2015/10/21

秋の黄昏 ロマンティックな冬支度

 


時が経つのは早いものですね。ここ数日、急に寒くなってきました。さすがにまだコートという気分にはなれませんが、そろそろぼちぼち冬支度という感じです。今年も、いや毎年毎年かわらず大活躍した淡い水色のコードレーンの3ピーススーツ。白の面積が大きくなると、ついつい遠慮したり怖じ気づいたりするものですが、色数を減らして結果たまたま目立っているだけで、むしろセットアップよりも同じ生地でさらっと揃えることがオーダーメイドの醍醐味だと思います。


それにしても、このブログで画像をアップできない状態が2か月余り続き、壊れたかと思っていましたが、InternetExplorerをアップデートしたらその瞬間治りました。ここ2、3か月の写真はエドワードファミリーであるタック氏の最高度クオリティの画像が唸るほど溜り上がっていて、これを徐々にアップしたいと思っています。今年も取り組んだ和歌山国体の馬術チームのノーフォークジャケットの装いや、真鍮で製作したブートニエール、ようやく完成したフラワーホルダーなど月末にかけて連続でアップする予定です。




先日、10月18日、すばらしいお天気に恵まれた日曜日、飯田橋のキャナルカフェにてウエディングパーティがありました。新郎はエドワードの一番弟子の歴史を持つ竹内君。とはいっても雑談したり、一杯やりながら、哲学を語っていただけです。現在、旧神楽坂エドワードエクリュの店舗にて、自身独立して“Berun” という店舗を構えております。後先顧みない身を持ち崩すほどの装い好き、危険を怖れない旅人であった青年紳士は、たぐい稀なる “ 装い力 ” を持つ美しい伴侶を見つけました。おめでとう!


奥様のウェディングドレスは、エドワードエクリュのレディズをすべて担当している“Copel ” が、企画・製作しました。クラシックで美しいドレープ&シルエットが出るように考え尽くされています。NextGeneration の2人は今後、自分の作品を手に、世界に挑むことでしょう。来年には50歳に到達する僕は、彼らの作品を愉しみにしながらゆっくり応援します。エドワーディズム哲学の継承者たちは、装いの世界に革命を起こす最終兵器だと認識しています。




イマドキの風貌、目ではありませんね。彼も生きる時代を間違えてきたタイプです。昭和以前の熱すぎる男のまっすぐな瞳、革命家の瞳をしています。英語会話能力からっきしゼロにもかかわらず、熱病にとりつかれたようにロンドンに数度渡りながら、そして業界の重鎮たちに、運よく接触しながらも、会うたびに、彼のあまりの英語力の進歩の無さ(勉強しなさっぷり、徹底的に勉強しない)に何度も怒らせ、呆れさせ、、、


と、ここまで書くと一見マイナス要因に見えますが、それが竹内君にとっての最大のプラス要因だったと今となってはわかります。初渡英の朝、前夜あまりに楽しみにし過ぎて眠れなかったせいで、パジャマのまま空港に行き、前夜考えまくっていたコーディネートも台無しになり、ヒースロー空港にはパジャマとスリッパで降り立ったというエピソード。まさに彼の人間臭さの表れです。


今後、機械的な仕事能力の高さ・正確さをビジネスマンが持っていたとしても、それはコンピューターに取って替わられるかもしれません。速さと正確さではPCに敵いません。昨今、世の中そういった準PCのような、ビジネスマンが増えていますし、人々が準PCであることを期待する “ 大衆感性 ” が増えますから、人間臭さこそ、最強の錬金術であるように感じます。これから10年、20年、どんな巨大な人間ネタを作るのか楽しみにしています。




日本人にとっての、礼装は最終的に黒紋付き袴ですから、洋装に関しては、モーニング、燕尾服、タキシード、に関しては過不足なく、ひねったり、はずしたり、あそんだりすることなく、必要充分(必要最低限でも良い)の仕様で仕立てること、これに尽きます。時代の流行に乗ることなくして、常に凛々しく悠然と旬で居続ける。業界志望者は、ファッション誌を100冊読むより、世阿弥の『花伝書』を一回読むほうが得るものが多いでしょう。




田園調布界隈を拠点にしている現在でも、飯田橋キャナルカフェは、定番の打ち合わせ場所です。南北線を利用すると、飯田橋⇒田園調布は乗り換え無しで行けます。何が楽しいって、お昼時や夕暮れ時、あるいは日が沈んでからのマジックアワーに、このデッキでぼんやり一杯やる時ほど穏やかな気分になる時間はありません。

まさに雑談タイム idle talk なのですが、この雑談こそが多くを伝えられる大切な時間だという気がします。雑談の多いテーラー、おしゃべりの大好きなオートクチュールのお店、年長者も若者も青年も女子も、いろんな世代が混じり合い、スタイルや哲学について気楽に語れる場所、それが、スタイルづくり元年のオーダースタイルだと思います。




人生を象徴するようなシーン、小船にゆられて大海原へと漕ぎ出だす、と言いたいところですが、ここは都内の静かな運河でありました。。お二人とも端正な佇まいです。ケミカルな白ではなくてオーガニックな淡いエクリュ色の厚手シャンタン素材です。ごくクラシックでシンプルなデザインだからこそ、職人の腕が誤魔化せません。デザインに逃げずに、勝負する、Copel のオートクチュール哲学といえます。




途中、デッキのお客さんたちも、祝福モードでとてもハッピーな雰囲気でした。すごーい、、これは盛り上がるね~、、いいわね~、、デッキ席からはため息が漏れていました。中央線、総武線の乗客も応援してくれますから、これほど劇場型のステージはそうそうありません。







360度どこから見られても、立体的で優雅な揺らめき・ドレープが見えます。立体的なドレスには重要な役割を果たす “ Panier パニエ ” を標準装備したCopel のドレスに皆うっとりして、言葉を失くしていました。あちらこちらで、ひらすらため息を引き起こしていました。ほぼ完成した状態での仮縫いの際、新郎の目にはキラリとひかるものがありました。

あれだけ製作物に対して冷徹な観察能力を発揮する竹内君が、その瞬間ばかりは、ウェデイングドレスという物としての関心よりも、運命の女性が目の前にいるのだ、ということに純粋に感動していたという点こそ、職人の仕事冥利に尽きる、と思いました。




こちらはパーティー前の新郎。気持ちの良いクライアントに囲まれて、祝福された最高の一日でしたね。さて、僕自身はといえば、2001年創業で未だ14年しか経ってはいませんが、創業時の最初の頃の身軽で飄々としたスタイルに原点回帰しようと考えています。テーラー、あるいはDresssir®を名乗り、縫うことをしない僕は、メジャー一本だけをポケットに入れて、オープンテラスでお茶したり、一杯やりながら、クライアントとひたすら雑談にうつつをぬかす、たまにボーイズ君たちにエドワードの哲学(という名の雑談)に耽る、、、、そんな近未来の自分を夢想しています。



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