2019/10/13

自分だけの独創的な青い鳥を手もとに



いろんな表現で、あるいはさまざまな切り口から進化したオートクチュールやビスポークの体験、プロセスを表現することができますが、本質的なところではデザイナーやクチュリエとの対話のプロセスを購入されている、といえるのではないかと思います。もちろん言うまでも無くドレスあるいはスーツという最終的な成果物を手にするには間違いないのですが、専門的なアドヴァイスを含め、その方の美的な佇まいを動きの中で捉えたり、生き方として体現されている哲学的な世界観を装いとして結晶化するにあたり、その都度その都度、具体的なひとつひとつの判断を委ねていただく、というステップが醍醐味だと感じます。



ショッピング、物を買う、というのはもはや旧式の行為のように感じます。”ショップ”:店にingがくっついて動名詞になっていて、店に行ったよ、買ったよ、という単純で即物的な行為ですね。人生で体験するあらゆる感覚のいろどりの種類が極端に少ないように思います。心の中で自らの感情が、退屈なんだよ、とぼやいています。

アトリエへ出むきぜひ対話をいたしましょう。お越しいただいた時点で、ご相談をコミットされている:決めておられる時点でもうデザイナーもクチュリエも味方につけています。自己判断の外に出られないまま、自己判断の終わりの無い繰り返しの(迷いの)世界から、ぜひヒリヒリする外の世界に飛び出していただきたいです。



先日の金澤でのアトリエショーの風景です。御自身の強みを客観的に認識されて、1歩1歩プレゼンス全体、印象全体をコントロールするプロフェッショナルに近づいていかれます。たとえば、御自身の目線からだと上からの角度がついていますので、体のカーヴィーラインを正確に捉えることができません。

よくあることは、御自身のヒップボリュームが大きすぎると錯覚するポイントです。そのために、水平の角度から写真を撮って正確な状況をお見せしています。自分が見ている自分は、御自身が作り出し、他人が受け取っている印象とは異なるという事実を認識していただきます。


鏡にうつっている姿が決して全てではありません。動きの中でひとはひとを捉えます。どちらかというと、動きで捉えたほうが正確だといえます。自然でうつくしい所作、そこに添うドレープ:生地の揺らめき、ブラウジング:生地のふんわり感、それらが立体的な印象となってまわりの空気をつくり景観のひとつとなります。部分にも集中する必要は当然ですが、この、ニュートラルな視線でバクッと観る、全体観がとても大事です。細かいところばかりに気を取られると気がつくと全体のシルエットを見逃してしまいます。



従来のレディズのファンシーな生地が徐々に時代遅れになってきています。スペック的な実力もそうですが、メンズ生地の卓越した耐久性と、抑えた艶感や色調がタイムレスなアイテムのための重要な必要条件になっているからです。年間30億着という廃棄在庫の時代にあって、日々ファストファッションで使い捨てサイクルを演じることの残念さが、精神性の低さを表現してしまい、赤裸々に意識の低さを現してしまう時代になってきたからです。



今回のコートサンプルのNo.3モデルであった『フォレスティエール(森の逍遥者)』です。いち早くここに反応してくれたのが、20年前のエドワードの記念すべき第1号クライアントであった明美さんです。セーヌ左岸の旧アルニスの普遍的なモデルから企画しています。本来の紳士物のアイテムを"オートクチュールするワークウェア"と位置づけました。パリお洒落感度が高い彼女が選んでくれたのがとても嬉しく感じました。軽井沢の森をこの装いで散歩する姿が想い浮かびます。


今回、日本製の非常に優秀な生地をいくつか使用しています。こちらのメリノウールはSuper160's のフランネルで日本の老舗生地メーカーがニュージーランドの農林水産省にあたる部署とコラボレーションしてつくったモデルです。日本人は不思議な生き物です。このすばらしい卓越した素材を見抜くことができず、これが海外メゾンが仕入れて加工して里帰りした数倍になった時点で購入意欲がわくといった精神構造になっています。僕らは源流でこのレベルを見出して速攻で製作して実用範囲内の良心的な価格で我が愛用品にしようと目論んでいます。


その素晴らしさを認識するために、実際役に立つために、スーツと共生地(同じ生地)のストールにしてミニマルトーンコーディネ―ト上級者アイテムを愉しみます。首元の肌当たりも最高です。生地自体に腰がしっかりしていますが、表面がすこぶるソフトでしっとりしている感覚はいいようのない官能があります。くしゅくしゅっとマフにしてVゾーンに挿す感覚もノンシャラン風情でいながら、しっかり佇まいをコントロールしています。




なんてことない白シャツに。でも良く見ると比翼なんですね。目立つか目立たないかという箇所に工夫をこめてフォーマル気味に倒しています。実はこのままタキシードシャツにも100点満点で対応できるのですね。黒の手結びボウタイを持参していれば、いつでもジェームズボンドになれます。白シャツは深くて愉しい世界なので、2019年2020年も一層深堀りして、クールながら上品で官能的なアイテムとして研究していこうと思っています、たのしいですよ。



丹後から、絹織物の老舗宮眞さんより宮崎さん。裏地を美しい絹で、という研究案件で広尾のアトリエにいらしてくださいました。幽玄な魅力を誇る丹後の海、天橋立でした。昨年、うかがってインスピレーションをたくさんいただきました。こればっかりは体験してみないとわからないと思います。彼岸につながっているような、黄泉の国につながっているような丹後の海。その色。月の光に揺れる夜の丹後の海、ミッドナイトブルーに染められた絹の裏地。バサラの派手さよりも、アンビエントで静かな月夜の海のバイブレーションがいいな、そう宮崎さんとも共感しています。


普通に見えるネイビーもいろんな深みがあります。トラディショナルの魅力はこの深さだと思います。歴史の深み、味わいとコク。悠然と挿している堂々たるネクタイの佇まい、これがケント公のシグニチャーです。シグニチャーは目立たないといけない、ということもありません。控えめでもいいのです。アンダーステイトメントでいいわけです。ただ、そのネイビーがちょっと個人的な特別な色の深さをしていてもいいですね。ビスポークの愉しみは無限に広がっています。




メンズの生地といわれていたものを、女性のワンピースに使っています。ウィンドウペイン、御自身の姿勢の矯正にもなります。そして、野趣あふれる英国調のフランネル生地は、むしろ番手の高いシャイニー系の生地よりもいっそう女性を繊細に見せます。もともとフランネルは野良着ですから、これで庭の手入れをしたりバラの手入れをしたりタフな素材なんですね。それでいてラウンジーな雰囲気もあります。そもそも印象が柔らかいのですね。物そのもの素材そのものの風合を何の偏見もなく捉えると、いくらでも無限大に女性が輝くジェントルマンエッセンスのハンサムウーマンたちの着こなしが目に浮かびますよ。


日本海:JapanSea です。この海は切なくなるような不思議な魅力がありますね。美味しいお鮨の原材料が生み出されるだけの場所じゃあ決してありません。この静けさ、静けさの中に在る小さいけれど確かな力のうねり。ここに大人の詩情を見ずして何を見ましょうぜ。。。


KeiichiroEcrus として、連作させてもらっているケイイチロウ君です。エドワードの関係者、コクシネルの関係者全員が彼の手による鞄を最終解答とわかっているんですね。一直線にここに来る、筋のいい若者たち、日本も安泰ですね。模範解答であり理想解答の鞄たちが刻一刻と生み出されていて、目が離せません。サンローランルックのスーツをエドワードで作りました。よく似合いますね。


ウェディングドレスのオートクチュール、こちらも経験が醍醐味です。まだ家具もなにも入っていない入居したての3月に、広尾アトリエでは第一号の花嫁の採寸がありました。花嫁が心身ともにフィニッシング、Finishing 画竜点睛するための、一定の期間と位置づけてもいいように思います。クラシックなドレスの知識を伝授する機会にもなりますし、こちらの体験が、海外に行った時でも通用するように優雅な教養を身に着けるひとときでもありますように、祝福の時期を実力強化といっしょに応援しています。プロのアドヴァイスとイマジネーションのご馳走、惜しみなくお届けしますので、ぜひ御自身の感性に響かせて自然な御自身の、独創的な美意識の一助としてくださいね。



2019/09/23

Coccinelle. from Gentleman's bespoke to couture



Bloomingというコートについて製作ノートです。カシミアの揺らめきよりもウールは少しだけ硬質なイメージです。滑らかなメリノ・ウール、紳士の表記だとSuper160’sという15.5ミクロンという繊細な生地です。さわって独特のTouch 触覚がありますので、これをMuff ストールの短めのものを共生地(コートと同じ生地)でつくっています。肌あたりがしなやかです。


襟:エリの形は、Gentleman's Attire のスワローテールコート(燕尾服)の立ち襟に由来しています。通常のスタンドカラーだと佇まい的にマオ・カラー風になりますが、それ以上にストイックにも見えるようにしました。通常は、礼装用にもおしゃれ着にも白シャツでも立ち襟を作っています。その場合に胸に左右10本づつプリーツをつけてタキシードにも合わせる仕様です。


最近では、NHK の深夜帯でも放映されていたダウントン・アビーで、燕尾服は紳士の正礼装の最上位に格付けされる装いです。(とはいっても、昼間に勲章を授与されたり栄誉の典礼の後の、晩餐会や舞踏会というドレスコードのものです、用は格は高いけれど楽しむ席での最高の礼装ということになります)この切れ味の良いカーブ、数ミリのカーブの違いで変わってくるちょっとした粋なニュアンスを追究しています。


このデザイン画はクチュリエの星さんが描いています。デザイナーのぼくは言葉で伝えます。大学では美術部でしたが敢えて言葉で伝えます。イメージを形にする段階での、意表をついた表現で大笑いになることも多いのですが、明確にイメージがアタマにあることが多いので、打ち合わせの時間は瞬間的に決まることが多いです。できるだけ、余白、余韻、着る方々のアレンジの余地を残すようにしています。絵心次第で、どのようにも着こなせる、そう思います。


包みボタン、共生地のマフ、すべて印象は引き算です。できるだけ、アクセントやコントラストで引っかかりをつくらないようにしています。そのタメがある分、小物やアクセサリーがアクセントの余白という意味での白キャンバスに映えます。大枠のデザインのフレームは適正なローテーションで着まわすと10年くらい保たれるイメージでいます。味わいが出て、ゆっくりスロウに装いを愉しんでくださいませ。


腰まわりのギャザーも優雅な美しさになります。フランネル素材の底艶:そこつやも、上品なエレガントさを表現しています。生地の使用量もたっぷりなので、揺らめいた時、クルリと回転した時に、肩にかかってくる量感があります。その際は、The Dress というフィーリングです。これは、身を守る安心感になります。


detachable:ディタッチャブルな Muff : マフ(短めの共生地のストール)は、いろんなアレンジができます。この短め、というサイズ感は着用者の使い勝手の良さを想定しています。この背中側のスタイルはスコットランド北部の地名がついたコートである、ざっくりいうところのシャーロック・ホームズでも有名な、Inverness Coatインヴァネスコートの風情で羽織ることもできます。できるだけ生地独特の味わいを生かす形で、変化球にしすぎずに、その生地独自の硬質なドレープ(でも手触りが抜群にセクシーなもの)を愉しんでいただきたいです。


なんと表現しましょうか、この硬めの趣きあるシャープなドレープ、これはカシミアだととろみが強いので寝そべるようなソフトで角の無いラインになるのですが、この、ちょっと生地に緊張感のあるドレープというニュアンスが上質なフランネルの視覚的なご馳走です。


小粋な首もとのお洒落は、菱型のストールなどで、B.C.B.G (bon chic bon genre ポッシュで上品な)を気取るのもとてもいいですが、紳士物のアスコット・タイのニュアンスの方向に寄せるのも新鮮です。コクシネルでは、アスコットタイも普通に当然のようにジェンダレスにあしらいます。シンプルなキャンバスにピリリと粋なスパイスをあしらう、これが上質な基本フレームを持ちながら全体の洋服の数を少なくするコツです。


真知子巻きというのでしょうか、オープンカーの助手席でといってもいいでしょうし、サングラスをして、自分自身を外界に露出したくない気分の時、というのもありです。フランス映画やイタリア映画の大女優たちを参考にしてのプライベートスタイルでもあります。


シャルトリューズというリキュール色の表現が一番すてきかもしれません。元来グレイはどんな色とも合います。紳士服の世界で最初の1着を仕立てるにあたって、グレイのシャークスキン生地という選択をすることが多いです。その理由は黒靴もバーガンディ色の靴も、白・ブルー・ピンクのどの色のシャツにも、ほぼどのような色のネクタイにも似合うからです。つまり、少ない着数で多くの着こなしをカバーできる、という理由からです。これは、少ないアイテムで多くのヴァラエティをつくりたいレディスにも同じことがいえます。


英国老舗生地からイタリア老舗生地まで、ほぼ王道があります。深い世界です。婦人物のイメージ重視に偏りがちな基準と生地自体の上質さを測るために、糸そのものの、織りそのものの厳しい角度から実質的な見方をします。上質さの基準が明確な世界といえます。一定の安心できる上質枠を当然のこととして、タッチ(手触り)とルック(風合い)から選んでいきます。紳士の世界でもおうッと尊敬されるような、うるさ方がうーむと唸るような、そんな粋な生地、通好みの生地を選ぶことが多いです。広範な生地群から、創造力あふれる自由な見立て、審美眼でピリッとした一品を選びます。


ネイビーで幅2.0cmmほどのチョークストライプ、これも英国のロイヤルファミリーの定番スーツで用いられるような生地ですが、この生地にしても大きなアドヴァンテージが印象のコントロールにはあります。悠然とした2センチ幅のストライプ、これは目線を縦に縦に、上下に印象づけます。ざっくり言うと、スラリと細く見えるのです。面白いですよね。もともと紳士のアイテムが、本質的、実質的、自由な見立てによって、レディスの装いに向けてもアドヴァンテージを抽出できるのです。

英国にホーラン&ホーランという銃砲店由来のブランド(確か現在シャネル社の関連会社かもしれません)があります。ここの現在のデザイナーがスーパーモデル時代には、カール・ラガーフェルドにも愛された貴族出身のステラ・テナントです。カントリー、スポーツ・エレガンスをオーセンティックな紳士服地で表現していて、野趣あふれる生地であるほど、装おう女性のジェンダーがよりその人らしく輝く、という現象を上手に演出しています。僭越ながら共感します。


3種類の大きなコートの柱を作っています。左からロマンシング、ブルーミング、フォレスティエール。ジェンダレス、タイムレス、シンプリシティ、クラシックな意匠を各所に盛り込んでいますが、全体としてフューチャー・クラシックというニュアンス、空気感でつくっています。


海外Mag、モードの王道系は、星さんとたびたびビール飲みながら読んでいます。Vogue Harpers のFrance,UK,Italy,US のものはほぼ目を通しますが、これは、星さんも僕も学生時代から30年つづいている習慣、ルックブック読書です。


旅、美術、文学に加えて、やはり先輩業界人たちのルックによって色調や素材の感性がつくられていることは間違いありません。80年代後半までは日本の(女性)雑誌も読みました。星さんも同じような経験を経ているようです。彼はフランス映画の脳内ストックが膨大です。


テーラードジャケット、インヴァネス、ケープ、ブラウジング、ドレープ量、ブランドの動向以上に、そのもの自体の印象や特徴を捉えてその魅力の現象の理由を探る、この時間をクライアントとしていく新しい試みも有意義な時間ではないかと思っています。


coccinelle. コクシネルのプロデューサーでもある小西さんの親友、金澤の石田屋(いしたや)の八木さん。定期発行されている『眠音:Neon』の季刊誌の編集をされておられ、博覧強記と鮮度の高い感性で日々の衣食住全般においての尽きせぬおしゃべりのひとときでした。多くのクリエイターの方々がなんでもない語らいの中から、本質的で旬なアイテムを拾いあげます。紳士のビスポークの世界をクチュールの世界に持ち込むことで、新しい進化と価値を創ることができると思っています。

Blooming:ブルーミング、タフで着心地の良いアイテムです。日常に着られるコート、首元の佇まいは自由自在、それぞれの感性で花をいけるように挿してください。絵ごころといいましょうか、それぞれ御自身の自由な個性でピリリと効かせてくださいませ。そして、新しい巻き方があればぜひ教えてくださいね。


9月22日、僕への誕生日祝いに渡米していた実姉がボストンから買って来てくれた一冊。装い、テイスト、スタイル、シグニチャー、アリュール、アトモスフェア、キャラクター、パーソナリティ、、、そしてICON アイコン。人自体、あるいは人をとりまく余白の力のようなものを表現する言葉はいろいろです。男性女性問わず、スーツ、ドレス、レザーのライダーズしかり、成熟した装いはつきつめると意志や魂の在り方が象徴にまで高まって肉体と装いがツライチになる、ナチュラルに一体化する、つまり究極のシンプルへと行き着くのだろうと感じました。愉しみながらも、確固としたICON まで結晶化するとそこから見える景色はまた人生の醍醐味ではないでしょうか。



2019/09/16

coccinelle. コクシネルの誕生



個人的に5年近く封印していたレディズのデザイン・製作ですが2019年、今年の8月から復活させています。工場縫製とクチュリエの星さんとのハンドメイドによるクチュールの2種類です。『ロマンシング・ダイアログ』という1時間の『自分自身の未来像を描く』時間を設けています。


インタビュー形式での対話を基本としてポテンシャルの手がかりを見出した後に、そこから膨らませ展開させて装いを創る、という流れをつくりました。コミュニケーションを軸として展開させていくに際して、金澤の印象美プロデューサーである小西さん@Wordrobe Inc.の大きな協力をいただいています。


1 Metamorphose  人生や自身の変化を目的として変身できる装いを創る。
2 Advanced  装い上級者は既存品では無理でご自身のオンリーワンを創るしかない。
3 Integration  経験に加えてプロの企画製作力でプレゼンス統一に向かって創る。


ある意味アナログで、ユニークな『注文の仕組み』をつくった後は、存分にクライアントにむけてのクリエイションに没頭できます。


紳士注文服と婦人注文服の独特のセンス・技術・テイストを自由自在に駆使して、ジェンダレス・タイムレス・シンプル、そしてとりわけ上質にカスタムされた“その人だけの逸品”の企画製作をします。特に、レディスのクチュールを英国生地やイタリア生地のメンズアタイアからの美学をつくりあげて出現してくる作品は、凛々しさ・清清しさに溢れ、驚くことだと思います。


 過去を大切にしたり、自己を内省したり、時には迷ってみたり、ゆっくり考えたり、そんな時間がかかることを良しとしない昨今の価値観、時代の流れの中で居場所が失われていきそうな、そんなスロウな世界。


迷うことは短期的には経済合理性は無くマイナスかもしれませんが、ぼくらはこの迷って自分が決められないというセンスのいい方々(既存のものから選ばないといけない、という強いられた刷り込みから自由になっている方々)に向けても『フォレスティエール(森の散歩者・迷い人)』というアイテムをつくっています。(上のブルーのコートです) かつて存在したアルニスというパリ左岸のブランドの名作ですが我々はこれを2019年版にしています。


おしゃれ上級者の大人の女性で、欲しいものはイメージがあるのに全然売っていないから手に入れることができないという『巡礼者』の方々がいます。東京だと結構いる感覚です。それも、むしろ過去にファッション業界にいた方々。


『 いつから巡礼者ですか?』
『 1992年からです 』
などとはっきり年号を挙げられる方すら少なくありませんから。


やはり服というのは、されど服たがが服なのですが、人生においてかなり大事なものです。なぜかと言うと自分という存在に対してやはり服はきわめて身近な存在ですので。身近なところが気に食わないとなると、1日の、1年の、人生の時間のうちのそこそこ%が滅入ることになってしまいます。特に感性で生きているタイプの人間にとっては苦痛といえます。


スリークで底艶のあるイタリア生地からはじまって苦みばしった老英国紳士が気に入りそうなドライなミディアムウェイトの生地、本格的なLovelyハリス・ツイードの生地までとことんありますから、愉しい世界です。新しい贅沢な世界がそこに広がっています。


紳士生地の贅沢さの方向性を知る、これも特殊な美学の嗜み、ユニークな教養ともいえます。フラワリーな、あるいはファンシーなテイストが苦手という女性も一定数おられるので、そういった方はここを気に入っていただける可能性もあります。


お茶しながら、一杯やりながら、デザイナーとクチュリエとの対話を通して、敢えてそんな生地で大人の女性のドレスを作ってみる、紳士服独自の堅牢性と仕立て映えがスパイスとなって、永遠に着られる逸品が手にはいるはずです。迷いは創作には大いに必要な過程です。大いなる迷いを経て終には成果物を手にする、ささやかなハッピーエンドじゃないでしょうか。

2019/01/21

便箋と封筒が入るバック『Lyon』






ケイイチロウ氏と食事したり、一杯飲みにいったり、旅をする中で、『 〇〇用の、一生の相棒になるような鞄を欲しい、いくらさがしても世の中に売ってないから 』という作品が、対話を通して形になってきます。旅をする中で、仕事をする中で、自分自身が本当に気に入っている鞄を持っていることが、これほど気分いいものか、これほどまでに心理的に良い影響・作用を与えるものだったのか!と強烈に実感します。安いとはいえない金額を払い、気に入らない部分に目をつぶってブランドのバッグを買う、という苦痛に戻ることは、もはや一生、二度とできません。

『封筒や便箋、そしてペンをいれる程度の軽やかなバック』が20年くらいずっと欲しかったのでした。軽やかなもの、でも、素材が上質で落ち着いていて、ブランド名がフロント(でも横にもまったく必要ないです)にドヤと鎮座ましましていないもの。金具は、複雑な形状や、手の込んだいろんなしつらえではなく、昔からある真鍮のシンプルで奥ゆかしい『 用の美 』の佇まいを持ったもの。


完成したとの知らせを受け、夕暮れ時の神楽坂、キャナルカフェで待ち合わせしました。マジックアワーの猛烈にうつくしいひと時、屋内のテラス席にて納品の儀式を行ないました。想像以上にうつくしい色と佇まいのバックでした。ゴート、山羊革のスウェード仕様です。大きさも完璧で、大きすぎず、小さすぎず、でも『小さ目』です。大きいより小さい、の美意識が本質的に大事です。さくっと外出する気分に合うものです。

取っ手のしつらえが美しいです。曲面がアウトラインを描き、ゆるやかに細くなり、ゆるやかに太くなり、必要充分を満たす用の美を描いています。そして、取っ手の3次元で掌(てのひら)にフィットする不思議すぎる感触。ここが疲れない鞄のポイントであり、ケイイチロウ氏の鞄が世界一だと感じる理由の一つでもあります。フラットの層を積み重ねたハンドルではありません。地図で言う所の、山脈の等高線のようなパターンで出来上がっています。すばらしいですね。



夕暮れがこくこくと変化するのにともなって、一緒に色の見え方が変わっていきます。読書用の本か手紙書きセットを入れてちょうどいい大きさ。『手紙用の鞄』Sac de lettres です。便箋と封筒とペンくらいで中身が一杯になる、という優雅なコンセプトが贅沢です。おじいちゃんになるころには、そんな身軽な身分になっていたいものです。

今年、いまだに終わらない年賀状書きを、日常の習慣に近いレベルで書き続けているうちに、年賀ハイになっていて、手紙というもの、葉書というもの、郵便局というものがマイブームになりました。年賀状づくりで、面白さにハマったっぽいです。さっそく、このバックに葉書をいくつかいれて、カフェで近況などを友人、知人、ご贔屓筋にお送りしようと楽しみに思っています。


ひさびさのキャナルカフェでした。神楽坂は、やはりホーム感があります。ドレッサーのボーイズ君(いまや、全員ジェンツたち)が運命の脚本どおりなのか、今年2019年はほぼ全員が同じ場所にあつまり、1、2の共通のプロジェクトを進める運命にあるようでうれしく思います。みなが原点回帰なのでしょう。

ぼく自身も、折り返し地点なので、昔やっていたことに、どんどん戻っていきたい、と考えています。仲間が増えている状態で、同じことに戻る、すばらしく魅力的に思えます。昔は、急いで時間制限の中でやっていたことを、もう一度じっくり丁寧にできる、そして昔より上手にできる。味わえるということは愉しいです。


金澤の『印象美プロデューサー』ワードローブの小西さんがプロデュースしてくださった、エドワードの手紙のしつらえで、使われる水引きの文香(ふみこう)です。室内の香りのプロデュースもそうですが、6感まで全部を贅沢に満たす、そんな印象美の力をエドワードエクリュも重要なエッセンスにさせていただいております。美しい日本の街、その魅力、そして、最重要事項として独自のコミュニケーションの妙味を存分にエドワードエクリュのエッセンスにさせていただきたい、と考えています。


サック・ドゥ・レートル、手紙の鞄、は、コードネームが Lyon リヨンとなります。これは、世界を旅しながら美意識を磨いているケイイチロウ氏が、自分の作品にはすべて世界の街の名前をつけているからです。神楽坂の運河からはるかリヨンを想う、という感じでしょうか。しかし、ここの夕暮れ時の外テラスでのお酒はほんと美味しいですね。空気と余白空間を愛する人間にとって(それから鉄人たちにも、運河沿いを走る総武線と中央線が)最高のオープンテラスです。こちらで、ああでもない、こうでもない、と自分自身の考えをまとめるのも最高の場所といえます。


先日、北陸の金澤、丹後の与謝野、南洋のシンガポールとともに旅したケイイチロウ氏、ケイイチロウ・エクリュというコードネームで共同制作しているシリーズを10点連続して作りだす計画です。現在5まで来ました。おじいちゃんになっても、ともに世界を旅していることでしょう。次回はシンガポールはSixsenses Hotel に泊まるのを楽しみにしております。次の作品は両手がフリーで使える、斜め掛けバッグです。


一生をともにする道具、用途に充分に応えてくれる道具、それは長年使っていくうちに、道具側も使い手もともに歩み寄って名人級の使い勝手の境地までいくはずです。これが、道具がどんどん仕様が変わってしまったり、使い方もお節介なくらい勝手に変えて、それも使い手に便利に変わるのではなく、道具側のメーカーに紐ずけられた利益共有者にとって有利になるように、どんどん複雑化していくようでは、それはもはや道具ではありません。道具の使い方から意識が離れないようなそんな道具は二流以下の道具、無意識に使えてこそ道具の本質です。

誠実にまっとうに、使い手に有利なようなものをつくる、使い手の要望に応える、問いに答えるようなもの、できれば、最終解答のようなものが欲しい。そう思い続けてきました。そして、それは理解ある寛容なご贔屓筋の存在のおかげで、前向きな研究開発ができています。若いひとたちにいっているように、理解ある顧客とお付き合いすることがサバイバル要諦です。それは、上からのえらそうな排他的な視点ではなく、マッチング、相性のわきまえの話です。大手百貨店スタイルのミスが無いこと、殿様扱いしてもらうこと(身を削ってもらうと嬉しいwin-loseマインド)のサービスを求めるひとに、個人商店は向いていません。


そして自分が欲しいと思うものは、頼んで作る、という時代に一気に入ったのかもしれません。贅沢なもの、ドヤと威張れるものが欲しい、既成でもたまたま好みが合ってる、という場合は市販のものを購入すれば幸せです。ただ、妥協して高いお金を出して購入というのは、もう時代遅れのような気がします。そろそろ職人と直接つながることもできてきていますし、その仕様やデザインや素材や製作をしっかり成立させれば、あたらしい意識の贅沢、を追及できます。

しかし、もともとはそれがモノづくりの起源ですから、それを贅沢、と呼んでしまうのも、そもそも論でいうとおかしな話なのです。時代がまともな方向に、贅沢を経由して戻ろうとしているのですね。フツーのありがたみが分かるまでに、ややこしい手続きやプロセス、一定の苦しみが必要なのは、戦争ばかりする人間種がほかの動物と違う一番困ったところです。


ミスで到着したポテトフライを目の前にして、食欲のブレーキが効かず喜んで前向きにそのままオーダーを受け入れる2人でした。夕暮れのあとは、照明のデコレーションでロマンティックな演出をされます。水辺はいいですね。



お気に入り、My favorite Things ささやかな、手元の小さな小宇宙。ぜんぶ、気に入ったモノたちに囲まれていたいですね。ご機嫌なカフェで、お気に入りの友や知人にありがとうね、のお手紙を書く。なんたる至福のひととき。きっとビールが手元にありますがね。まあご機嫌のまま感謝状書くってのが、まさに良いバイブレーションを送り届ける秘訣ではないでしょうかね。毎日そんな日でありたいです。


スマイソンの英文フォントは鉄板ですね、失礼、銅版でした。この文字と文字の間にゆったり余白がある感じ。麹町の東條会館のTea for two の文字も、さすがシー・ユー・チェン氏のプロデュースだけあってすばらしいです。こちらも共通して落ち着いていて上質さを感じさせるフォントです。さすが英国大使館と皇居が同時に俯瞰できる奇跡的な立地テイストです。世界の友人たちと手紙のやりとりを愉しもうとすると、その周辺知識や語学力が問われ、良い感じで勤勉にならざるをえません。


同じ色の同じゴート(山羊革)で靴も製作予定です。エドワードⅧの靴のテイストを持ち出すこともなく、白、エクリュ、ベージュ、トープ、そしてゴールド系、のグループに良く良く合うのが、この茶色は、ブラン・ファン:Brun faon 小鹿色です。鈍い灰みの茶色です。資料によると、1789年に英色名Fawn として使われているとのこと。 さてさて、新しいオリジナルの絵葉書で、誰かにお手紙書きたくなってきました!