2008/05/29

快適に、納得いくまで、時間をかけております


彼女が祖母からもらって大事にしていた呉服台、現在僕が生地置きに愛用中

納得いくまで、とはいっても、オススメの提案をして、生地決めて、自宅(兼仕事部屋)にて採寸しているだけです。畳の間は良いです。メジャーの端がたれても汚くないですし、膝下をべったり地面につけて迷いがなくなるまで採寸したり、地面に顔を近づけてトラウザーズ丈を決めたり、あっちからこっちからそっちから自由に確認できます。

しかし、場面によってはけっこうエネルギー使います。先日20代の同業仲間から自分以外の人間がどんな生地を選んで、どんなスーツスタイルにするか興味があるのでよろしく、とのことで生地選び、スタイルを決めました。

その後、ひき続き完全お任せのお客様2人分の生地を選んでいたら、もうそれだけで一日分のメモリー全部使ってしまい、完全に頭に血が登りきって他のことを何~もする気がなくなりました。

生地選びは凄く楽しいです。が、お客様もそうですが楽しすぎてあれこれ考えてのめりこんだり、迷ったりするので、結構ぐったり疲れる場合もあります。あれこれ考えあぐねる状態を1とすると、特に迷いの状態は5くらいメモリー食います。

1人決めるのに6冊分のジャケット生地バンチ(CACCIOPPOLIでした)を3~4回いったりきたりしました。生地をめくりつつ意外とまじめにいろいろ考えます。

その方にとってのベイシックはきちんとそろっているか?コストパフォーマンスを考える場合でそろっていない場合はどうするか?汎用性が高く、あまり流行に関係なく長~く着られるスタイルと組み合わせはどんなか?いつもそればっかり着ててもおかしくない定番的ジャケットはどんなかな?その状況で逆算するとどんな生地がベストか?コスト考えなくて良い場合は、(今シーズンは)どんなステキな世界観を提案するか、その方はどんなライフスタイルを過ごされているのか?文脈無視して一気に特殊な華やかな提案をして、サプライズ気味にお仕立てするのかな?

とはいっても、実はそのうちのノイズ的かつすこぶる妄想たくましきロマンティック脳の無駄働きこそが、ずいぶんとメモリー食っています。

そして不真面目な感じで煮詰まってきたときにはジョビンを聴きます。脳みそに風を通してリセ~ット!


Sinatra & Antonio Carlos Jobim 1967_Medley

エンターテイナーとアーチスト、対照的。どちらも人間臭くていいですね。シナトラは赤ワインにステーキほおばりながら。ジョビンは、ひなたくさい夏の木陰でおいしい水飲みながら


Andy Williams & Antonio Carlos Jobim - Girl From Ipanema

ジョビンの声のあまりの小ささに思わずマイクを直す優しいアンディー・ウィリアムズ

2008/05/17

PICNIC,CORTEZ



草の上に 寝ころがって見た 青い空 

ゴールデンウィークは、本業で大変充実させていただきました。御来宅いただいたみなさま、まことにありがとうございます。この東京の東の果て、イーストエンドオブトウキョウまで、総武線各駅に乗っていて、こりゃ~もうそろそろ東京も終わりそうだ、そろそろ千葉だよな、ってとこの寸止めあたりまでお越しいただきまことにありがたく存じます。

とは言うものの、どんな忙しくても精神と肉体の風通しの良さはやはり大事、有酸素運動もたまには必要とばかりに、連休半ばのちょっとした時間、江戸川土手までピクニックに行きました。時間がないので準備もなく、ピクニック定番のアラジン社水筒にホットコーヒーを入れて。コンビニのオニギリ、そしてジャンクな菓子パンというイージー装備ゴーイング。



手作りサンドイッチを持って、籐製の大きな籠バッグにワインやらお茶セットを持って、という理想スタイルへ向けてビフォアアフターがわかりやすいスタートです。最初は基本水筒一個。徐々に気に入ったピクニックグッズを揃えていきます。



ということで、小ピクニック日、夕方からは新規来客にもかかわらず午前中に約7キロ歩き、葛飾柴又寅さん記念館界隈で折り返し(この季節、熊ん蜂には気をつけよう、危険ですね。数匹いました)自宅に戻りシャワーを浴び、昼寝をし、スニーカーを洗ったり、実験的にph3くらいのアルカリの水でネクタイを洗ってみたりして、まめまめしく仕事とメンテナンスに精を出していました。



天気の良かった連休後半、自分の秋冬物のスーツを影干して、靴のメンテナンスを江戸川を越えてすぐの市川の昔ながらのおじいちゃんがやっている靴屋まで持っていって直しました。口には出さないもののプラスアルファでひそかにあちこち直してくれているすばらしく高サービス爺様。尊敬の念を持ってその姿勢を真似びます・学びます。



写真は10年近く前に購入したスニーカー。ナイキの白一色のレザー・コルテッツはワイズが小さくて、白一色ベース、そしてタンレザー色のソールで、スペルガの一番シンプルなスニーカーと同じくらいにお洒落にそっけなくて好きです。そして洗うと結構汚れ落ちるもんですね。

僕の普通穿きデニム、スポテッド・ホースは流行に関係なく、どっしりした昔のリーバイス501風のシルエットなので、この華奢なコルテッツが合います。

2008/05/04

FLYING SPUR



SPUR 拍車:乗馬靴のかかとに取り付ける金具。馬の腹に刺激を与えて速度を加減する。ふつう歯車付きで馬体を傷めないようになっている。ここから、ラストスパートがきているらしい、~last spurt:最終全力投入。

僕が23歳の時にあの世に行った父。父は生前は存在そのものが怖くて、いってみれば拍車のような存在だった。やさしい時はやさしい父だったが、怒るとほんと怖かった。親父の怖さにくらべれば、怖い先生も、不良上級生も、ぜんぜん優しく感じた。

B型、おとめ座、ペガサス、七赤金星、もともと気質的に超マイペースのぼくにとっては拍車的なものの存在が絶対必要だと感じる今日この頃。今では、身近ないろんな仲間が拍車をかけてくれる。K君に聞くと、出しなに目に留まり、ああこれをもっていかなきゃと直観したらしい。不思議だ。

採寸・生地決めに自宅に来られたK君がこの拍車をお土産に持ってこられた。彼の世界放浪話。

彼は以前ニュージャージー州のラスタの教会に住んでいた時期があった。もともとギタリスト修行としてアメリカに渡った氏は、ローテクな録音機材で作ったギター入りのトラックをたくさん作って、大音響で流し、その曲を買いたいというDJに、その場でダビングして産直販売で生活していた。

ある日教会の長が、経営に対してたびたび意見していた彼に向かって、じゃあおまえ何か文句あるならスピーチしてみよ、という話になった。そこで彼は、

『このあたりの街角の子どもたちは、ギャングスタラップやヒップホップにあこがれてるけど、その方面に直行するのもまあいいんだけど、それまでに生楽器に触れたり、たとえばギターだったら、自分で楽器弾きながら打ち込みもできるわけだし、ステキだから、もっと自分の手で自由に楽しんでから、音楽にむかうのもいいもんだぜ!ほら俺はいつでもみんなにギター教えてやるぜ!!』

と力強いスピーチしたところ、それを聴いていた人や子どもたちのヒーローになってしまった。そのスピーチを聴いていて感動した紳士が、彼をあの世界的ギタリスト、ジョー・パスのところに連れて行った。そこから彼は、近所ということもあってジョー氏と普通に友だちになった。毎日1フレーズずつ彼に教えられながら、これを弾いてみろよ、んじゃ次はこれと、ジョー本人が弾き聞かせながら、、、。

それが2週間くらい続いたある日、K君はつらつら弾いているうちに、ジャズ的に自由にメロディーを展開させられ遊べる感じで弾けるようになった。その瞬間、一気にロック空間からジャズ空間へとブレイクスルーした自分に気がついた。ジョー・パスは、ロックのギターが得意であった彼向けの、ジャズ世界へコンバージョン可能にさせる特別のフレーズを教えていた。

ジョーパスはミュージシャンズ・ミュージシャン(玄人のための音楽家、音楽家に人気のある音楽家)、家族がいなく友だちはいるものの孤独で、一緒にCNNをぼんやり観ていて、さあギターでも弾くか~とソファーでおもむろにギターを弾き出したりする、そんな普通すぎる生活。片や同じ近所とはいえ、ジョージ・ベンソンは世界的スターとして豪邸住まいでアメリカ的成功者の人生を送っている、、、、

そんなある日、べろんべろんに酔っ払ったジョー・パスに『おいジョー、いったいぜんたい、ほんとにあんたは凄いのかい?』とふざけてK君が言った、すると彼はいきなりミュージシャン仲間に電話を掛けまくりはじめ(突然の呼び出しにさすがに3、4人に断られてたらしい、、、)ヴォーカル、ベース、ドラム、キーボードがジョー邸に一気に招集された。たった一人の日本の若者のジョーク混じりの疑念に応えようと。

圧倒的な演奏が始まる。ジャンゴ・ラインハルトの曲を Double Tempo での演奏。その演奏の超絶な巧さ、正確さ、強烈な情感に圧倒される。しかし、そこでK君が感じたこと、『ああ、なるほど、行くとこまで行ってしまうと、、、そこは自由なのだ、、、』お金では買えない貴重な時間、体験。

話題は尽きない。アフリカからアジアそしてアメリカまで、K君にはボロ・タイ:BORO TIE(カーボーイなんかがするネクタイの一種) リボン・タイ、そんなアイテムがよく似合いそうだ。ちょっと前までドレッド・ヘアだった。

そういえば昨月大切な仲良しであり、かつお客様でもある方よりプレゼント頂いた。ヴィンテージZODIACの手巻きムーンフェイス時計、きっと似合うと思ってとおっしゃられ、恐縮&感謝いたします。ありがとうございます。夕日を受けて輝くその時計は、往年のハリウッド俳優のような悠然とした風情で、とてもステキです。

数字で時刻を追うのでなく、月の満ち欠けで時の流れを知る。手巻きしながら、『時』をつむぎ出しているんだ、という不思議な錯覚を楽しむ。そのものの存在が詩的です。手巻きは数年ぶりだったので、その味わいをあらためて感じました。時計もまた、拍車に共通するもの、時間を知らせてくれると同時に、時が有限であることをおしえてくれる。人生には限りがある、拍車をかけよ、、というメッセージなのかもしれない。

2008/05/01

Zen @Rikugien Gardens


友人タケシ氏のお気に入り充電コースのひとつを教えてもらった。まず、駒込の六義園(りくぎえん)へ。

五代将軍徳川綱吉の信任厚かった川越藩主・柳沢吉保が元禄15年(1702)年に築園した和歌の趣味を基調とする回遊式築山泉水の大名庭園、後に三菱の創業者岩崎家の別宅となり後に東京都に寄贈された、とある。

つつじが咲いていて、写真撮ったりと入園者たちは楽しそうだ。若草色の木々の葉の下をゆっくり歩く。亀がわれ先にわが甲羅を天日干しせむとて、岩場にはりついている。こういう日本庭園にてアスファルトではなく大地、土の上をじゃっっじゃっ、と踏み分けながら歩くことがたまに大事だ。



それなりに四季が現れるから、こういう自然と歴史の庭園で楽しめるファッション、意外とトラッドな固めのスーツも似合う。ポケットチーフは麻白。途中喉が渇いたので抹茶と和菓子を食べ、水面のさざなみや夏日の涼しい風を感じてぼんやりしていた。

まだ喉が渇いてるんですよ、というとおばちゃんが氷水を持って来てくれた。だんだんしゃべるのも億劫になってくるほどに気持ちいいものだから、何故だかぼんやりだけではもったいなく感じ、突発的に僕は座禅を開始した。

5分くらい自分の世界に入っていて我に帰って隣を見ると、タケシ氏もオリジナリティ溢れるMY ZEN 的姿勢・表情にて瞑想開始していた。上げ膳、据え膳、そして連れ禅、そんなつつじ茶屋の夕暮れ時。



六義園を出て巣鴨駅まで歩いて、駅前からマイクロバスに乗って東京染井温泉SAKURAへ。地下1800メートルから湧出する天然の温泉とのこと。2007年に2人で企画主催していた朝7時からの読書会の話をあれこれして、2008年バージョンのアイディアを出し合った。

風呂上り、蕎麦とビールで一服した。蕎麦湯がなかったので、熱い蕎麦茶で代用したらこれが美味かった。都内をちょこちょこ移動するだけのコースにしてはエネルギーが充填される手軽なコースでした。

white room , black diamonds


@渋谷・猿楽通り沿い、代官山マンションビルの一室、とある隠れ家ショップ。渋谷区界隈にて位置的便宜が必要な場合には、今後こちらのショップにて採寸・納品を行います。ここでは、輸入セレクト服、注文イタリア靴などを扱っています。



代表のO氏は誰もが感動するロマンティックな夢を追いかけている侍ソウルの持ち主。このビルにはストリート系のブランドSILAS & MARIAが入っています。



休み中ありがたいことに仕事が途切れなかったので本日は午後から友人タケシと完全休息充電コースでした。彼が気軽にゆっくりできる秀逸なコースを教えてくれたので今度ブログにアップします。