2008/06/30

街角と佇まいの美しさ



やはり販売販売だと、アウトプット中心となり、さすがにイメージやご提案する際の形容詞が枯渇してよくない。上の写真はブートニエール用のラペル付近の加工指示(Boutonniere)紳士と花のイメジネーション育成中。

先週金曜日は、築地から銀座まで歩きながら個人的にもここ数年ウェブでチェックし続けている海外有名サイトの“sartorialist”よろしく、街角シューティングしようと心に期して歩いた。

見知らぬ人に撮影させてください、というわけだから結構エネルギーが要る。とはいっても、絶えずすばらしい物、素敵なもの、美しいものアンテナを張っておくことは無意識的に行っている。しかしながら僕の目が節穴だからだろうが、撮影したい、という、佇まいの紳士は一人もいなかった。

街角におられたのは、おおまかに2つに分かれる。全然構っていない方(バンカラ気質もひとつのスタイルでいい)か、髪型、スーツ、シャツカバンから靴まですべてのアイテムが今の流行を採り入れてている方(相当な投資額だ)のどちらも極端な方々だ。

とにかく自然にみえるかどうか、ほど良い加減、そして“イマドキ的”価値観から見てダサかろうが、流行であろうが無かろうがそのひとらしい雰囲気であれば関係ない。流行の要素が強すぎない、という方がなかなかおられない。

その方らしくて味のある佇まいなら、hiphop人だろうが、80年代バブル的ソフトスーツだろうが、ケミカル・ウォッシュジーニストだろうが、喜んで撮影しようと思っていたのだが。雑誌の街角スナップで優秀賞を獲得されるような方は沢山おられた。

撮影欲は、純粋な直観で、20代~70代くらいの幅広さで、佇まいがぐっと来るかどうか、、お願いしてでも撮影したい、という方が当日はおられなかった。

『鏡の法則』や『引き寄せの法則』的に考えると、僕自身が魅力的なスタイルではなかったから、ぐっとくる佇まいと出会えなかったのだ、という風に考えるべきだろう。

アウトプット的には、土曜日に納品した、女性用のスーツJohn Fosterの(90%スーパー100's、10%モヘア)黒に近いグレイ、2つボタン、ピークド・ラペル、パンツは床上3.5cmのクラシックなシルエット。流行に関係ないシルエットだから大事に着用したら30年くらいは着られる。

キーワードは(クラシック&上品&ボディコンシャス)にお仕立てた。単純な採寸地だけではなくて、Vゾーンの開き、角度、ラペルの巾、パンツとの一筆描きのラインに気をつけたので自然に美しいラインだ。



写真は先日のアリストン。これも夏らしいイマジネーションが広がる生地。

日曜日、僕もしばしば寄るセレクトショップ、ナノ・ユニバース勤務のY君、洋服好き、研究熱心が高じて近々ハンドメイドスーツの修行を開始予定。その前にスーツ研究も兼ねて発注してきた。スコフィールド&スミス(SCHOFIELD&SMITH HUDDERSFIELD)のSilk50% Kid Mohair50%のクラシック&ボディコンシャスなジャケット。

お洒落な人間なら見過ごせない生地。緩い集中力では同じに見える異なった生地3種。日本人はDNA的には世界標準とくらべてもボキャブラリー的にも“黒の目利”きだが、この3種類はかなり高度な質感のグラデーションだ。光沢、底艶の光の反射からかろうじて違いがわかる。体調悪い時はわかんないかもしれない。




、、、、、、自然で、流行ど真ん中ではなくて、でもほど良く流行も意識して、クラシックなニュアンスでボディコンシャスでまるで一筆描きのようにシルエットが美しいもの、、、、、、


“サルトリアリスト”サイトのWednesday, June 18, 2008“On the Street....Color Wow, Florence”の写真はオラチオ・ルチアーノ氏、僕はイタリア語は全然わからないが、なんでも氏のブランド名
“LA VERA SARTORIA NAPOLETANA(通称ヴェラ)”
の意味は“ナポリ一美しい仕立て屋”という意味らしい。
己の矜持をカンツォーネのごとく高らかに謳い上げる。

こういう、自然さと迫力と並々ならぬディグニティを持つ紳士達が普通にゴロゴロ歩いているイタリアの街角なら、おそらく街の入口で入場料請求されても支払います。

2008/06/28

風合(ふうあ)い


風合いがよい、風合いが悪い、という表現、これらは服地を手で触ってみたときの評価で、試験器具の測定値ではありません。視覚的なものであったり、指先の感覚、そして経験値がもたらす主観的な判断です。一般的には、

1 しなやかさ
2 張り
3 弾力性
4 腰(シワの回復力、ドレープ性)
5 シャリ味(フレスコ、トロピカル、モヘアなどの特長を形容する際)
6 ふくらみ

など物性面だけでなく、発色の良さ、艶など見た目の感覚的な面も多分に加味した総合的な評価を『風合い』と表現しています。

生地によっても判断基準が変わります。この業界何十年的なテーラーの方や生地屋の業界人が口にする独特の表現は面白く、そしてそれは単に面白いだけではなくて、そのコトバが発生してきた必然性、経験知的な“判断のモノサシ”が存在します。

『腰』、『くた』、『たら』、『ぬるみ』、『ふくらみ』、『ペーパーライク』、『ふかついた』、『底艶』『付け艶』『テカリ』『がさツク』『生機くさい』『シャリ味』『手触りも良くて腰がある、、、』

私は、新しい言葉や言い回しに出会うと、おおっでた!と内心の感動を隠しつつ、数分後に同じように、あたかも自分も何十年も前から使っているような顔をしながら口にしてみたりして、心の中でニヤついたりするのでした。

どんな業界でも、その業界独特の一見(一聞?)わけのわからない、独特の隠語(術語)をジャーゴン、というのですね。ちなみにスーツ発祥の地、英国のセビル・ローでの隠語集はここで見られます。“Savile Row Jargon”プリントアウトして、電車の中でクロスワードパズル作ってみても面白いですね。

2008/06/27

アフターケア、ビフォア・ケア、必要十分+アルファ


MartinSons&Coの3plyフレスコ。ちょっと生地にお詳しい方には有名な、まさに味とコクのエッセンスがタップリ詰まった生地。昨年から今年まで結構みなさんリクエストが多く、ヴィンテージ復刻版も売切れ続出です。

数年後には着られなくなる(消耗して、という理由ではなくイメージが流行遅れとなって、という理由で)うつろいゆく流行品とは別世界・別次元にあるこのアイテム、このようなしっかりしたロングライフ・アイテムこそが今後、定番的人気となるのかもしれません。ゆくゆく、Eではそういうアイテムを中心にしていきたいと考えております。



このフレスコの味とコクをさらに、深煎りしようとリクエストにより縫製前の加工(≒ビフォア・ケア)に神田須田町まで今から出してきます。生地の地のし(縮絨 シュクジュウ)、地づめ、地なおし、生地ひとつにしても丁寧にやろうとしてら、とことん奥深い世界ですね。勉強あるのみです。

このお直し加工の名店『柴田織物修整加工所』はここ数年、アフターケアの際の『カケハギ修理』をお願いしているところでもあります。スーツにおいて目立つ場所での、ちょっとしたスーツの裂けや破けなどは、スペア生地を持参し(破けの大きさによって必要量が変わってくるので注意)見積もり確認し(職人技なのでなかなかなお値段いたします)お願いするとよいですね。

2008/06/26

Future Period


いまさらながら先日、須田町の豆乳・日本茶カフェissaのAくんと話していたら、例の事件があった日の事件発生時刻2~30分後に行って騒然とした現場で事件を知ったらしい。交差点のソフマップに行く予定であったと言っていた。

朝の時点では夕方行く予定が、何かの気まぐれで12時ごろ行こう、となって、その後やるべき仕事が『押して』しまって30分ほど遅れて現場に到着したとのこと。押した仕事が身を救ったかもしれない。

僕自身、須田町界隈は素材屋や生地屋、お直し屋などの関係でよく行くので、お昼にじゃんがらラーメンでも食べこうかということで、中央通りを北上していたら確率的には出合う可能性があった。

しかしながら街の様子はどんどん変わる、たとえばヨドバシカメラ側から新らしいビル群に向かって先日撮ったこの写真(一切加工していないが、まるでゴッサム・シティのような妖しい空の黒だ)もつい1、2ヶ月前だったらココどこだろう?という光景だ。

これはまるでサーバーに見える。最近ではあっという間に建物が立つ。時間もどんどん過ぎる、風景もどんどん変わってしまう。イメージも更新更、データも更新。現実がどんどん抽象化している。

リアルが希薄化、揮発化していく。データがたまり、新しいフォルダーがどんどんできる。時々ごみ箱に捨てられる。

データとイメージ、記録と記憶、まるで冷静と情熱、というなにかのタイトルのようだけど、最近の個人的な仮説では、この2つは、これらは高速更新される上に、実は両立していなくて、人々は高速かつ無意識的にどちらか一方を選んでいるのではないか、と思っている。

2008/06/24

早朝採寸のススメ。


本日は小岩駅を午前5時04分発で(始発は4時44分)電車に乗り、新宿着5時40分。アポ時間10分前の5時50分に目的地に着いたので先方に連絡を入れ10分早めに接客を開始しました。

朝一接客は最高気分良いです。始発で到着できる範囲ならどれだけ早朝にアポ設定していただいてもウェルカムです。そうするとバックオフィス業務含めて仕事が9時に終わるので、気分的にはそこからひと泳ぎにでも行きたくなります。平日・休日時間関係なくひたすら忙しい経営者の方々に早朝採寸は便利かもしれません。

朝の気合を爆発させてリズムに乗った状態で決めていくと前向きな気分にもなります。シワになりにくい毛(wool)55%、麻(linen)45%の生地。彼は畑から自分達で育てたオーガニック野菜をレストランに運び込んだり、という行動を日常的にしているので麻100%だとシワが入りすぎてしまいます。ウール混で復元力高いものが最適です。

色は黒。黒は重い印象がありますが、独特のコクと自然を感じさせる麻の表面の風合いもあってジーンズにもオールマイティによく合います。ジーンズは集めていたこともあり、またテキサス州などアメリカ滞在経験もあるので、現地でテンガロンハット、そしてブーツというスタイルもよく見ていたとのこと。

ということで、4~5年来の顧客H氏。フレンチカジュアルレストランの経営をしています。今度、銀座歌舞伎座の前に、120人収容できるスペースで4店舗目のレストランを開店します。ジャズの生演奏とオーガニックな食材とワイン、世界のチーズ、そして自社農園にて育てた野菜でのおもてなし。

その彼と6時から9時まで近況から未来世界のシュミレーションまで話していました。

彼はオーガニックから循環型企業へと仕組みを考えています。120坪と60坪の畑を借り、スタッフで大切に育て、ゆくゆくは会員制でお客さんまで参加できる仕組み。しかしながら、循環型はコストも手間もかかるのでそれ相当の覚悟が必要とのこと。

堆肥を作るにも、土を広げる場所、手をかける時間、労働力が必要ですし、いちいち食べ残しを分別することにしても、ゴミ分別の数倍の細かい分別が必要になります。やり方を間違うと作業効率の低下を招きます。それでも循環型にこだわる理由。

数年前から言われていますが、食品材料の価格は今後上昇し続けるといわれます。交わした会話、なぜか未来シュミレーションのネタに。キーワードは以下。

偽装問題、対処療法よりも、問題に共通する、コスト構造の問題点を見つめるマクロ洞察も大事
食料危機
食料が海外から調達できなくなってきている
中国、ユーロ諸国も強力になっている中、商社が食料買い付けても採算合わなくなってきている
商社がじかに畑を買い付ける時代が来ている、
国内自給率は40%、でも減反政策の後遺症
何ヘクタールの平野を大型トラクターで一気に耕せる生産性高いアメリカと違って日本は狭領地ばかりで生産効率は低い
物価は上昇、就業率は低下
10年後に今と同じ食生活はあり得ない。ヤミイモ、ヤミゴメイモばっかり、という可能性もある
できるだけ、食料生産者に近い位置にポジショニングすべし
農地を借りても、法的に大家が返却を要求すれば返却しなければならないのでつくづく生産者との人間関係が基本になってくる
農地を購入して作物を作っても今後は、悲しいことだけれど、サルや鹿でなく人が作物を持ち逃げする可能性がでてきて、それを防ぐ農地用フェンスを企業が開発中
コストが上がりすぎるとレストラン業態自体の存在が危うい
『バターは今お金出しても手に入らない』ということを不思議に思わず、慣れてしまう昨今、『もう街には、車がいなくなったよね』という未来が来てもひとびとはその状況に慣れて、話題にすることすら飽きる可能性も十分あり
自動車販売台数低下
すべての価格が10倍になった可能性をシュミレーション
ガソリン、石油価格高騰、ここに天災が来たら、
東南アジアは水面上昇で中央部を除いて水没リスクあり
国家の一番深刻で、ネガティブな側面に大きな影響を与え続けている重要・緊急な優先順位1位の問題であると同時に日々たくましく巨大化している国の借金問題はぜんぜん報道されないが、たとえば、国家の借金問題の10億分の1にあたる、数十万円単位の国内のどこかの小さな村や町の助役なんかの横領(飲み代、タクシー代)問題などが定期的に大げさに報道されるがそれはあくまで金額的には数10億分の1の問題。自分で数字で表記してみるとわかりやすい、例えば、

500,000円(金利で拡大することもない損失確定の固定額)は、
1,000,000,000,000,000円(金利でダイナミックに巨大化中)の
0.00000005%の問題。

確かに金額の問題ではないという考え方も正しいが、臨界点を越えた量は質へと転化する、そして新しい構造、枠組みをつくってしまう、という考え方もあります。

北京オリンピック後、中国でバブル崩壊が引き金で一気にハイパーインフレが来る可能性あり。
などなど。

煽ると僕らの業界など真っ先に予算縮小の余波を食らう可能性もある中で、こうなったら次の企画はイブ・サン・ローラン追悼とオマージュも込めつつサファリ・ジャケット(本来の機能的でタフなもの)、そして非常に丈夫な厚手コットンの生地で誂えたサバイバル・スーツ、がいい。

いずれにしろ、僕自身、ここ数年続けているアグリツアー(耕しツアー)時のスタイル、ファッションを『AgriStyle(アグリ・スタイル)』『AgriFashon(アグリ・ファッション)』として確立することが急務となりました。どんなに危機が来ようとも、むしろそんなときこそ不動のおしゃれ心が大切です。

以前、外人部隊について取材されていた戦地ドキュメンタリー本で知ったが、究極の限界状況も含めて戦場で、飄々(ひょうひょう)としつつも不思議なくらいサバイバルしていく人間には共通のタイプあり、と読みました。

例外的にひっ迫した緊急状況を除いて、日々規則正しい生活リズムを送り、シビアな状況においても、きめ細かく持ち物(武器)のメンテナンスを含め、身づくろいも小ぎれいにしているタイプ。隙間時間にヒゲ剃りしてたりと、身近なメンテナンスを厭わないタイプらしい。“習慣力”によって質の高い集中力を持続させるのがコツだと思われます。

自分なりの儀式やジンクスを大事にしたり、信心深かったりと精神のコア部分にまで響かせることができる、独特の平常心の自動操縦ボタンはコレだと認識できていると、強いのでしょう。

ハリウッド映画で、ものすごく忙しいビジネスVIPが、タイトな会議中にテーラーに仮縫いしているシーンとか、三国志で諸葛孔明が戦地で優雅に楽器を奏していた、あるいは、兵士として戦場に赴いた英国紳士らが戦場でドイツ軍戦闘機メッサーシュミットが自分達のところまで到達できるかどうか戦闘活動しながらも賭けをしていた(戦地の緊迫感を博打の一喜一憂に変換することで、結果的に戦場サバイバルの必要条件である冷静・客観性を獲得)、、、などは、その心境になにかしら共通するものがあるかもしれません。

しかしながら昨夜はベットに入ったのが2時30分、さすがに今は眠いですね。

オヒョイさん


芸能界でもおしゃれで有名な俳優の藤村俊二氏(オヒョイさん)。街角でしばしば見かけますが、直接お話したことはありません。今朝テレビで氏がおしゃれについて語る、をやっていました。

そのときのビデオによると、若い頃は、エネルギッシュなモンキー風フェイスですね。フランスの俳優ジャン・ポール・ベルモントのようなやんちゃな風貌。

彼によると、氏は毎日アイロンと靴磨きを欠かさないとのこと。毎日の精進の結果、彼らしいスタイルに辿り着いたんでしょう。白洲次郎というキーワードも飛び出しました。反面教師的なものから学んでいく、というようなことを言っていました。



スタイルの工夫として、確かハリウッドの俳優クラーク・ゲーブルもトラウザーズの内側にシャツが飛び出さないための小さなボタンをつけていたと読んだことがありますが、彼もシャツからネクタイが離れないように、ネクタイの背面のリングに引っ掛けるボタン留めフックを特注しているとのことでした。



日々の丁寧な暮らしぶりから来る、いわば“様々なる意匠(衣装でもあるし)”、年季が入ってくれば工夫も無限大なのでしょう。確かに世知辛いニュースが多い昨今ではありますが、シニアの楽しみぶりも大いに語るべきですね。

2008/06/23

水面が揺れるように、



知人の若手医師は、いろんなものをキレイだ~と表現する時に、自分の手を撫でながらテキスチャーがよくてうっとりするよな~、という言い方をしますが、たしかに表面というのは物自体と空間のキワであり、緊張した境界線です。

ですので何かしらそこに美を見出したり、木工における『ツライチ』のように、完成度の高さを求めてしまいます。その緊張空間をゆらゆらとさざなみが立つ、水の波紋が広がるように優雅に揺れる素材は、その内実、実質はいったいどうなっているのかと考えます。

糸の太さを示す番手とは違って、毛の太さを示すスーパー表記は以下のようなものがあります。一般的に細ければ細いほど値段が高価(※使用目的や環境によって価値観の物差しはひとつではないですが。)です。羊毛繊維の直径をミクロン単位であらわします。ちなみに1ミクロンは1000分の1ミリです。IWS(ザ・ウールマーク・カンパニー)によると,

SUPER 80'S 19~20ミクロン
SUPER 100'S 18~18.9ミクロン
SUPER 120'S 17~17.9ミクロン
SUPER 140'S 16~16.9ミクロン  
SUPER 160'S 15~15.9ミクロン 例)KITON スーツ上下 ¥627,900
SUPER 180'S 14.5ミクロン メリノ・エクストラ・ファインウール
SUPER 190'S エクストラ・スーパーファインウール
SUPER 200'S エクストラ・スーパーファインウール 例)国内老舗テーラースーツ上下 ¥2,000,000
......
......



そしてこれは見たことない、これはSUPER 260 の原毛。(はて何ミクロンですか?なんとか光年、なんかと一緒でスケールをイメージできませんが)SUPER 260。凄い技術力の世界ですね。

ちなみに、こちらはビキューナ(Vicuna)の原毛



そしてこちらは、今後、夏の定番になるかもしれない、オリエンタルでシルキーなバンブー100%の生地。



※スーパー260'S原毛と、ヴィキューナは2点目ともケン・アオキ氏が持参していたサンプルより。

2008/06/21

コクのある美しい靴の質感は、煩悩に刺さります、


今日お昼過ぎ、東京の東の果て、小岩の僕の自宅兼オフィス兼フィッティングルームにお越しいただきましたのは、T氏御紹介にて現在靴職人精進中の女性S様でした。ご自身で製作された外羽根式の赤い革靴を履いておられました。ハッとするような美しい靴で、彼女が帰られた後、自宅にいるうちの母が、あれはきれいな靴だったわね~と感嘆していました。もともと彼女は靴磨きからこの世界に入ったとのこと。

最終的に、アリストン (Ariston's Napoli) のアイリッシュ・リネン(Pure Irish Linen100%、250g)生地を上・下で発注されました。コクのある淡いココアの色。ラペルの縁に沿って手縫い風のAMFステッチをつけたり、ちょっとボタンホールの色をバーガンディがかった濃いグレイであしらったりします。夏の日差しが強い日中でも、女性が麻のちょっとゆったり目のトラウザーズでキメて、足元は白のエスパドリーユでお散歩している姿など実に涼しげで見とれてしまいます。

ところで、個人的にはあまり好きな靴屋には近づかないようにしております。煩悩との戦いで、足袋Airで解脱せねばならなくなるので。解脱しても荒法師になってますます間違った方向に行きそうです。さて、いい靴でそれが不当に高いわけでもなくて、納得できる値ごろ感あるものだった場合、欲しくて買わずにおれなくなるので今のところ靴屋の前では、さらっと流すようにしております。

いつの日か、ウィーンかロンドンでビスポークしてノーザンプトンに行って既製の靴を買いまくりたい、と思っております。しかしながら一番良いのは、理髪店からテーラー、そして靴屋、ジュエリー屋から花屋、カフェあるいはバールから趣味の良い古本屋に至るまで仲間が集まってどこかの街角に味とコクのある佇まいの一画を形成すれば、さぞ愉快だろう、と長期的な展望で夢と妄想を膨らませた土曜日の午後でした。

メンズのトラウザーズのシルエット事情。


先週は、銀座のバーニーズやエストネーションに同行し、I氏のリクエストにより昨今のメンズトラウザーズ(and コットンパンツ)のシルエット事情をフィールドワークさせていただきました。やはり最近のスタイル、流行も楽しまれているI氏としては、ファッションも大切なポイント。こちらも楽しみながら学ばせていただきました。ありがとうございます。

結構、意識したシルエットがイタリア、『インコテックス036モデル』イタリアサイズ46を参考に、ウエスト78センチ、ワタリ巾31センチ、股上25.5センチ、膝巾21.5センチ、裾巾20.5センチからのカスタマイズでした。これもイタリア的なバラエティ溢れる色彩生地群のカチョッポリの生地バンチから2本選びました。

ついでに、自分の研究用兼カジュアル使用に『インコテックス036モデル』のサイズをそのまんまにカジュアルパンツ用に発注してみました。数年前に買っていたやや底艶のあるグレイのコットンドリル(※1)を使用。

そもそもパターンの立体性など同じサイズに作ったとしても違うものになるでしょうが、参考までにベンチマークとして。確かにここ5年くらい、個人的にも夏のカジュアルパンツはインコテックス、GTA、カスタンジアがヘビーローテーションです。

(※1)Drill Fabric綾織物、日本名では雲斎(うんさい)織、葛城(かつらぎ)織。カーキ色に染めたらkhaki cloth。

シカゴの老舗テーラー、“クラシコ・アメリカ(※このキーワードが今後メンズ・テーラードのシーンを動かす模様)”オックスフォード・クローズ。マレーネデートリッヒ、そしてキャサリン・ヘップバーンも顧客だったらしいとケン氏が言っていた。会社の倉庫の奥に紙でそのままの型紙があるはず、とのこと。非常に興味がそそられる。

2008/06/20

After tea MTG with Ken Aoki @SHUZO's report.



昨日は、今週NYから帰国している先輩格にあたるケン・アオキ氏(※彼によると、ネット上で最近ぼくのニセモノが存在しているようで、、、と笑ってました。同時に“僕は自分の署名入りでしか書かないから、と断言してました)と、K氏、Y氏、そして30'sスーツスタイルのブログにおいて、たびたび彼とやりとりを交わしていたSHUZO氏を含め5人で銀座ダンヒル本店にて11:30よりティー・ミーティングをしました。

表参道界隈で、再度SHUZO氏が合流し、ビールで一杯やりつつ充実した時間、服好きにはたまらない薀蓄の数々を惜しげもなく展開してくれるケン・アオキ氏との話題をあれこれ反芻したりして、アフターアワーズの余韻を楽しみました。

昨日の件もあって、興が乗り、大切にしている世界観がさらに活性化されたのか、SHUZO氏から長文のレポート・コメントが届いたので、そのままこちらに載せておきます。研究成果を具現化するステップにあるSHUZO氏。今後の展開の一歩一歩を期待しております。

※写真は手前がケン氏、そして腕の向こうにSHUZO氏。

SHUZO氏より☆☆☆

僕は“クラシック的(古典?傑作?)”なるものが好きです。しかしそれと同時に“ポップ的(今風?)”な物も好きです。服飾的にいえば“トラディショナル的なる物”と“モード的なる物”といえるかもしれず、この二つの要素は本来相容れることなく対極にあり拮抗している物であるように見えます。(そしてお互いのテリトリーを守る事に誇りさえ感じているように見えます)

僕にとって30′sスタイルはまずフォルムありきであります。そしてその魅力とは存在感としてもフォルムとしても“古典”と“モード”の垣根をとっぱらったかのような自由さを内包しており、そこにファンタジーを見いだしているのかもしれません。

少なくとも僕がこのスタイルに興味を持った90年代初めころはその両陣営は全く交わることなく、そこには言い様のない閉塞感が鎮座ましましていたように感じます。そしてその頃は両陣営がお互いの特性を声高に主張し過ぎたがゆえに、お互いの悪い部分が一番噴出していた時期であるとも言えると思います。

つまりクラシック的な物は「こんなものは駄目だ。こうでなければ駄目だ」と言い過ぎて窮屈さを増し、ポップ的な物は「表現とはこんなに自由なんだ」と言い過ぎ、表現したいものの輪郭を無くしていった時代であるといえます。

僕自身のただの思いこみに過ぎないかもしれませんが、この時期の両陣営の隔絶によって「装う」ことに興味を無くした人々が大多数いるのではないか?と感じています。僕自身もモード的な物から入った人間でありますが、やはりその時期に一度意味を見失い「NEXT」を探していた記憶があります。

その時に見つけたものの良さとはその当時には言葉にまとめる術も無かったと思いますが、今の目で纏めれば「既成概念を壊す事と、温故知新と言う対極を同時に模索する事」であると言えます。

その当時の音楽文化でいえば、ともすれば古臭く感じられるジャズを“クラブジャズ”として転生させたりフォーキーな物を“ギターポップ”として開花させたりする行為。そこは古い物のルールにあえて少し縛られながらも少しずつ新しい物を入れ込んで行くと言うコンセプトが見え隠れします。

同じようなコンテクスト(文脈)を服飾に持ち込んだ今西祐次氏のブランド「プラネットプラン」にも感銘を受けました。彼は50年代のコンテンポラリージャズのスーツスタイルを積極果敢に採り入れ(このスタイルも彼が表現しなければ世に出る事は無かったと思われ…)、それ+アルファのカンファタブルな要素を入れ込んでいたように思います。

当時あった30′sスタイルのお店「コイーバ」のN氏は『ブリティッシュトラッドをやりたいんですよ』と至極まっとうなことを仰られておりましたが、チョイスした時代(1930年代のブリティッシュ)は挑戦であったと思います。何せ普通の人は1930′sと聞いただけでは全く型が浮かばない。スタイルもその当時の一番尖ったもの。その当時、90年代ならば、トラッドショップにしかないであろう端正なシルエットとディテールのジャケット、そしてその当時ならばモード店にしかなかったようなゆったりしたバギースタイルのズボン。

その二つのアイテムが混雑しているある意味前衛なスタイル。でもなおかつクラシックでもあるという。そこにある意味痛快さを感じていました。『トラッド陣営よ、長年の内に勝手なルールで凝り固まりすぎたんじゃないの?』『モード陣営よ、あなた達の創る物に確固とした趣味、目的はあるの?』と双方にダメ出しをする痛快さというか…。

当時、そんな30′s スタイルという“共同幻想”をカンファタブルな精神をもって90年代に再構築していた先人達は影を潜めています。しかしそれを受け止め、受け継いだ僕達はたしかに存在するので、さらに新しい解釈や意味付け、さらにグローバルな視点や温故知新も採り入れながら、これからの構想を練りたいと日々画策しています。

☆☆☆

2008/06/19

男は華やかに、女はシックに。



ひとつ前のブログに登場したK氏からメールにて、価値あるコメントが来たのでこれも載せてしまいましょう。最近われながらブログフットワークが軽い。あちこちから入ってくる情報量が巨大で、蓄積が臨界点越えたせいで、さくさく書き続けたい衝動に駆られております。

以下メールより。

「スウィーツが似合う男に成りたい」これは、スーツのアンチテーゼでは無く酒、煙草へのアンチテーゼです。言い替えれば「スーツでスウィーツ」です。

「料理は店が作る、雰囲気は客が創る」つまりは客と店は平等で両者で創っていくものだと言う事。

「男は華やかに、女はシックに」男の人にはシックを目指し過ぎたり、地味過ぎる人が多く、女性(特に中年おばさん)には派手過ぎる人も多いのでこれくらいを目安に、、、と言う事。

☆☆☆☆

最近、K氏はダンヒルについて『男丘』という一文字漢字名も開発されました。たとえば、ダンヒル上海店だったら『上海男丘』と表記されるわけですかね?

※写真はウォン・カーウェイ監督の映画『The Hand:若き仕立て屋の恋』パンフレットより。

『Suiting』のたしなみ、スマートなメンテナンス方法。


よく海外のテーラーの案内を見ると、『Suiting』と動名詞形で表現されています。スーツが生き物みたいでいいですね。実際、羊やら山羊、綿花だったり、蚕(かいこ)、麻だったりとそもそもが生き物ですし、生きているんですね。

採寸、生地決め、購入、着用、お手入れ、と大切にし続けることまで含めて『Suiting』かもしれません。大事に付き合いたいものです。買いっぱなし、逆に言うと売りっぱなしではいけません。

最近顧客メールのフッタにつけているメンテナンス方法をこちらにもアップいたします。写真に上げましたが、ほんっと水洗いクリーニングは買ったばかりのような状態になります。以前から、単純に直観で、水が一番洗い効率いいのではないかな~と感じていた方多いのでは?

結構サプライズな程、新品に近い仕上がり。そしてその巧みなアイロンワークによってラペルの立体性がキープされています。

お仕立てしたスーツは、意志と時間とお金(スタイルづくり試行錯誤・採寸・生地決め)を投資して誂えた究極の1着です。ご購入後のメンテナンスによって、できるだけ長く着ていただけるように(最低でも5年。物によっては10年。ハリスツイード・ジャケットなら100年)経年変化を楽しみながら愛用していただけるように、以下メンテナンスに関しての情報をお送りいたします。

1.着用後のブラッシング(ブラシ情報は以下)
2.シーズン終了後のクリーニング(クリーニング店情報は以下)

着用した日の帰宅後、収納する前に必ずブラッシングをしてくださいませ。
そして、シーズンの終わりには、(現時点で国内最高と思われる)以下の
クリーニング店に出されることをオススメいたします。

1.ブラシに関しては以下です

基本的なウール素材のスーツにはウール用の黒毛豚ブラシ、デリケートな生地には白豚毛ブラシをお持ちになることをオススメいたします。(※来客用、やわらかい素材を好む女性客用に柔かい白毛豚ブラシが玄関先にあるとホスピタリティが上がります)

都内を歩くと、単純な埃や排気ガスによるスス、季節によっては花粉などアウターの上着に積もっています。衛生面からも服のメンテナンスの面からも、毎回帰宅後にブラッシングしておくと、長持ちしますし、気持ちよいものです。私は個人的には玄関外でブラッシングするのを習慣にしております。

以下、オススメブラシショップの『江戸屋』。10月19日~20日のべったら市で祭価格にてブラシ購入というのが通なのですが、

しかしながら、“べったら市”まではあと半年弱あるので、今回の生地の場合、以下の安くて便利なショッピングサイトでそれぞれ1本づつ買うのが賢いかもしれません。携帯用のブラシは、ピンポイントならいいですが、小さいので手が疲れます。

江戸屋 洋服ブラシ <ウール用>

江戸屋 洋服ブラシ <カシミヤ用>

2.クリーニングについては以下です

基本的にはクリーニングに出さないのが一番という認識でしたが、最近ではクリーニング店の技術も一部で向上しており、水洗いでアイロンワークも達者なクリーニング店がありますので、シーズン終了後こちらにお出しすることをオススメいたします。

通常ウールスーツ上下の場合6300円(税込み)です。特殊素材だと8400円(税込み)ということです。シーズン終了時、こちらにお出しになれることをオススメします。

ナチュラルクリーン 
《東京オフィス》 新宿伊勢丹メンズ館の8階に受付があります。

※参考まで
クリーニングも究めるとひとつの『文化』ですね、深い世界です。(最新情報あればまた更新情報送ります)高級スーツの水洗い<後編>仕上げの工程数の多さに驚き着た瞬間に軽くなったことを実感。 

以上です☆☆☆

2008/06/18

スーツが似合うよりも、スウィーツの似合う男でありたい。



たびたびこのブログにも登場させていただいているK氏。
エドワードにおいて常々トータルなアドバイスをいただいており、センス顧問的な存在です。最高に穴場のカフェやレストラン、トラットリア、ファッションも含めて、彼から教えられたことは枚挙に暇ありません。ありがとうございます。

“花はなぜ美しいのか?君なりに答えを考えてみたまえ!”

僕としては、まだこの答えを保留にしたまま現在に至ります。
いずれ、こちらに答えを書きます。

しかしながら、慧眼紳士であると同時に、
しばしばタイトルにあるように洒脱な名言をつぶやきます。
ものごとの本質をお茶目なオブラート(※イタリア系老舗ブランド)
で包まれる紳士。

今週月曜日、氏より、銀座からの緊急メールが送られてきました。
最近はお坊さんも変わったな~



“足袋 Air”

浮世の長旅に、地面からちょっとだけ浮かんだところを
気ままに歩けるアイテムかもしれません。

2008/06/17

3つのグレードで語られる紳士服における縫製の贅沢。


本質を見抜いてしまう慧眼(けいがん)紳士たちは、スーツ誂えに際して、『贅沢』する気分になった時には、できることなら本質的な、意味のある、根拠のある贅沢をしていただきたいと思います。イメージ贅沢、一流ブランドだから、値段が高いからよさそうだ、という理由でモノを欲しがるメンタリティはちょっとどうかとな思います。

昔一流ブランドを欲しかったけど、買えなかったから今買う。昔値段が高いものが欲しかったけど、買えなかったから今買う。というようないわば、復讐めいた渇望なのかもしれません。売り手は、お客のブランドコンプレックス、贅沢コンプレックス、お金持ちコンプレックスに付込んで、値段を高くすると、ムキになって買いに来られるお客様がおられるわけですから、ある意味、こんな愉快な商売はないですね。

スーツで価値のある贅沢をするとしたら、その根拠は、

『相談贅沢』
『生地贅沢』
『縫製贅沢』

今日は、この最後の『縫製贅沢』について調べるべく、当『エドワード』とお取引していただいている縫製工場の工場長と4時間近く語り合った内容の一部を書きます。やはり品質についてが一番気になるポイントなのですが、誰かから聞いた、誰かを介した2次情報ではなくて、実際に工場に行ったり、実際に工場の人間に話を伺って、品質の正しい認識ができると思います。ちなみに、その工場は以下に説明する“ナンバー4”に該当します。現在試作として“ナンバー6”も縫製に向けて改善中です。

ナンバー2 大衆品 (購入者のの考え方:できるだけ安いスーツが欲しい、品質は最低限をクリアしていればいい)縫製175工程 300分(5時間) 指示されたことを指示された通りにできる、技『能』者が縫製する。工程数が少なく単純にすることでコストを下げる、できるだけ廉価で最低限度の品質を持ったスーツを仕立てる。

ナンバー4 中級品 (購入者の考え方:品質の高いしっかりしたスーツが欲しい。ただし、予算はいくらでも出すということではなく、自身が感じる値ごろ感の範囲内であって欲しい)縫製240工程 420分(7時間) 教えられたことを努力して習得し、教えられた術を安定してできるようになった、技『術』者が縫製する。値ごろ感から逆算したコストを意識した中で、その範囲内での最高品質を追求する。

ナンバー6 高級品 (購入者の考え方:最高品質のスーツが欲しい。予算は気にしない。そして縫製箇所によっては手縫いが必ずしも絶対だとはいえないということも知っている)縫製325工程 600分(10時間) 熟練の技『術』者たちが、ひとつの理論に基づいて組織的に縫製している。機械の方が仕上がりが手縫いよりもきれいにできる(※インターナショナルライセンスによって判断のガイドラインがある)部分に関しては機械で縫製する。合理的な考え方で最高品質の高いスーツを作る考え方。

例1)
地襟(じえり)は、マシンと手まつりではテンション(張り)が違う。ゆったりしていたほうが良い。
ナンバー2、4 : ミシン~50センチを手マツリでやると、80センチ~90センチ必要。1分。
ナンバー6 : 手まつり~50センチを手マツリでやると、200センチ~250センチ必要。ベテランでも30分。

例2)
腰ポケット
ナンバー2、4 : 自動ポケットマシン使用。多くて5工程。4~8分かかる。
ナンバー6 : 手縫い。15工程。40分かかる。

例3)
ナンバー2、4、6 : 一台300万くらいするマシンにてボタンをとめる。ナンバー6はボタンつけの際、根を14回巻く。

例4)
袖付けに関して、ナンバー6も、袖はミシン使用。袖裏は手作業。内の、ゆき綿と仕付けは手作業、そしてそでやまの縫いしろの間に埋める技術あり。グシ量(イセ量)も今は昔と違ってフリーハンドミシンに取り付け。

※注)手作業よりも縫製機械のほうが、仕上がりが美しく、作れるのであれば、合理的に高品質のスーツを作る手法としてその機械縫製は採用だ、というのがナンバー6的な考え方です。
とりあえず、今日は、ここまで。

2008/06/16

From SHUZO's Report@GINZA



本日、久々に銀座に。初めてブルックスブラザース銀座店に行きました。
地下にはブラックフリースもラインナップ。ジュンヤワタナベ×ブルックスブラザースの商品も。

僕のお目当ては2003年に記念出版したブルックスブラザースの歴史本。もう五年前の本なので無理かと思ったら難なく購入出来ました(^∀^)

外装はチョークストライプの生地で渋いです。そのあと柳通りのラルフローレンに。ヒュージ誌に掲載されておった白ダブルのジャケットを拝見。かなりタイトそうでバックベルト仕様、そこはなかなかよいのですが、なんと!センターベント…その一点だけ、イメージ違いましたねー。

あとチョークストライプのジャケットとウエストコートとトラウザースのセットアップいわゆる完璧テーラードなものでなく、アンコンっぽいカジュアルなセットアップ。トラウザースはドレーパーズベンチも真っ青な極太オックスフォードバグス!

イングリッシュプリーツにフォブポケット、ハイウエストのハイバックでブレイシズ仕様!ラルフローレン、なかなかやるなあ!しかしジャケットはまたしてもセンターベント(^.^)トラウザースの前開きはフライフロントのボタン留めではなく残念ながらジッパーでした(-.-)惜しい!

ことごとく惜しいなラルフちゃん(^∀^)しかしトラウザースに関してはああいうシルエットがいまだに発売されるとは要チェックです。

※エド注記
上のテキストは、メールでプチレポートを送ってくれたSHUZO氏のものです。数年来の地元イタリアンカフェV仲間。1930's代スタイルに造詣が深く、さるサイトの掲示板に累積された資料的価値の高い、貴重なコメント群の一翼を担っていました。彼が丁寧に話題の水を向け、業界諸先輩から引き出すことに成功した数々の情報もまた非常に価値の高いものでした。

その謙虚な姿勢とレポート能力は、まったくもって顕彰すべきものだと、常常共感・尊敬しています。得がたい無形資産であった掲示板が再開されることを祈りつつ。それまで、こちらでアイドリングしながら、しばし待機していただきます。

さて、銀座はやはり大人ファッションにおいて充実しています。ついでに、先週金曜日も一杯飲みに寄った店、夕方の早い時間からカウンターで絶妙な味わいのポテトサラダをつまみながら一杯やれる銀座のバー『BRICK』。そのお隣にある、魅力的なアイテムがひしめき合う名店、“GRAVITAS & GRACE” @GINZA のセールが6月19日(木)~6月20日(金)あるようですね。こちらもチェックしに行く予定です。

2008/06/14

雨上がりの木々の緑も、かなりいいですね


先日青山一丁目のアポがあった際、なんとなく歩きたい気分だったので、
地図で見ると直線距離で近い千駄ヶ谷から青山一丁目まで歩くことにした。

以前、一度夜中にこの直線距離をトライしたことがあって、えらく大回りして時間がかかったことがある。今回は緑を味わいつつ、道も確認しつつ歩いたので時間かからなかったと思う。

昼は遠くに建物が見えるから、とりあえず大きく道を外れることがない。
(しかし、30分くらいはかかったかもしれない)伊藤忠ビル、青山ツインビル、神宮球場、、、

小雨ということもあって、通行人がまばらなので、で~っかい森をひとりで歩いているようで気分がイイ。新宿御苑に千駄ヶ谷門から入って歩く静けさもかなりレベルが高い。数回、打ち合わせ新宿御苑で、というのをやった。

それから、御茶ノ水駅から水道橋までの神田川沿いの緑も実は相当なもんですね。そのうち車窓からの動画を撮ろうと思っていてなかなか実現しないが、ここの車窓はウォン・カーウェイ監督 『欲望の翼』のワンシーンのようだ。

今日は夕方から上野桜木町の知人宅に行く。この界隈も相当落ち着ける、そして相当豊かな場所だ。国立博物館、美術館、奏楽堂、動物園、谷中の墓地、日暮里、千駄木、根津、朝倉彫塑館、、、、森の空気を吸いながら、あちこち楽しめる。

谷中の墓地は夏の涼しい夕方なんかに歩くと、ノスタルジックな気分やら彼岸からのひんやりした風で最高。ということで、小岩⇒上野までは、永井荷風を気取って京成線で行きます。

永井荷風といえば、K氏より教えてもらって以来愛読しているH氏の“凄い”ブログ『六義庵百歳堂(りくぎあん ももとせどう)-人生が2度あれば』において、現在、荷風について書かれています。4月のはじめK氏とともにH氏に直接お会いすることができ感動ひとしおでした。好きな方は必読ですね。

2008/06/04

Maturity and verdure



円熟、完成、大人、慎重:maturity
草木の緑、新緑、新緑の若葉:verdure
若葉:young leaves,fresh green
黄緑:yellowish green
だいだい色:orange

今思えば、大学を卒業してから数年後、友人から聞かされた、ひとりの教授の死は謎だった。

ギリシャ哲学を研究されていたその教授は、シニアな洒落者でハーレーダビッドソン乗りまわしたり、多方面で活動されてマイペースに人生を楽しまれる姿は、われわれ学生にとってむしろ羨ましいものだった。

個人的に最期に会話を交わしたことは覚えている。人生いろいろ体験していくと、欲しいものは若さだけになるんだよ、と言っていた。ほ~そうなんだ、ギリシャ哲学、晩節、そして若さへ、、、意外と陳腐だな、と未熟ゆえの残酷さで教授を認識したことが申し訳ない。

先日、村上龍と小池栄子の番組を偶然観た。2004年の個人的スクラップブックに記事を残していて、感動して折りたたんで電車の中で何度も読んでたからクシャクシャになっている。

永守氏のポケットチーフの若草色。何か希望、というようなメッセージに感じた。不変(普遍ともいえるかもしれない)の精神、あるいは志の『若さ』を保持した状態で、『成熟』を遂げることに成功した先輩たちが、社会的な影響力を持ち得るのかもしれない。



感動して昨年の春頃、電車で2度繰り返して読んで読書会にも持参した本は『社員をサーフィンに行かせよう』Let my people go surfing。理念を大切にした結果実業でも成功する、とはなかなか難しいことだ。

現在書店には溢れんばかりのビジネス書が並べられている。そしてそのスケールはデカイ。自分ででっかい企業を経営していて、参考にするなら役に立つけど、というようなビジネス書が多い。

読み物的に面白いし、自我拡張感を刺激されて良い気分になるけど、結局その本が自分にとって実質的に価値あるものだったかどうかわからない。

さらに会社の99%が99人以下の中小零細企業という日本において、書店の品揃えは若干疑問だ。そんな中、身近なところで、ミスター・オレンジこと僕の顧客のMr.Orangeが『地方発信型ビジネスモデルの作り方』という本を今年出版した。

『地方』を『個人(あるいは小さな会社)』、『都市』を『(大)会社』と置き換えて読んでも、物凄く有効な本で、熟読後、さっそく自分の書き込み本も含めて数冊友人にプレゼントした。地方を豊かにする方向性は日本も豊かになる方向性だから、氏は現在あらゆる方面からひっぱりだこなのだろう。

最初に会った際、お互いノリと勢いと笑いの中で、ネタだかアイディアだかコンセプトだかごちゃ混ぜになって盛り上がった軽口の内容を、ここ数年で淡々と実行・実現されていき(やはりココが凡人とはちがう)確固たるブランドを確立しておられる。

『若さ』と『成熟』の両立、以前のジョブスのスピーチにも
“Stay hungry,stay foolish”
とあるが、すべてはその感覚に近いのかもしれない。.