2017/01/09

ドレッサーの新しい心得 ( こころがけ、つつしみ、たしなみ )




数年前の成人式にブラックタイ一式(タキシード)を揃えたYuuki 君、最初にエドワードに来たのはまだ、10代だった、と回想します。あれから密度の濃い数年を過ごしていたようで、もともと気質的に持っていた自由できれいなもの好きの感性を生かす方向へ進んでいて何よりです。ベルンの竹内君と3人で歳末、男子会。エドワードエクリュ・ミシュランで2年連続ナンバー・ワンの、地元民しか行かない新潮社近所、最高の洋食屋 『mario』 にて乾杯する直前の一枚でした。

エドワードで製作しているスーツや小物類は、すべて基本に忠実なアイテムです。クラシックの意匠を大切にして、物自体のデザインはできるだけ目立たせないように、全体を組み合わせた中ではじめて輝くように作られています。物自体はシンプルに上品に(ってことはクラシックな範囲での美意識)クセが無く余計なヒネリもハズしも効かせていません。

この秋冬も、キャメル(素材そのものだったり、色だったり)のコートや、ブラック・ウォッチのスーツ、ダブルトップのカフリンクスをモダンな要素すらひとつも入れずにさらっとつくっています。充分なんです、それで。新しい要素一切いりません、ニュアンスは、勝手に入ってきますから入れようとしなくても。そういう薄味なくらいで、ちょうどいいんです。




それならば、意識して新奇な流行を入れないとレトロなのか?というと、そうでもありません。装いの(どの時代を自分の軸として据えるか含めて)優先順位の塩梅(:あんばい)を『自分の自由意志で絶対感を持って』選ぶという “ 意識の自由さ ”のほうが、むしろ旬だからです。

流行も一種の “ 囚われ ” ですし、物のデザインに過度に “ 拘り” 過ぎるのも、文字のニュアンスからも感じられるように、拘留された囚人のようで自由ではありませんね。

なんてこと無い、ダブル・ブレストのキャメルのアルスター・コート。これをドやっ!とエラそうに見せずに、いかにフツーに爽やかに着るか、のほうが大事です。凄く作り込んだ、伝説の名匠の逸品を手に入れるよりも。ドレッサーのYuuki君が着ている一番上のコートもごくふつうの、昔からエドワードで製作してるアルスターというデザインのコートです。デザインよりも大切な “ ニュアンス ” が充分に出ますし、もちろんデザインは目立ちません。

ただ、エドワード・エクリュのクライアントの感謝すべき特長でもありますが、みなさま自分自身の体をある程度、習慣的に鍛えておられます。必要最低限ではあるにしても、装い以上に、フィジカルのケアに気づかっておられる方が多いです。ちょっとした運動やファスティング含めて。ドロップ寸6から10(胸囲と胴回りの差寸が12センチ~20センチ)の楔型(くさびがた)が多いです。




2001年創業時から、『 アタマの先から爪先まで全身一式・企画製作 』 と謳ってきましたので、アタマの先から爪先までポイント・ポイントで必要最低限“ざっくり”気を配ることをオススメしてきました。でもだからといって、度を越して神経質になり過ぎることのないよう、全体バランスを意識しています。そして無理せず愉しみながら習慣的に精進することをオススメしています。

最近は、新しくオススメのガイドラインに採り入れたものとして、最低限の 『 爪ケア 』 があります。以前は、爪を女性のようにぴっかぴかに磨き上げていたり、マニキュアをつけていたりというスタイルは生理的に拒絶していたものですが、必要最低限レベルでの爪ケアは(特に接客的なひとびとにも)必要と感じました。




印象美というテーマを掲げ金沢発信の、Benediction : 正式名称:ベネディクション・エフ・月:祝福(発売元:WORDROBE ⇒ コトバをテーマにしているところから敢えてwordと表現)というネイルケア商品をオススメしています。 http://wordrobe.biz/store/( こちらで 購入できるそうです)

おもしろいですよ、もともとは、女性用に企画されたものとのことですが、野生種オーガニックの香りが全て硬質で凛々しい(男前っていったらいけないのかな?昨今)ものばかり、椿オイル、シトラス、シダーウッド、フランキンセンス、サンダルウッド、ダマスク・ローズ。金沢の漆作家や書家を動員した、限定品もギフトとして素敵かもしれません。

WORDROBE代表の小西さんには、金沢らしい水引でできたカフリンクスもプロデュースしていただだいています。これは、香道やお茶の際に、茶器を傷つける可能性のある金属類が付けられないことからの要請で、お願いしました。僕と生年月日がぴったり同じ(ということは、ペガサス☆)金沢の水引き作家の方に作っていただいているそうです。




上質な靴を手に入れると、靴が勝手に魅力的な場所へつれていってくれるように、きれいに整えた手もとは、必ず美しいものを手にするのではないかと思います。

確かにファッションにおけるデザインも技術も少なからず刺激がありますが、そもそも日本には古来からスタイルを語る上でうつくしい言葉がたくさん用意されています。自戒も込めつつ、そう思います。

装いをかたちづくるものの一つ一つが、やさしい心がけや、つつしみや、心づかいでできあがっているとしたら、そこから立ち上がってくる装いは、迎える方に手渡される花束のような存在になるのではないかと思います。



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