すでに春一番も吹き、時が経つのはつくづく早いものですね!本日、春物生地バンチの第一号が届き、この生地はミスター○○、もうひとつの色違いはムッシュ○○用、と想像たくましくしていました。
さて、2月6日(土)は、エドワードからレディズとして独立した、コペルこと上原さんが新ブランドとして展開中の ‘ Copel ’ :コペルのオープニングパーティがありました。
当日の企画から演出キャスティングまですべてコペルひとりで作りこみ、独自の世界を出現させることに成功しました。いつの時代か、どこの国か、わからない世界観が、粒立ちの良い “ 旬 ” を感じました。昨今の消耗文化全盛の服飾業界は、若干正気を失っていて、一瞬の “ 今風 ” を求める、いわば躁状態にある “ ショッピング文化 ” ですが、その一方で、静かで落ち着いたスタイルづくりの世界もあるのだ、というメッセージを感じました。
モデル、ではなく自然な生命力に溢れるミューズとして存在しておられる、実際の知人であり、親友であり、女性クライアントたち。彼女らがエドワードのボーイズ君たち、ドレッサー( = StyleAdviser )である、Modern Gentlemen からアテンドされて、会場をウォーキングをしました。静と動の違い、サイジングの違い、それぞれに、観客が本来のクラシックな意味合いでの“マヌカン”としてミューズを見つめ、自分に近いミューズに気持ちも夢も “ 乗せて” 観ることができます。
通常の、モデルが新作のハンガーの役割を果たすファッション・ショーとしてのキャットウォークではなく、すべて御自身がオートクチュールした装いで、ご自身の好きな歩みのテンポで、そして自身の意志で、気ままに・わがままに好きに歩いていただきました。装いが世界をつくる記念すべき瞬間でした。フランス女と英国男、そんなほほえましい絵にもなっていましたよ。
まずは、今 = trend を感じさせるファッショニスタ的要素をすべて削ぎ落とします。そうやすやすと、おのれの美意識の手がかりを与えてなるものか、という気位の高さこそ國枝君のポテンシャル。おしゃべりな服はジャマになる。ひとつひとつのアイテムは、物静かでドライなくらいが丁度いい。髪型が今風だったりすると勘弁してよ、というわけです。
お気に入りのバーバーも良い仕事されています。ファッションに詳しくなる、一箇所にこだわり過ぎる愚かさを、喩えていうなら、旅をするのに、滑走路や飛行機(たまにc.a.さん?そりゃ楽しそうだが)に詳しくなるようなもの。道具あくまで手段。目的は思う存分愉しむフィールドにあります。Enjoy your dressing !
6日土曜日、パーティーの翌日の7日(日曜日)、ドレッサーである國枝君連れて、現地では松本から来た僕の家族と合流して、うつくしい・おいしい街、金沢の石田屋さん『 Gamadan Academy 』 にてトーク・ライブ。少人数30名ほどの会で、淡々と語ろうと心がけながらも、しばしばテンションが桜島噴火レベルに達したりして、、、むしろそれが素直なトークになって、よかったのかもしれません。
金沢の老舗、石田屋さん、経営者系や服飾・イメージ・スタイリング系のプロの方々も多く、 Advanced Class:上級クラスの理想的な空気でした。質問も鋭く、かつ全体性のあるものばかりで、こちらも愉しむことができて感謝しています。次回は、お酒が必須(飲めない方は炭酸をシャンパン替わりに)という趣向でも、サロン・ラーニング&ディスカヴァリーの優雅な夕べとなるように感じます。詳細は後日レポートしようと思います。
下2つの画像は、ゲスト・ルーム、この贅沢な漆喰の青。色と意匠との最高の出会いですね。
さて本日、春一番で生地が届きました。ふだん、生地のことはクライアントにはほとんど必要最低限しか話しません。装いの全体性を説明する際に、生地ばかり偏って説明することで、木を見て森を見ず、物に鼻ずらくっつき過ぎ、優先順位が狂う、という不本意な状況が、お教えする順序として違うかな、と思っているせいです。すなおに表現するならば、装いごときは、必要最低限が一番かっこいいと思います。と、のめりこみ禁止令発令した上で、、、
もちろん、エドワードでは生地の関心は過剰ではありませんが、必要十分です。というか、なぜいまだに、自分のところの、生地バンチを持っていないのか (1冊で済むのに、、)、というくらい、オーソドックスです。ストライプの幅は18㎜。もちろん、体型によっても顔の鉢の幅によっても、あらゆる要素によって変わってきますが。地の生地によってストライプの淡さ、濃さ。ストライプのピッチとドットの大きさ。特に春夏物のハイトーン・グレイのドライな生地で、ストライプがキレイに出ているものは、全体の5%くらいだと言い切ります。
これを、ふつうに仕立てる。① 肩幅・胸巾・ラペル巾もある程度ゆとり量の余裕を持って ② 肩パットもそこそこ構築的に入れる(アンダーソン&シェパードよりも硬くハッキリ入れる) ③ 股上深め ④ 通常、裾巾21cm以上で、ハーフクッション以上の長さ(カブリ量) ⑤上着丈も今の主流よりは2、3cm長め。
先日、香港のショップ、Armoury のアレックス氏と直接話した際、②と④以外は、ほぼ一致していて驚きました。ここ数年で、街でオープンするおしゃれな飲食店がことごとくクラシック回帰なのと同じで、大波とともにクラシックに回帰するように予感します。いつの時代でも、昔から賢い紳士は上手に醒めていて、正気なマインドで、この喧 “ 燥 ” 状態の世の中を冷静に見ていますが、スーツに関しても、トレンドのお祭り騒ぎのレイヤーにいること自体が既にトレンド的ではない、つまりトレンド的にもアウトだ、ということが一般的感性の世界でも、あたり前として認識されていくと思います。
鍛えすぎ禁止令を出している、ドレッサーで取締役の國枝君。まるで、國がかりでの、故金子國義氏が生田耕作氏の著書『ダンディズム』の表紙画で描いた男性像のようです。以前神楽坂の紅茶屋、メゾン・ド・ボウでアルバイトするために作った、ハリスツイードの淡いブラウンのジャケット。Vゾーンにはわせたストールは、シルク・カシミアのエドワードオリジナルの丈の短いストール、Muff : マフ です。先日田園調布の帰り、二子玉川のカフェにて。
これが、アンダーソン~や、今風のイタリア寄りの、日本のセレクト・ショップのスタッフの方々が好んで着用する、柔らかい(しかし、一般的傾向として、むちむちで丸っこく、肩幅が無い日本人が着用するとクールなニュアンスが出にくい、川端康成のような知的さには見えなくもないが)ナチュラルショルダーでは無い、というところが、キモです。
3つくらいの、流行の層 ( レイヤー) に自らのスタイルを置いた時に、その3つのレイヤーのどの流れにも決して沿うことなく超然と拒絶し、しかし、なおかつ、それぞれ同時に3方向からの向かい風に相対するからこそ離陸できる飛行機のように、究極のタイミングでの逆回転によってキレイにドライヴがかかった結果、鮮やかな1ショットとなって、一番上品に目立つ佇まいが出現するようにエドワードでは作っています。と、まあこの長ったらしい表現をたのしんでみたのですが、身も蓋もなく、ごくシンプルに言えば、大人の男の背広をふつうに作ってます、というあっけなさで済んでしまうのでした。