2023/04/26

"Local PNEUMA" 富士界隈、あるいは隠された(日本の、に限らず世界の)財宝と意匠。 



ここ数日ラッシュな時間を過ごしたので、気分転換に、自身のリトリートを兼ねてアタマの中スッカラカンにして、徒然なるままに富士界隈の逍遥あれこれ、床屋談義、否、テーラー談義(結論のない、気分が喋る)を気まぐれに書き綴ろうと思います。

まず、奇妙なヴァイブスを放つ言葉であるPneuma:プネウマ。"Pneuma" プネウマとは?とは?Oxford classical dictionaryよりJ・T・ヴァランス 翻訳ソフトにての和訳が以下。

プネウマ(πνεῦμα、スピリトゥス)は語源的にπνέω、呼吸または吹くと接続されており、「動いている空気」、または生命に必要なものとしての「呼吸」の基本的な意味を持っています。ギリシャ悲劇では、それは「命の息」として使用され、新約聖書の「精神」です。初期のギリシャの思想では、プネウマはしばしば魂と結びついています。アリストテレスでは、それはしばしば「暖かい空気」、時には「熱」を意味し、この用語は地球内に閉じ込められた地震風にも使用されます。したがって、その正確な意味は、常にその文脈で決定されなければなりません。この言葉は、ミレトスのアナクシメネス(1)によって、世界で動いている元素の空気と人間の「精神的な空気」の両方を説明するために最初に使用された可能性があります。 「精神的な肺腫」も魂を構成し、多くの古代の医学理論の感覚活動と運動活動の根底にあります。ヒポクラテスおよびヒポクラテス後の著作(ヒポクラテス(2)を参照)では、特定の理論への明らかな言及なしに、体内の霊感された空気または呼吸に広く使用されています。エラシストラトスの医学理論では、「生命肺腫」は肺から心臓を経由して動脈に移動します。<>つの古代の医学宗派である「空気圧」(空気圧学者を参照)は、そのような概念の中心的な使用にちなんで呼ばれました。プネウマ理論はストア派物理学の基礎を形成し(ストア派を参照)、ストア派は特にプネウマが宇宙に凝集とその動的特性の両方を提供するという教義に関連しています。

書誌
W.イェーガー、ヘルメス、 古典哲学のツァイトシュリフト、1913年、29–74。
G. Verbeke, L'Évolution de la doctrine du pneuma du stoicisme à S. Augustin (1945).
F.ソルムセン、ヘルベティカム博物館1961、150–197。G.フロイデンタール、アリストテレスの物質的実体の理論(1995)。A. Thivel、P. van der Eijk(編)文脈におけるヒポクラテス、古代医学研究31(2005)、239–249。


世界的にLocalローカルというキーワードは、いぶし銀のように静かに味わい深い輝きを放っています。お金(資本)とマスコミ(群集世論)と手続き(法律)で好き勝手に作り上げる、垂直統合型のグローバル世界の弊害は何?と問われれば一言で "lose uniquness(その土地の固有の歴史や文化や風土の持つ魅力を失ってしまう事)"と一秒で応えられます。そのuniquness の 根源が Pneuma プネウマかもしれません。






特別な透明感を湛える湖、勝手に気に入っている秘密の岩、樹海を抜ける散歩道、『そんなものに意味はない』とは、誰にも言うことはできません。宝物は比較して宝物になっていく訳ではなく、自分が宝物だ、と決めたものが起源となります。


若い友人のAlex氏、オフビートの、際際の面白いエリアにいつもエスコートしてくれます。時間帯によって、日差しの状態によっても大いに変わってくる浅間神社の景観をゆっくり堪能します。静やかな参道が、午前中の深々とした空気を堪能します。伝わる由来について、大胆な仮説を立てながら、二度三度訪れたくなります。


新種のマリモである “本栖マリモ”。このマリモが保存されているカフェ、記念館を立ち上げるべく、愉しみながら仲間たちと動いている様子でした。独自のサンクチュアリであるこの湖、本栖スタイルとして、ツイード生地でのスタイルを選び、新しい世代のカントリージェントルマンスタイルです。ここに、リアル・ファーやリアル・レザーを挿します。




こちらMotosu Diving Resort で永輔さんといただく、鹿肉のボロネーゼは旨いです。ハンター自身が体験する重要な命のプロセスや約束事を、ともに一皿をいただきながら、酒を酌み交わしながら、静かに伺うことができます。鹿肉に限らず、日々われわれが口にする命のある動植物は、すべて見えないプロセスによって口に運ばれています。


映画、Babe のワンシーンで、ベイブが飼い主に、なぜ僕らを食べるんだ?と訊いた時の飼い主のおじいさんの応えは、2023年現在の私自身の答えのままになっています。小規模に、食物が口に入るまでのプロセスが身近に見えていることが、命の尊敬につながると思います。地方や田舎には、それが体験できる機会があります。


富士山が噴火したら、と考えて怖くならないの?という問いに若い世代がどういう風に応えるか、その応えは人それぞれですが、私が耳にした応えは命の循環や、風土、自身が住んでいるテロワールを愛する精霊たちが、応えているような荘厳なものでした。それは、そこに行って各人自然な流れがあれば訊いてみればいいと思います。


リーズナブルで快適な富士クラシックホテルです。ちょっと遊びに行くときに、たびたび使っています。朝の時間の窓からの眺めもすばらしいです。近所のゴルフ場にてTea Shot と銘打って、美味しい紅茶をいただきながら、ヒッコリーのクラシックギアで、みんなでユルすぎるプレイをしよう、と企てています。








不思議な写真が撮れるものですね。樹海も昼間の晴天の下だと恐怖心は無く、ぼんやりした逍遥にも向く散歩道です。


無知の知、と銘打ったブートニエール、フラワーホルダーに、月見草でも挿したいものです。無知と情緒、ひろびろと広がる草原風の大地をスーツ姿で意味もなく愉しく全力疾走していました。ピクニック・スポットがたくさんありますね。このツイードは、長崎の南山手でのウォーカー邸にて敷き詰めたツイードです。バラの棘から守るソーン・プルーフというスペシャルな生地です。ロマンティックじゃあありませんか。。




Motosu Diving Resortの代表でもある本栖湖のベートーベン、永輔さん。ダイバー、ハンター、バーテンダー、ピアニスト、いいですね。氏の静かな語りはお酒に合います。


ハッピーで上質なパフォーマンスで魅せてくださる、ワッショイ・ユウタ氏。こちらも、マリモをイメージしたオッド柄の上下です。ご自身の笑顔や優雅な身のこなしに、日々の精進を感じます。フレンドリーな笑顔の中に、スピリットの高さを感じました。


夜道に何度も鹿が姿を現しました。群れに出会いました。夜の草原を群れで走っています。不思議な気分になりますね。スペクタクルだ!とか凄い!という形容詞ではなくて、夜の静かな草原という秘密のスケートリンクで疾走をたのしんでいるような、そんなサンクチュアリを感じました。






上質なボンヤリができますよ。
Memento mori Carpe diem 
Seize the day 
一つの期に、一つの出会い
Bon Voyage !


2020/12/23

里加子サロンのひととき



 長崎での2日間のアトリエ・ショーが無事に終わりました。みなさま、ありがとうございます。


里加子サロンは、まるでCabinet of curiosities(キャビネット・オブ・キュリオシティーズ) と私房菜(Home Cuisine)をマリアージュさせた「風の時代」にふさわしい味わいと深みのあるサロンでした。



Cabinet of curiosities(キャビネット・オブ・キュリオシティーズ)とは15世紀ごろのヨーロッパ貴族の趣味でそれが展開して博物館や美術館へ育っていった、人類の好奇心の起源のようなものです。



旅や冒険のあかつきに謎に満ちた異国から持ち帰る蒐集品が入った展示用のキャビネットから来ています。

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そして私房菜(Home Cuisine)とは東洋の国々で自宅で食べさせる自身の個性や特徴に特化させた半プライベート食事処です。仰々しい店構えではなく、隠れ家的な風情で自宅の玄関からお邪魔して"特別の"お料理をいただきます。



色の専門家である鳥沢先生を通じてこのサロンの主人、里加子さんがくらしのドレスを気に入ってくださり、共感いただきまるで "風のように南麻布のアトリエに遊びに来ていただいたところからこの長崎でのアトリエ・ショーへと育っていきました。



最近ネット用語で聞く「サロン」ですが、このコトバの歴史的ルーツを調べてみました。以下、By Oxford dictionary of English (2nd Edition revised)






このもともとのサロンの意味を踏まえて『里加子サロン』の素晴らしさをお伝えしたいと思いました。


①旅と自由

②好奇心とquest : 探究 (pilgrim : 巡礼)

③人生を愉しみ、切り拓く美意識


世界各地を自由に、テーマを持って旅する中で、面白い!良い!と思うものを見つけてしまいます。従来ではここで"バイヤー"というカタチでビジネスに紐付けられるのが落とし所なのかもしれません。



しかし里加子さんはモノではなくて美意識や知恵を持ち帰ります。何に紐付けられるか、られないかは自分が決める、それこそが自由で優雅な精神ですね。







美術館でいえば、キュレーションする本来の自由なスピリットこそ、サロンの姿なのでしょう。セレクトショップもレストランも本質の純度を上げていくと小規模でごく個人的なサロン的になっていきます。




昨今のビジネス用語でよく登場する「スケールしない・スケールする」という成長戦略のタームですが、ちょっと待って!それ誰が決めた?ハイスキルモデルじゃダメ、再現性のあるロースキルモデルにしなきゃ!」いやいやそれ誰が決めたの?誰のためにかな?と立ち止まれる知性も大切ですね。




サロン主人のお気に入りのアンティークショップ、そこに併設されていた大村湾の眺望が美しいカフェ。いただく新鮮な手料理、世界中を旅してテーマを持って探究された体験談の数々。好奇心や探究心を自由に解放させてあげる中で、多くの知恵や美意識を焚き込んでおられます。

2021年、ふつうの想像を遥かに超えてくる前例の無い出来事、あるいは大きな価値の転換を迎えます。いかなる人にも等しくリスクがあり時間と空間という機会が与えられる状況に向かっています。



姉の親友でもあった里加子さんが持っておられる能力の一部分を僭越ながら一言で表現するならば『サバイバル美学』だと思いました。サバイバル学ではなくて、いかに美味しく、素敵に、愉しく生きるか?知恵の泉を焚き込みに今後また伺います。とにかく「きゃーっリカコちゃん!可愛い、そして面白い子」だったとは姉の弁でした。

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くらしのドレス、オーダーメイド、愉しく対話させていただき、それぞれにご注文いただきました。ありがとうございます。時代の境目に、長崎の霊性にも触れるリトリートでもありました。クリスマスも迫ったこの時期に、2020年の素晴らしい締めくくりを行うことができました。ホントありがとうございま-す!

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#風の時代

#Kunstkammer

#CabinetOfCuriosities

2020/04/27

きれいなことばとなって響いてきました。




『 失われたことばを取りもどす 』くらしのドレスが、小さなさざ波のように広がっていきました。100年に1度のこれだけの有事にあって、なお人々にとっては、そこには装いの愉しさが存在したのでした。素敵。。SuperMoonProjectの仮説と検証は、遠くの汽笛のようにゆっくり響いて奏ではじめ、楽しげな唄声こそが、ひとつの解答でした。ありがとうございます。


紅茶とヴィクトリアンケーキのお店(ティーコジーはエドワード製)の御主人だったMさんからの今朝のメールのコトバが素敵だったので、ご了承のもとで転載いたします。コクシネルは、英語のDrapeドレープを一般的な皺しわ、と表現せずに『揺らめき』と表現していますが、ここにもうひとつ訳語が加わりました!Drape『さざ波のようにゆらゆら~』いいなあ~

フェルメール・シリーズで使用した生地は、ほぼ全員『上質なシルクのようですね~』と表現されるのですが、これだとウールの素晴らしさがシルク換算になるので自分たちで使うのは避けていました。


でもホントは1番わかりやすいんですよね笑。そんな感じで、コトバにこだわって意地を張るのもたまには大事なんですよ。ウールってすばらしいですから。隅田川沿い散歩してすれ違う99%はシャカシャカ石油系のスポーツウェアです。。先日駒形橋から蔵前橋までの間すれ違った約50名の通行人(ほぼジョガー)のうち、ぼくともう一人だけが、石油系ウェアではなかったです。ちなみに、こちらはウールのパンツとセーター、もうひとりは、アメリカ人風の男性でネイビーのアランセーターとデニムとコンバースでした。


ちなみに、さざなみを英語では、rippleといいます。これは実はよくできたもんで、転じて縮緬(ちりめん)の英語でもあります。2018年9月、みんなで丹後シルク、ちりめんを体験しに与謝野へ行ってきました。下はKuskaさんの工房にて。シルクもちりめんも優れた素材です。

この2020年の夏物スーツもベージュ系、砂漠色系のウールの縮緬素材でのスーツを推しています。これはスーツ生地の中で世界一涼感であることと、トラベラーズ・ウェアであることに理由があります。旅装として最高だからですね。くしゅくしゅっと丸めてトランクに入れてもひと晩で皺から復帰します。。すごいことですね。


シルク系の話題に戻ると、20世紀初頭のフランスのドレスメーカーの社名であるジョーゼットも縮緬属の一般名なのですが、18世紀前半にはすでに丹後ちりめんがどんどん創られているわけですからね。もともとはアジアで育まれています。ジョーゼットの厚手はデシン、薄手はシフォンとなります。どちらもことばの響きが奇麗ですね。


シルクデシン、つまりシルク・デ・シンのシンはChinaのことですし、シルクシャンタンはシルク・シャンタンのシャンタンShandongつまり山東省ですね。東洋のエレガントなTycoon:大君の残り香です。StayHomeに見出す愉しみは、C禍以前のブレーキが壊れた暴走特急内で繰り広げるどんちゃん騒ぎから一転して、小さな出来事から価値をていねいに掬い取る静けさにあるのだろうと感じます。


2020/04/14

understatement



静かな情熱を持って復興の一歩を進める準備。C禍が治まり有事が無事になる日々に想いを馳せながら、備忘録がわりに昨年のSpiritSuitsの物語を備忘録として書いておこうと思いました。

『君かっこいいね~』 金曜日夜の丸の内、いまどきのスーツスタイルで装った年上のビジネスマンから声をかけられる。『あぁ、はい、どうも、、』 一見ぼんやりしたその微笑みに、どんな想いSpiritが宿っているのか相手はわからないだろう。understatement アンダーステイトメント:たびたび、その訳として『控え目な(謙虚な)』とファッション雑誌などでは言われる。


しかし先日ネットCambridge University Pressが出している辞書を読むと、まずは、
 a statement that describes something in a way that makes it seem less important, serious, bad, etc. than it really is, or the act of making such statements:
実際より、たいして重要じゃないかんじ、それほど深刻じゃないふうで、それほど悪くない感じ、という解説があって、『実際に思っているよりたいしたことない風情でいる』って解説されていて、こちらのほうが、『控え目な』という謙虚風情よりもずっと感覚的に響いた。


ふと、記憶がさかのぼること、都内を豪雨と強風が荒れ狂った20191012日。エドワードエクリュ田園調布サロン。パートナーの前田邸の地下室を完全にセヴィルロウのアンダーソン&シェパードそっくりの内装にした秘密基地だった。


たいがいニュースが騒ぐときは逆だよ、と避難直前までラインしていたものの、予測を外し、完全に地下は水没し破壊されたのだった。翌日はきっと猛烈な快晴で空気もきれいだからピクニックでも行こうかなとうそぶいていたものの、翌日はパンプ3台で地下室にたまった300トンの水を夕方まで汲み上げ、そこから復旧作業がはじまった。


すべての水没した衣類を引き上げ庭に置いた時、そこはまるで飛行機の墜落現場のような様相を呈していた。そこから全部の衣類を高圧シャワーで泥を跳ね飛ばし、捨てるものと生かすものを分類することになったものの、世界のあらゆる上質生地をつかった最高のスーツ群は結局のところ1着たりとも捨てられなかった。






ウーバーで駆けつけてくれたアレックス氏が次々とトランクに詰み入れて自宅へ持ち帰った。


そこから彼は自宅の浴槽で4度の洗いすすぎを行った


南青山と西麻布の腕のいいと評判のクリーニング屋に運び込んだ。








いぜん、インターネットラジオの番組で、就職したてのお金が無い若者が質問してきて、本気で軍資金が無い場合どうしたらいいんだ?という質問に、『自分が尊敬する、そして体型が近い先輩からお古を貰えばいい』と答えたことがある。貰った後輩は先輩に感謝し続けるし、自分の分身のような装いの後輩を大事にしない先輩はいないはずだ、とも思っている。(それくらい、受け継げるぐらい、そもそものスーツが丈夫でなければならないのだ)。




クリーニングが出来上がり、広尾のアトリエに運び込んで、もともとが前田氏のサイズのスーツを佑樹君とアレックス氏にお直しする試着大会を行なった。1着1着妥協せず、丁寧に測ってお直し伝票に記入して工房へ発送した。そこで、仲間のアキさんがこれまた丁寧にわかりやすく仕分けて書き直し、お直し工程へと送った。


全員身長180以上なので、縦方向はほぼ題なく、横寸ややゆとりを持って詰めてカスタムを完成することができた。2人とも自身でオーダーしたスーツはタキシードまで含めて相当な自前コレクションがすでにあるが、なお、先輩のお古をお直しして着る。これをSpiritSuits と呼んでいる。10年は着なきゃいかん、といいつつ、すでに10年以上経過しているものが混じっていた。


というわけで、冒頭につながる。新品のいまどきのデザインのスーツを着た年上から、泥水から復活を遂げ自分用に修理をしたスーツを着た青年は軽い調子で声をかけられる。

『きみかっこいいね~それどこのスーツ?』と。

『ええ、ああ、あまりどことか気にしないんですよ、、、』

一見ぼんやりしたその微笑みに、どんな想いSpiritStoryが宿っているのか相手はわからないだろう。


微笑んでいる青年の足元を見る。きれいに磨き上げられた年季もののクラシックな靴。そしてその横にはこれ以上無いくらい優雅で風格のあるバーガンデイのダレスバッグ。年上のビジネスマンは、ようやく気づく。あれっ?と。。。

スタイルを持つ男が、流行を生きてしまっている自分のことを微笑みながら見ているのだということを知る。そして雑誌やセレクトショップには解説されない、静かな絆で受け継がれている装いの世界が、この世には存在するのだ、ということを知る。