2008/06/21

コクのある美しい靴の質感は、煩悩に刺さります、


今日お昼過ぎ、東京の東の果て、小岩の僕の自宅兼オフィス兼フィッティングルームにお越しいただきましたのは、T氏御紹介にて現在靴職人精進中の女性S様でした。ご自身で製作された外羽根式の赤い革靴を履いておられました。ハッとするような美しい靴で、彼女が帰られた後、自宅にいるうちの母が、あれはきれいな靴だったわね~と感嘆していました。もともと彼女は靴磨きからこの世界に入ったとのこと。

最終的に、アリストン (Ariston's Napoli) のアイリッシュ・リネン(Pure Irish Linen100%、250g)生地を上・下で発注されました。コクのある淡いココアの色。ラペルの縁に沿って手縫い風のAMFステッチをつけたり、ちょっとボタンホールの色をバーガンディがかった濃いグレイであしらったりします。夏の日差しが強い日中でも、女性が麻のちょっとゆったり目のトラウザーズでキメて、足元は白のエスパドリーユでお散歩している姿など実に涼しげで見とれてしまいます。

ところで、個人的にはあまり好きな靴屋には近づかないようにしております。煩悩との戦いで、足袋Airで解脱せねばならなくなるので。解脱しても荒法師になってますます間違った方向に行きそうです。さて、いい靴でそれが不当に高いわけでもなくて、納得できる値ごろ感あるものだった場合、欲しくて買わずにおれなくなるので今のところ靴屋の前では、さらっと流すようにしております。

いつの日か、ウィーンかロンドンでビスポークしてノーザンプトンに行って既製の靴を買いまくりたい、と思っております。しかしながら一番良いのは、理髪店からテーラー、そして靴屋、ジュエリー屋から花屋、カフェあるいはバールから趣味の良い古本屋に至るまで仲間が集まってどこかの街角に味とコクのある佇まいの一画を形成すれば、さぞ愉快だろう、と長期的な展望で夢と妄想を膨らませた土曜日の午後でした。

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