2008/06/17

3つのグレードで語られる紳士服における縫製の贅沢。


本質を見抜いてしまう慧眼(けいがん)紳士たちは、スーツ誂えに際して、『贅沢』する気分になった時には、できることなら本質的な、意味のある、根拠のある贅沢をしていただきたいと思います。イメージ贅沢、一流ブランドだから、値段が高いからよさそうだ、という理由でモノを欲しがるメンタリティはちょっとどうかとな思います。

昔一流ブランドを欲しかったけど、買えなかったから今買う。昔値段が高いものが欲しかったけど、買えなかったから今買う。というようないわば、復讐めいた渇望なのかもしれません。売り手は、お客のブランドコンプレックス、贅沢コンプレックス、お金持ちコンプレックスに付込んで、値段を高くすると、ムキになって買いに来られるお客様がおられるわけですから、ある意味、こんな愉快な商売はないですね。

スーツで価値のある贅沢をするとしたら、その根拠は、

『相談贅沢』
『生地贅沢』
『縫製贅沢』

今日は、この最後の『縫製贅沢』について調べるべく、当『エドワード』とお取引していただいている縫製工場の工場長と4時間近く語り合った内容の一部を書きます。やはり品質についてが一番気になるポイントなのですが、誰かから聞いた、誰かを介した2次情報ではなくて、実際に工場に行ったり、実際に工場の人間に話を伺って、品質の正しい認識ができると思います。ちなみに、その工場は以下に説明する“ナンバー4”に該当します。現在試作として“ナンバー6”も縫製に向けて改善中です。

ナンバー2 大衆品 (購入者のの考え方:できるだけ安いスーツが欲しい、品質は最低限をクリアしていればいい)縫製175工程 300分(5時間) 指示されたことを指示された通りにできる、技『能』者が縫製する。工程数が少なく単純にすることでコストを下げる、できるだけ廉価で最低限度の品質を持ったスーツを仕立てる。

ナンバー4 中級品 (購入者の考え方:品質の高いしっかりしたスーツが欲しい。ただし、予算はいくらでも出すということではなく、自身が感じる値ごろ感の範囲内であって欲しい)縫製240工程 420分(7時間) 教えられたことを努力して習得し、教えられた術を安定してできるようになった、技『術』者が縫製する。値ごろ感から逆算したコストを意識した中で、その範囲内での最高品質を追求する。

ナンバー6 高級品 (購入者の考え方:最高品質のスーツが欲しい。予算は気にしない。そして縫製箇所によっては手縫いが必ずしも絶対だとはいえないということも知っている)縫製325工程 600分(10時間) 熟練の技『術』者たちが、ひとつの理論に基づいて組織的に縫製している。機械の方が仕上がりが手縫いよりもきれいにできる(※インターナショナルライセンスによって判断のガイドラインがある)部分に関しては機械で縫製する。合理的な考え方で最高品質の高いスーツを作る考え方。

例1)
地襟(じえり)は、マシンと手まつりではテンション(張り)が違う。ゆったりしていたほうが良い。
ナンバー2、4 : ミシン~50センチを手マツリでやると、80センチ~90センチ必要。1分。
ナンバー6 : 手まつり~50センチを手マツリでやると、200センチ~250センチ必要。ベテランでも30分。

例2)
腰ポケット
ナンバー2、4 : 自動ポケットマシン使用。多くて5工程。4~8分かかる。
ナンバー6 : 手縫い。15工程。40分かかる。

例3)
ナンバー2、4、6 : 一台300万くらいするマシンにてボタンをとめる。ナンバー6はボタンつけの際、根を14回巻く。

例4)
袖付けに関して、ナンバー6も、袖はミシン使用。袖裏は手作業。内の、ゆき綿と仕付けは手作業、そしてそでやまの縫いしろの間に埋める技術あり。グシ量(イセ量)も今は昔と違ってフリーハンドミシンに取り付け。

※注)手作業よりも縫製機械のほうが、仕上がりが美しく、作れるのであれば、合理的に高品質のスーツを作る手法としてその機械縫製は採用だ、というのがナンバー6的な考え方です。
とりあえず、今日は、ここまで。

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