車や航空機のボディのデザインは空気力学や全体の機能・役割を考えた上でのシンプルな意匠になることが多いですね。あたりまえの機能という最低限の要素を満たすためのデザイン。だからこそ、デザイン過多になることがなく、潔くて無駄がない。最短距離で、立体を形作る3次元の美しい曲面になるのでしょうね。ひとつひとつのパーツがおしゃべりし過ぎると、全体の調和が乱されます。全体観が失われます。
ひとつひとつのパーツ(パート)が、おのおの自分の役割を粛粛と果たし、それらが全体として組み上がった時、それはつるんとしたシームレス、切れ目の無い美しいシェイプになります。まるで野生の動物のように。洋服のコーディネートも同じだと考えます。ひとつひとつが、おしゃべりだと、全体が演奏のヘタクソなイケてないチンドン屋のようになります。
今の世の中、そっけないくらいクールなふつうのビジネス鞄ひとつ買うのでも、すごく苦労します。デザイナーもバイヤーも、店頭でほかと比べて目立つ、売り場で一番輝く商品を企画するのでしょう。そっけないくらいの普通のデザインで、クオリティ高いものとなると、これまた僕が半ばブチ切れながら、作り始めることになります。顔も見えない、世の中の鞄デザイナーたちに向かって 、なんで正攻法でクラシックなテイストで作ってくれないんだ!とぼやきながら企画・製作し始めることになってしまいます。
と思っていたところで、偶然神宮前のユニオン・ワークスさんにて発見しました。さっそく顧客に伝え、というか無理やり連れて行き、購入をすすめました。こんなふつうの真鍮の金具は、昨今皆目見かけることがなくなりました。有楽町でも新宿でも、いざバッグを探すとなってもたいがい、鏡面仕上げとマット仕上げを混合させた、一工夫入れた、より手間を入れた、モノづくりアピールしている、クドイ、デザインばかりになります。
この真鍮の金具の素朴でそっけない感じ、これが最高です。これで、この手は僕が開発する必要がなくなりました。蓋の縦の長さと、鞄全体の天地の長さとの比率がイカしています。これが、蓋の天地が、ちょっと短いところが粋ですね。軽快さが感じられます。そのニュアンスだけで充分デザインです。金具にひと工夫いらないし、本体の意外なところの切り替えしなどの一切必要ないです。
持ち主は、全身一式エドワードエクリュの、ドレッサーでもある、Kanji君でした。エドワード的には、今後のスーツの生地に関して、春夏は、淡いハイ・トーンのグレイ ⇒ 淡いサンド・ベージュ ⇒ 淡いラベンダーという風に、春夏のスーツもヴァラエティが増えていくと思います。すくなくとも、夏場は淡い色、明るい色、白系の色へと、おそらく定番は変化していきますので、こちらを読んでいただいている顧客の皆様、あたまの片隅に入れていてくださいませ。
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