2011/01/19

Grand Tour2011 8日(土)ショッピング、リッツ・カジノ



リッツの朝ごはん、われわれは常に早起きが基本なので、リッツでも午前7時の朝食時間にオン・タイムで入ります。たまたまこの日は先客が一人いましたが、基本一番乗り。そして、スマートカジュアルでジャケットスタイルのわれわれは、今後3回とも一番、目立つ良い席に誘導されました。名誉なことです。できるだけホテルの備品類など、設備も最低限できれいに使うので、ベットメイキングのスタッフは助かってるはずです。チップも20ポンドほど枕もとにおいています。バロンは、食事が終わった後のナプキンのたたみ方まで美しく、あとを濁さず席を立っていましたね。


カリカリのクリスピーベーコン、マーマレードたっぷりのトースト。トーストは常に胚芽たっぷりの無精製系のものを頼みます。リッツのオレンジジュースは、ほんとの意味でのフレッシュ・ジュースでちょっとした風邪なら直りそうなビタミンたっぷりのものです。僕は半熟4分のボイルドエッグをオーダーし、忠実に再現してくれます。(このあたりは、80日間世界一周のジュールヴェルヌの世界です)仮にたとえ、4分2秒のボイル、などとオーダーしたとしても、彼らは、クライアントのエキセントリックな好み・癖も大いに尊敬するマインドなので忠実に再現してくれるはずです。英国は個人のエキセントリシティに非常に寛容な国です。


ロンドンで土曜日といえば、ポートベローの朝市ですよ。ヒュー・グラント、ジュリア・ロバーツ主演の人気映画、『ノッテイングヒルの恋人』もここが舞台です。ブックショップのオーナーのヒューと、リッツに宿泊している大スターのジュリア・ロバーツがちょっとした『ローマの休日』なストーリーを演じる場所です。あの映画では、冒頭部分のヒューのノッティングヒル界隈を描写したモノローグが最高なんですね。ちょっとしたヴィンテージのボタンを購入しました。


コーディングスあたりで売っていそうな、ハンティングジャケットを着た、いかしたショップスタッフ。たいがいロンドンで手がつけられないほど一番かっこいい層(年齢50歳~60歳)は、かなりの確率でコーディングスのショップ・バックを携えていますね。若造はまだまだだ、という空気、説得力が彼らにはあります。だって、ロンドンを闊歩する、悠然と風格を湛えた初老の紳士たち、これはもう問答無用にかっこいいですからね、到底かないません。子ども文化軸の日本ではちょっと難しいですね。彼のジャケットはアクション・プリーツ付きのとても素敵なものでした。



バーリントン・アーケイド。ジェームズ・シャーウッド氏から、君は1960年代のロレックス、ショーメ、カルチェのタンクフランセーズあたりが一番似合うよ、とアドヴァイスされ、ヴィンテージ・ロレックスのコレクションをのぞくバロン。しかし、僕は彼は、ジャガー・ルクルトのレベルソ(ポロ競技用に表がひっくりかえる)が一番だと確信しています。あれのゴールドがいいですね。



馬具のアイテムを探して、結構苦戦した日でした。スウェインにもないし、ハロッズにもいまいちクオリティ満足できるものないし、僕的には若干お手上げ感ありました。最終日のシュニーダーに賭ける感じでした。二日目、リッツ・ロンドン名物のカジノに出陣する直前のバロン氏。

エドワード製、ファブリックはドーメルのロイヤル・オペラを使った3ピースモデルでした。これが猛烈にカッコいいいもんだから、パームコートで夜中アフタヌーンティーしている世界のマダムたちが、猛烈な勢いで彼を上から下までなめるように見ていたのを、僕はうしろからニヤニヤしながら、確認し、テーラー冥利に尽きると感じていました。


かなり秘密めいた特殊な豪華さ、エクスクルーシブなリッツ・ロンドンのカジノ空間ですから撮影も困難で、ラウンジのみの撮影です。そもそも僕もバロンも、人生がたたき上げ系なので、アウェイでの本能的な勝負勘に関しては、胆もすわりスイッチ入ると頭も徹底的に冴えているので、まず負けません。

僕はアールグレイの紅茶を飲みながら、バロンはシャンパンを飲みながら、悠然と挑みました。もともとアブク銭に対してたいした欲もないので、当然ちょっとづつ勝ちを積み上げていきました。

案の定、僕が700£、バロンが1500£ほど勝った状態で、引き上げました。これは、勝ち逃げするわけじゃなくて、次で止めよう、と一旦決めたので、それを忠実に守っただけです。リッツロンドンのカジノは、ヴィジターは日本円で10万前後払うことが必要で、宿泊客は優遇されています。



カジノでは、2人ともリッツロンドン・カジノでの終身会員となりました。名誉なことです。



テーマカラーがブルー、ミッドナイト・ブルーのバロン氏は、青いスペースが似合いますね。


この夜、僕はノッティングヒルのCD屋で8ポンドくらいで買った、フランク・シナトラのラブソングを流しながら、上機嫌でバスタブに漬かりました。バスルームを暗くして、凹面鏡に付いた白熱灯だけを点灯させて、ぼんやりしている時に、ちょっとした素敵なひらめきがありました。これをバロンに朝、セントジェームズ公園を散歩しながら提案しようと、考えつつ、月光浴よろしく(ほんとうは月の光の下で風呂にはいるのがいいんですね)バスタブに沈みこんだ夜でした。薄暗い中でお風呂に浸かると良いアイディアが浮かぶものですよ。ろうそくでもいいでしょう。


早朝、バロンを誘って、セントジェームズ公園を散歩しました。そこで、二人合わせた昨夜の勝ち金、2200£を、NT ( National Trust ) に全額寄付したらどうかな?という提案をしました。ナショナル・トラストは、チャーチルが自宅を提供したり、ピーターラビットの作者が設立に関わっていたり、歴史的建造物、そして、湖水地方のイングランドの美しい自然に大きな貢献を果たしている団体です。それで負けたリッツ側のディーラーの女性も、リッツも僕らも浮かばれます。

僕は、スーツを提供して金銭を得ている以上、羊には大いに感謝し、大いに尊敬する姿勢で生きているわけです。羊が生きるためには緑が必要で、そのためには、広大な自然が必須なわけです。一方、乗馬をやるバロンは、馬が生きていくためには牧草地が必要だし、馬が疾走する森や美しい自然の大地が必要です。それが日本の土地だろうが、イングランドの土地だろうが、同じ地球人的視点からは、なにも関係ないことです。


『それは、いいね』がバロンの第一声でした。『んじゃ、キリが良いところで、2200£に300ポンド加えて、2500£(日本円で350,000円)にして、寄付しよう』ということになりました。その瞬間セントジェームズの美しい街並みの歩道で、バロン氏は(幸運の象徴ともいわれる)1ペンスひろったんですね。ちょっとした映画のようで、運命を感じました。ファンタスティックな未来が開けている、というような予感でした。

朝飯を済ませた後、リッツのスタッフにその旨伝え、2500£の束を渡しました。リッツのコンシェルジュ・チーム驚いてあわただしくなると同時に、僕ら担当のリッツスタッフのI氏が大いにそれに感動してくれて、(英国人としてでしょう)感謝の気持ちを表明してくださいました。僕は心の中で、昨年生まれた息子のスコットに向って、“ こんなパパたちをお前らの世代はさらに超えろよ ”と思いました。

かつて、ダンディーの巨匠、ブランメルが博打で身を滅ぼしたのとは、違って、われわれモダン・ジェントルマンは、博打に全力を投入することはありません。仮に間違ってちょっとしたアブク銭を手にしたとしても、それは本来の労働対価ではないので、冷静に収まるべき場所に上手に収める、それが、かのサー・ブランメルをクールに超えるマインドじゃないでしょうかね。




散歩に出たものの、あれこれ話が盛り上がって、結局タクシーで帰宅というパターンです。3日目、9日(日)は、いよいよ、ジェット氏がベイルートを経由してロンドンにやってくる日。ロンドンのガドウィック空港、そして、ブタペスト空港で、トランジット35分という最低想定トランジットをちゃんとクリアできたか、非常に心配なわれわれでした。彼のアウェイでのサバイバル能力は天才的なので、かれならうまくクリアーしているだろうとは思っていましたが、、、、、とんでもないことが起こっていたとは、、、、(笑)

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