2007/11/22

ネイビー・フラノのフツーのジャケット


先日、自分自身のリーフレットが完成しました。プロフィールに、ネイビーフラノのシンプルなジャケットがどこにも売っていなかったことがテーラー業へ入る最初のきっかけだった、と書きました。その意味で、このフラノ・ネイビージャケットをお客様に納品するたび、先日もそうでしたが、ある種リベンジ的な、かゆい所をしっかり掻いているような、ストライクゾーンずばり的快感が体を走り抜けます。

自身、7、8年前までは買い物客としてセレクトショップなどを回りフツーに買い物していました。r流行の特徴を強烈に持ちすぎていたり、必要だと感じないディティール(必要ないところにダーツが入っていたり、とか)を持っていたり、というものばかりが商品として溢れていた時代で、たま~に上品でフツーにシンプルなものがあった!思うと、例えばエトロのもので値段12万也!だったりして、トコトン買い物ストレスが溜まっていました。

とにかく、単なるジャケットにしてもデザイナーの1ひねり2ひねりばかりが悪目立ちしていて、んじゃなんだ、デザイナーがくっつけてくる、その“ひとひねり、ふたひねり”に付き合って引き受けてあげてはじめてフツーの値段でジャケット1着が買える仕組みかい?とばかりに、どんどん自身の性格悪く、毒舌爆発でした。買い物するたびに方々でカンシャク男です。接客に関しても、買う側から不満がたくさんあって、例えばお客である自分は、買おうとしているアイテムを自分のタンスの中のワードローブとあれこれ組み合わせて意識を集中させてシュミレーションする空白の(店員が話しかけない)時間が必要であるにもかかわらず、“色違いはこちらにあります”とか言われた日には黙れー~、という感じでした。

毒舌も異常に冴え渡る自分に、一緒に買い物に行く仲間には面白いらしくウケまくるものの、本人は暗澹たる気持ちでした。ひどい時は、フツーにハイゲージの黒のタートルセーター探して足が棒になり、しまいには、ショップ・スタッフに、なんでもっとあたり前にシンプルなものが売っていないんだ?とアタリちらかす始末。当時、10年前くらいですか、欲しかったけれど無かったアイテムというものがいくつもありました。


1.ハイゲージのきれいな淡いトーンのVネックセーターやカーディガン(めちゃくちゃ高い値段でならイヴサンローランなどにもありましたが)。今でこそ、ユニクロなどでびっくりするような安い値段でかなりのものがありますが。当時は、赤・青・黄色のような、いやにハッキリしたケミカルな発色のものが多かったです。その中にあっては、当時外苑西通りにあったエミスフェール(一階はリネンブランドのカトリーヌ・メミ。ここで買ったシンプルなブラック・コットンの夏用パジャマは今でも持っている)とアニエスbしか現実的に満足できませんでした。


2.後ろ前立て仕様の、そっけないくらいのデザインのシャツ。これも、アニエスbくらいしかなく、買うシャツはアニエスばかりで、あとは、ブランド・イメージからは意外だけどプレーンなコムデ・ギャルソンの白コットンシャツでした。もう少し時代が経って、プラダやヘルムート・ラングのシンプルで素敵な白シャツが登場してきました。しかし、そんな調子で挙げ出したらいちいちキリがなさそう。


よく誤解されますが、こだわりがあるから、自分だけのディテールを身に付けたいからオーダーに興味を持った、ではないです。“他と違った自分だけの○○を、を目指しているんだけど結局みんなみんながそう思っているわけだからつまるところ結局は同じようなわかりやすい典型的な個性派くん、になってしまう”的状況は避けたい、ただまっすぐ自分のテイストに合ったシンプルなアイテムを手に入れようとしたらオーダーしかなかった、ということでした。本日も、宝石の原石、ルース、商品を見る機会があり同じようなことを嫌という程考えていました。


しかし、今なお気に入るメガネ(フレームの横にブランド名を目立たせて刻むの反対の会、設立準備中)も探し中ですし、ワイズが細いけどイタリアのデザインほどおしゃれ過剰なデザインでない、ナイキの昔のコールテッツくらいのそっけないスニーカー、とか、フツーの街のクリーニング屋さんだと、がちゃ~んと強烈にプレスかけるので時々ボタンが割れてしまうんですが、そしてさらにシャツ生地のふちも裂けてくるんですが、そんなことがないように、プレス弱めでタタミでなくハンガー仕上げでよろしく~とか細かく気遣いしなくてもいいような、気軽なスタッズボタンつきのシャツ、とか。。。。キリがありません、いずれ、自分で作るしかないと思っています。夜中ブログはキリないですねホント。


写真
先月28日僕自身着用している何てことないネイビー・フラノジャケット。ホテル西洋銀座だろうが、トットちゃんの前だろうが、西早稲田の古本屋に古本売りに出かけようが、トゲヌキ地蔵商店街の茶屋で一服入れようが、いずれもOKな汎用性の高さ。5年前仕立てて、かなりヘビー・ローテーションにかかわらず、いまだに新品のようなクオリティ。サイズが合っているから、すべての箇所がほぼ均等に朽ちていく。人工的にぐじゅぐじゅ崩れ腐っていくスーパーの野菜とちがって、黄色く朽ちて枯れていく秋の落葉のように、本当の野菜のように、しまいにはぽろっ、と落ちて土に還る一品です。

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