“みかん色しばり”でいることで、オレンジ色という串で、世界を串刺しにするという展開があることです。将来エルメスが上野さんにコラボレーションを持ちかけてくる可能性もあります。パリ右岸のエルメス、左岸のアルニス。アルニスも真っ青の、エドワードオリジナルのグリーンの手巻きボウタイを作ったこともあります。これは、みかんのヘタの部分です、と言って納品しました。




実は、個人的に先週金曜日(1月20日)あたりから、仕事しながら体調が良くない自覚があって土曜日明らかに風邪の症状があったので松本の自宅にて、半日治療モードで対応しました。

蜂蜜を少し食べて、塩を少し入れた白湯を飲んで熱々のお風呂に浸かり、一気快復を待っていたものの、土曜日になって一気に40度近くまで熱が出て、あれ~いつもの風邪と違うなあ、とのことで、医者に行ったらインフルエンザA型という結果がバッチリ出ていました。どうりでいつもと違うと。ついに25年ぶりに風邪ひきました。これは完敗でした。

そこで、上野さんのところで年末に2箱注文したビタミン豊富な良いみかんを猛烈に体が欲していたので食べました。熱が出ていると汗をたくさんかくので、水分が不足しますから喉はからからです。どこで、唯一欲しくなるのがみかんでした。小粒でプリッと甘いみかん。体調も体温も36.6分まで戻り、大いに感謝した次第です。七福神の中にいてもすんなり同化しそうな笑顔の上野さんでした。



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