2011/01/23
Grand Tour 2011 12日(最終日) Savile Row , London.
一路、エクセター・セントデイヴィス駅からロンドンのパディントン駅へ。この日ばかりは、特に絶対に遅れたくなかったので、早目に駅で待ち構えていました。案の定、駅のダイヤの乱れで混雑している中、予定よりひとつ前の出発遅れの電車に乗り、パディントン駅には予定より30分ほど早く到着することができました。
最終日、旅の大詰め、ビスポーク@セヴィル・ロウということもあって、これからの過ごす12時間は(個人的には特に)死ぬほどアンテナをぶっ立てて、ヒリヒリするほど覚醒した状態で過ごしたかったこともあり、みなで英国仕様のでっかいレッド・ブルをガッツリ飲みました。上手いことタイミングを測れば、時差ボケにも効くしなかなか頼れるアイテムです。
ロンドン到着。セヴィルロウにて知名度No.1の老舗生地でマーチャント、『 Harrisons of Edinburgh ハリソンズ・オブ・エジンバラ 』 社長、ジェームズ・ダンスフォード氏と待ち合わせしていました。氏は、エドワードエクリュのオーダー・スタイルにおいて 『 Individual Cut インディヴィジュアル・カット 』 と名づけてくれた男でもあります。合流して小雨の中いよいよ、 ANDERSON & SHEPPARD アンダーソン&シェパードに向かいます。
太陽光の下、生地を選びます。僕らがビスポークしたいものは、徹底的に英国的(のさらに典型的なウェスト・エンド的なもの)で、徹底的にアンダーソン&シェパード的なるベイシックなスーツ。気をつけることは、ただ一つ。一切余計なことを “ やらかさないこと ”
英国のビスポーク・スーツは、うれしがりの 『 クリエイティヴ(創造) 』 な世界ではなく、徹底的にストイックで、どちらかというと “ 苦味走った ” 『 クリティーク(批評) 』 の世界だから。
自分だけのオリジナリティ?特徴?個性?吹けば飛ぶような自分の事情(いままでの好みや傾向など)やクリエイティヴィティよりも、ここでは歴史に蒸留されたエッセンスや知恵や哲学に語っていただいたほうが、ずっと本質的で美味しい分け前にありつける。。。それが、セヴィル・ロウを粋に楽しむコツだと思います。
僕のオーダーは、ここ数年来、ふつうに神楽坂でお客様にススメているハリソンズのPremier Cruプルミエ・クリュ。ふだんぼくが使っている見慣れたバンチブックをめくりながら、一瞬自分の執務机に腰かけて仕事していような錯覚になりました、でも、ここはロンドン・セヴィルロウでしたね。
バロン氏は、H.Lesser & Sons エイチ・レッサーのヘビーオンスの生地を持ってきてもらいました。(この生地めくりながら、2人の英国人がニヤニヤしながら、腹の底から丹田を通って絞り出すような “ オウゥゥゥ~っ !” というめき声を上げました。「こいつら、いきなり、そこいくか~」といった感じです。うめき声を確認して、バロンはまたしても躊躇なく、そこの一番最初に出ていた男っぽいながらもエレガンス漂う逸品を選びました。
このうめき声の感じは、ハリソンズ代表のジェームズ(マンチェスターユナイテッド好き)からも聴きましたね。アフターで、カフェにて 『チェルシーのランパート選手は一時期の勢いがなくなり精彩がないし、あんま好きな選手じゃないな 』 というコメントに対して、ジェット氏が “ ランパート選手に、マンチェスターは、けちょんけちょんにやられてきたから嫌いなんじゃないの?”とのコメントを(制止する二人を振りきって無理やりそのまま)訳して彼にぶつけた時の ジェームズの “ うめき声 ” と同じでした(笑)
上写真の彼とは二年前一度会って握手しています。以前、ネクタイ(当日しているネイビーのタイ)を選んでくれて、ぼくが必ず数年以内にビスポークしに来るよ、と約束した彼は、諸々の事情でアンダーソンを辞めていたようです。ディテールのオーダーに関してはどんな小さな特徴もすべて、あなた(アンダーソン)の見解はどうか?どうやるのがベストと思うか?ということを徹底的に訊きました。一人が採寸し、一人が筆記します。筆記する紙はフリースタイルに近い形です。
ちなみに、僕の子どもが誕生した昨年の12月3日、自分が初めてパパになった記念日に、生活環境がかわることを鑑み、今後パパという名の下に気が緩むことのないよう、自分の3サイズを、採寸していたのですが、その時点での数字はバスト94cm、ウエスト78cm、ヒップ91cmでした。今年は自重トレーニングを少しづつ強化する予定です。
ジャケットとトラウザーズで採寸するスタッフがバトンタッチします。持分がナローなところで、定点観測して専門性、クオリティ、採寸精度を磨き上げているのでしょう。細かいところは、今後数回の仮縫いが吸収できるはずですが、彼らの真剣さと採寸ポイントには学ぶところが多くありました。
バロンの番です。彼の場合も徹底して、アンダーソン・スタイルで行くように集中しました。こちらのリクエストを訊かれるシーンにおいても、逆に徹底して質問し返して、一つも“やらかさない”ように細心の注意を払いました。ジェームズも、こちらの意図をよく汲んでくれていて、つねにベイシックに、つねに英国的に、そしてアンダーソンのスタイルで、というところをフォローして伝えてくれていました。
実は、この日の夜だったのですが、ハリソンズ・オブ・エジンバラ創業者一族のキャメロン・ブキャナン氏からのメールで、アンダーソンに行って注文する際に注意するポイント ( やらかさないポイント ) および、ロンドンの良い乗馬店の情報がメールで届いていました。
(やらかさないポイント)において、確認したところ、彼のポイントをすべて完璧にクリアしていた(ぴったり一致したいた)ので、ひそかにYes ! と叫んでしまい、ホッと一息ついていた次第です。常にベイシック、徹底してベイシック、そしてトラディショナル、ヴェリー・ブリティッシュ、そしてアンダー・ステイトメント(控え目な)。。。
顧客名簿に自分の名前を書く時、ちょっと感動しました。自分のページの何ページ前にゲーリー・クーパーがいるんだろう、ブライアン・フェリーがいるんだろう、などとコドモっぽいことを考えながら。。。ふだんとは、逆の立場(客となって)で最高のサービスを受けてみる、ということがいかに価値のあることか、つくづくわかりました(これは実はBALS社長のちょっとしたコメントを雑誌で読んで背中を強く押された部分があります)。感動でうめいてましたよ。息子のスコットも30年後くらいにここを訪れて、父の、ミミズが這ったような手書き文字を見出して噴き出すことでしょう。
書いている時、横で、ジェームズがいいタイミングであおってくれます。『 おうおうエド、今男として、最高な気分だよな、君の名前が今後数百年、いや永遠にアンダーソンの顧客リストに残るってことなんだよ。これはたいへんなことなんだよ!』 この一連のプロセス、(ある意味、仰仰しくスロウで贅沢な)流れは、通常のショッピングでは得られないものかもしれません。この感動を、今後は逆の立場で、ぼくがクライアントに提供せねばならん、ということです。
世界中どこに行っても人気者のジェット氏。このセヴィルロウにおいて、これだけ究極のハイエンドといえるショップにおいて、彼はすでに“ Fantastic Gentleman ”の称号を手に入れていました。ある意味、僕の作品をアンダーソンのスタッフに評価してもらう最高の機会でもありました。
反応・感度は最高で、スタッフが、君のそのスーツに合わせるために、この生地でコートを作ればいいよ、と淡いベージュ系の生地を見せながら、一歩踏み込んだアドヴァイスをしてくれました。反応の観察の結果、ダンディー種ファンタスティック科ジェット目という分類だとわかりました。
この日は寒かったんですが、やはり素足レペットでしたよ。採寸終わりホッとするバロン氏。この後、ターンブル&アッサーのカリスマ、デヴィッド・ゲイル氏に直々にビスポーク・シャツの採寸をしてもらったバロン氏。日本にいる英国通K氏を通して紹介してもらいました。ハーフダースのオーダーで、シャツのコンポーネンツも彼のアドヴァイスを最大限生かして、オーダーをつくりました。ジェームズのフォローのお陰で、ここでも、求めているポイントを外さず、ミッション・コンプリートでした。
シュナイダー・ブーツのルドルフ氏。ご自身もオリンピックに出た馬を二頭持っているとのこと。どっしりした本格的なアイテムがそろいます。多忙なジェームズには感謝しております。シュナイダーまで付き合ってくれて、彼は初めてここに来たらしく、『こんな店があるんだ、やっぱ僕もエドブログで、店チェックしないとな、』などと冗談言いながら、スタバでみんなで一服した後、わかれました。
かなり、あり得ない2ショット。ジェット氏から本を贈られ、“ The Secret: Even an idiot can earn \10,000,000 per year ”のフレーズを声を出して読み上げ、“ オウ、マジか!おれもこれ読んで頑張るぞ ” などとノッてくれて熱く盛り上がった次第です。ジェームズ氏はサッカーの話題のほうが生地の話題よりも熱くなる気質です。そういえば、ジェット本も赤、ハリソンズのバンチも赤、マンチェスター・U も赤い悪魔ですからね。
『 金ばっかりで魂入っとらんチェルシーなんて、こうしてくれるぜ!』と言いながら足で踏み潰すアクションで床を踏みつけ、われわれは大ウケでした。本人はルーニー選手がお気に入りとのこと。そのDNAなのか、ストレートで熱いスコットランド魂に、大いなる親近感を抱いた我々でした。
リッツに、パームコート前のラウンジにて、ほっと一息です。
後に写っている扉の外にSPのようなドアマンが3、4人いて、おそらく世界最高レベルに厳しいドレスコードのスポットです。がたいの良い、コワモテ系のドアマンが、“ 違う ” 来訪者に対して丁重にお引き取り願っている様子を何度も目撃しています。一応僕はプロなので、どの点がダメでコード的にひっかかっているか、その理由は完璧にわかりました。
一度目撃したのは、肩から提げたデイ・パックもダメでしたね。原則に忠実、が前提ですが、実はかなり深い世界ですね。プロトコルにも変数があるようで、特定の要因で厳しさが変わるのは確かです。厳しい中で寛げるマイ・スペースを見つけたバロン氏。毎朝、ホテルのコードをレスペクトしていたので、われわれは最高の笑顔でGood morning , Sir. の挨拶をいただいていました。リッツ・ロンドンから学ぶことがたくさんありました。
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