2012/05/01

スポーツ選手とスタイル


エドワードエクリュでは、一昨年以来、微力ながら格闘家佐山氏の主催する試合のスポンサーをさせていただいている。試合の勝者に対してトラディショナルなスーツを贈っている。

僕自身が試合会場に足を運び、直接観戦し、実際に目の前で試合を見て、さらに数日後、勝者に神楽坂へ来てもらい、ランチを一緒に食い、語り合い、徹底的にヒアリングする。1時間選手の話を聞いて聞いて聞きまくる、過去・現在・未来。傾聴した結果、一着をアウトプットしている。

選手という闘う男、おのれの生命力を爆発させる人間の姿を間近に見て、一次情報に触れ、さらに後日ヒアリングによる直の声を聴き一次情報を加える。プロセスの地味な積み重ね、という方法に自分なりの、製作物に対する誠実と責任を込めている。

もはや、生地はこれで、スタイルはこうで、とかそういった細かな注文は一切聞かない。時間がもったいない。黒が欲しい、と口では言っていても、傾聴している中で実は彼は潜在的に赤を欲しがっている・必要としているぞ、ということもある。

なにしろ猛烈にストイックで根本的にフィジカル・エリートの彼らであるので、完成品は美しく仕立て映えする。。正直、日本では、スポーツ選手がファッションに詳しくなると、ほとんどの場合男のスタイルとしてロクでもないことになる。

つまりたいがいがショップの店員のようなスタイルになる。彼らがショップの店員ならば何の問題もないし、“らしくある”ことはプロとしてたいへんカッコいいことだが、ときに彼らは格闘家であり、野球選手でありレーサーであり騎手である。店員以外は店員のようになってはダメだと思う。

それにしても、ややため息まじりに言ってしまえば、大藪晴彦の『汚れた英雄』を読んでいた世代としては、モータースポーツの世界にも往年のクラシックなジェンツタイプが存在していてほしい。栄光も挫折も絵になる新しい(しかし実は世界的に古典的な)男、かつてのエドワーズにとっての福沢幸雄のように、


70's前後の空気感に成り切るのが天才的にウマいR・W。オチのドジも絵になるか?こりゃならんな。

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