2013/10/28

Black Tie " Christmas Castle "



元来、日本人にとっての至上の礼装は黒紋付き袴(くろもんつきのはかま)です。にもかかわらず、洋礼装をする理由とは?つきつめて考えるならば、歴史をさかのぼり現代にいたるまで、現時点で(良くも悪くも)世界に対する影響力という点において上座にいる欧米に対する尊敬の気持ちから、といえます。

礼装系は堅苦しくてどうもイヤだ、とおっしゃられたクライアントとのやりとりを少々広げて考えて見ようと思いました。洋礼装と着手(きて)との距離感は、過分の思い入れで苦労する必要もなく、必要最小限をきちんと淡々と装えば充分です。さらっと余裕で(努力・無理を感じさせずeffortless)やってのけて初めて、で・何?と吹けば良いわけです。


DRESSSIR®小島君の先輩にあたるAlex君です。 ビフォア・スーツで、お気楽なアロハスタイルで来店。良く似合ってます。セントアンドリュース製のヒッコリーのゴルフ・パターも良く似合っています。ヨーロッパの血が入っておられるとのことですが、若くしてヴィスコンティ映画に登場するヘルムート・バーガーのような風格を持っています。


カジュアルのシーンもあれば、フォーマルのシーンもある。日本における一般的傾向は、このメリハリを愉しむというスタンスではなくて、これら両方をイージーに混ぜて平均値にしてして同質化させる傾向があります。同じものがたくさんある、というのが好きです。“多様性(Diversity)”の理解に失敗している人がドレスコードのあるお店に入って『人を外見で差別してけしからん』、と言って否定するように。。。。

カジュアルを楽しむ店もあれば、かたやドレスコードの厳しい店もある。そしてどちらのお店に行くかを決めるのは誰にとっても自由意志、自由選択。それが本来の自由ですね。そんな状況 こそが“ 豊かな多様性 ” ではなかろうかと認識しています。バランス的に今世の中は総じて、95%以上がカジュアル文化といえます。5%未満、フォーマルを愉しむ種族がいてもいいのではないかと思います。5%枠(わく)は得なことも多いですよ。




2013年、12月12日神楽坂のアグネスホテル地下1階ボールルームにて、開催いたします。“ Christmas Castle ( クリスマス城 ) ”。 Castle:キャッスル は、Castel:キャステルというフランス輸入の伝説のディスコティークを少しもじってタイトルにしました。小島君、Alex君は当日、Black Tie(黒服) として完璧なタキシードスタイルで登場する予定でおります。

2013/10/10

伊藤喜之(よしゆき)氏のスタイル変遷



2010年4月、衝撃的な出会いをし現在に至るまで、刺激に満ちた楽しいお付き合いをさせていただいています。Jet氏こと伊藤喜之(よしゆき)氏。常にアウェイな状況に飛び出しては、大いなる壁に挑み続ける。

未知の領域に挑み続ける氏の傍らで、DRESSSIR®(ドレッサー)として見守っております。桁外れに面白く、かつ危なっかしすぎるネタばかりで、書き残すことができません。ちょうど全開で疾走するF1マシンのピット・クルー、メカニックの立場となって3年以上に渡りスタイルづくりをやってきました。

上写真は、福岡ドームで行われた、Jet氏による始球式。記念にカスタム仕様のジャケットを贈りました。ゼッケンの書体、仕様、刺繍までソフトバンクのものを研究して再現しました。もちろんネームは氏の著作からBAKA1000番です。走ってきた道のりに思いを馳せた時、それは感慨無量です。

彼はもともと普通のサラリーマンですので、最初は彼自身の軍資金も非常に限られていました。いっぱいいっぱいに振り切りながら月々15万前後の予算でコツコツアイテムを揃えていきました。おっかなびっくりキャラクターづくりをするうちに、仕事もプライベートも爆発的に超進化しました。もはや人間ではないかもしれません。

いやいや実は世界一真っ当な “ ホモ・サピエンス ” です。


現在の宇宙的なスタイリングに到るヒストリーの中で、当然ラグジュアリーな世界も探究してきました。神楽坂に彼が来た際、Luxury Toys という洋書をプレゼントし、勝手にJetのコード・ネームを作り、付き合いが始まりました。今では日本、欧州、アメリカ、アジア、中東、世界中をゴリゴリと飛び回り、まさにJet Setter的状況になっています。

上写真は、2012年の春夏用。6piece Suites 伊製ドラッパーズの最高峰コットン100%のすべて同じ生地で、ボウタイ・チーフ・シャツ・スーツ・ベストを揃えました。シンガポール、マリーナ・ベイのプールサイドで遊ぶために製作したもの。世界各地で評判になり、強い印象を残したようです。


上写真は、当時の野田首相も参加した海上自衛隊の観艦式の時のもの。淡いグリーンのカシミアのアルスター・コートにシャルベのボウタイ。このころまでは、徹底的にシックなスタイルを追求しています。

しかしながら、徐々に『服飾』分野での “ 試行錯誤 ” だけではなく、『人間の意識』にフォーカスするようになりました。〇〇のようなものを身に着けると、人は〇〇の反応をする。エドワードの約200名のクライアントの中で、たった1人の例外として常に冒険アイテムを製作し続けています。

もともとは氏から湧き出してきたキーワードとそのオーダーとはいえ、0.5%の存在がエドワードのガチガチのクラシック志向に刺激を与え、進化をもたらしていると感じます。エドワードがお願いしている熟練の職人たちへも、その刺激が伝達し、新しい試みにや技術に挑戦することになります。




今年、仲良し4人で伊勢の式年遷宮に行った際のクロセットの中。そもそもマニエリズム的色調をプライベートスタイルの色調に据えるエドワードなのですが、その中にあって、いつしか確信犯的にハミ出してきたJet氏のスタイル。



以下つぶやきコメントで変遷と心境を表現します。3年前は、このようなパンツはそこそこ過激でしたが、今ではすっかりトレンドのひとつでもあります。今やると、おしゃれになってつまらないです。これ、おしゃれっぽくない?という言葉が2人のダメ出し言葉になり始めました。


とは言うものの、当時はサプライズ納品の際、試着するたび笑い過ぎて2人とも数分間は話もできない状況でした。『えっ?これ着るんですか?』笑いなのか悲しみかで涙目のJet氏。それを見てまたツボにハマり、抜け出すことができません。試着は、グランドハイアットの特別室にて。


でも、やっぱりライム・グリーンの8分は今でもラブリーだと思いますよ。。このタイも贅沢な太目のシャルベタイです。徐々にボウタイに移行していきます。


ロンドン・セヴィルロウの大御所テーラー、アンダーソン&シェパードにおいても、店内全員のジェントルマンから“Fantastic Man” の称号を得ていました。みなインスピレーションを受けるらしく、似合うコートやコーディネートを提案されていました。


当然そのようにつくっていますので、日本・世界で爆発的にモテるわけです。


でもそれも、“モテるから何?”となります。ちょいワルじゃないんだから、と。“おしゃれにコナレてる、それは冒険とはいえない、と。10カラットのダイヤモンドを埋め込んだ眼鏡。567(コロナ)個のダイヤを使って、デザイン画を描き、国産普通乗用車1台分の予算で作りました。右は、こんな退屈な地球ならば、自分で動かしてしまえ、という社訓のブランドに魅かれて購入した、ダイヤの時計。


もちろん、本物のクラシックも揃えました。ドバイで購入したブレゲ時計にカミーユ・フォルネのガルーシャ(スティングレイ)のバンドをビスポークしたもの。このころ効かせ・挿し色で淡い緑を多用しています。


上も、6pieceスタイル。こちらもドラッパーズ社のコットンを使用。大人の男のたしなみとして、そろそろ殿様スタイルも採り入れてみたくなる年頃かと、日本橋三越にて打ち合わせ。試行錯誤もいちいち現場でやります。


徹底的にクラシックなフルハンドメイドのニッカ・ボッカ。そしてこの頃、もはや意図的なスタイリングから脱出しようと、Jet氏に金と銀のサイコロをプレゼントし、サイコロによるスタイリング開始。試運用開始の際は毎日、画像を送ってもらい、運転時の神の采配を確信し、自動操縦へ切り替えました。


ある日突然、もう一個欲しいということで日比谷のペニンシュラホテルまで買いにいきました。ブラックカルチャー的には、ドープとかピンプ系ということになるでしょうが、そうでもない、装着するとギャラクシー・銀河というニュアンスです。アンドロメダ大星雲がたまたま時計になってみました、という佇まいです。


東京で大雪が降った日。交通渋滞で東京中がパニックになっていた日。閃いてしまったものはしかたがない。すぐ手に入れて試したい。。浅草の祭りの中屋さんに閉店ギリギリにアポを取って、足袋を買いに行きました。脚絆も加え、コハゼもメタリックでイイ感じ。今後、このニュアンスが新しく展開していきます。


これは京都にて、座敷・床でのお食事の際、ひとりだけ着脱に時間がかかる。それもまたイイ。お遍路さんでもなく、手間のかかるスタイル。


全員がエドワードの靴とパンツ。一人違うジャンルの人がいます。Hさんのシャンパンゴールドのパンプスもエドワードのオリジナルのビスポークなのですが、生地がサテンなので、これを傷つきやすい外で履くという行為も足袋を履くのと同じくらいの贅沢なマインドです。


祇園の老舗茶屋にて。一瞬で仲良くなってしまいます。御綺麗どすな~ あなたもね。。


芸者さん、芸姐さんたちに刺激されて、老舗祇園の履物屋を紹介されました。本当は例の芸者さん用の下駄が欲しかったのですが、これも時間がかかるビスポークだとのことで、またの機会にしました。


東京の事務所に戻り、試履き。ゆっくりリラックスするひと時用、プライベート用かなと結論。ここからすでにインスピレーションが湧いていたJet氏。



レッドロバートソンや、ゴードンなど本格的なスコットランドの本物のタータンチェック生地を贅沢に・ふんだんに使用したニッカボッカ。ゴルフ用もこのボトムの上には本格的なハリス・ツイードのノーフォーク・ジャケットを着用し、ヒッコリー製のゴルフパターで、左打ちで打つ。時々右にスイッチするJet氏。




車、というジャンルを超えたかったとのこと。ヤフーで見て即電話で購入した緑のランボルギーニ。宇宙船がたまたま車になりそこねて失敗して怒鳴り声を上げている感、が気に入っている。神楽坂のエドワードの前に停まっていることが多くコドモたちも写メ撮ったりしています。


このあたりから徐々にJetからJekko(つまりジェッ子)へとトランスフォーム。ジェンダーを超えたい、UFOで。。。いろんなハイヒールを根気強く合わせてみました。この時は白のホーランドシェリーのギャバジンのニッカボッカ。


背が高くなる、アイテム。一気に10センチ近く背が伸び、長身のモデル出身の奥様と同じ目線に立てた、とのこと。シークレットでもありませんからパブリック・ブーツですね。シンプルながら、宇宙を感じさせるものにチューニングしています。


もはやジェッ子になってしまった以上、スタイルの可能性は無限に広がっているように感じられます。伊勢にて、シンプルな真珠のイヤリングを発見・購入。

彼のアイデンティティーは 純度100%の『広告人』。誰よりも真っ当過ぎる仕事人。現在の氏の佇まいで、キラキラ美しい銀のバック(一般的にはヤカンと呼ばれる、この中にダイナーズ・カードとi phone)を手に持った男が緑のランボルギーニから降りたつ。否応なく夢に出てきます。



フロント部分の収納は結構広く、ここにジャケットを収納します。それからバック(世間的にはヤカン、マリアージュ・フレールにて購入した銀のてっ器)がきちんと収納される。


ホテルでの打ち合わせが多いJet氏。こちらは、我々がよく利用する最高の立地にあるパレスホテル。バレーサービスのスタッフにも緊張が走ります。ホテルでは有名になっているようで、最近では満面の笑顔で迎えてくれます。

以下、おおよその(説明をあまり必要としない)スタイルの変遷でした。先日街で見かけたジャイアントパフェ。Jetもジェッ子も世の中的には、ジャンルの違うパフェのように見えるのかもしれません。



12月のクリスマス・パーティでは、CDJプレイを披露する予定です。氏の特殊技能であるロックを美しく繋げていくスタイルを楽しみにしています。