2008/08/22

フェルメールを観に来た男

下の写真の向かって左の男、最初この写真(DORMEUIL2008年秋冬・生地ブック)を見た時そう感じました。美しいフェルメール・ブルーを 思わせるような色のストールを軽く巻いています。捻ってはいません。おそらく彼は平日の朝一に来たので、団体客の喧騒ではなく、静かな環境の中で鑑賞する 幸福を味わったのでしょう。

この膝を立てている状態はなんでしょうか?おそらく、靴紐が外れて、結び直したのでしょう。もとの体勢に戻 ろうとした時、斜前方に、セクシーなニコール・キッドマン風のブラック・シャドー・ストライプのかなりボデイにフィットしたパンツ・スーツを着た女性が颯 爽と歩いていたもんだから、数秒間、体勢を復元させることを忘れてしまい、固まったところです。右の男は無意識に襟元を正しました。



日本の美術館でも、平日の気の効いた時間帯に行けば、こういうスタイルの紳士がたまにおられます。60代、70代の年配紳士ですが。静かに爽やかに観ておられる姿が様になる方はたいてい年配の紳士です。やはりこのスタイルでハードなワックスで髪をツンツン立てたヘアスタイルではちょっと似合わないでしょう。

ところで、生地ブック見ていても、ファッション誌見ていても、大人の老舗スーツブランドは変わらずですが、最近ではモード寄りのアルマーニにしろ、老舗系スーパーブランドは、ほとんど髪型もみんな昔の映画俳優のルドルフ・ヴァレンチノ張りに、最低でもクラシックなスタイル、しばしば極端な撫で付け(ポマードで7・3)スタイルです。満員電車で目に突き刺さりそうになる爆発系のツンツン・ヘアーではなく、小さな頭に固めたスタイル。

それにしても、このツンツンスタイルは日本、中国、韓国の20代30代、40代ビジネスマン@アジアの特徴ですね。昨年上海、そして一昨年ソウルに行って強く確信しました。

1.極端なピタピタ系スーツ 
2.ツンツンヘア(とデザイン性が強い眼鏡) 
3.びっくりするくらいの尖んがり系靴

これらは典型的な韓国(ソウル)のおしゃれ好き若者・中国(上海)のおしゃれ好き若者、日本人のおしゃれ好き若者の特徴です。

それにしても、どうにもあの髪がハリネズミ的全方位に逆立っているスタイルは、迷惑としか思えません。満員電車利用者としては辛いところです。たとえば、狭い箱のクラブで、満員状態なのにハイテンションで一人にしては過分の面積を使いながら(広いホールで誰もいなければ、むしろ見てて気持ちイイのだけど)踊り狂っている、空気読めない人と同じストレスをもたらします。

話は変わって広告業界をはじめクリエイティブな業界におられればおられるほど、いざキメル時はクラシックにキメたほうが、より人間的に奥行きと深みを感じさせて良い、と思います。スーツにクリエイティヴィティーを求めることが、実は結構陳腐な姿勢だということに気づき、センスの演出よりも自分という人間のブランディング上の“格”の演出に焦点を絞ったほうが、よろしいかと思います。

以前、カンヌ映画祭のレッド・カーペットで、役柄を意識してか、戦士のような“オンリーワン?”なタキシードで登場した男。グラディエーターで数々の栄冠を手にしたけど、ワースト・ドレッサーの称号も同時に得た俳優ラッセル・クロウ。

かたや役柄でどんだけダイナミックにぶっ飛ばしていても、セレモニーの場面では、やんちゃ俳優からひとりの“紳士人格”へとチャンネルを切り替えて悠然と登場するジョージ・クルーニー。2人の評価は対照的でした。文字通り、役者が一枚上だった、ということでしょう。


           無地とはいえ、風合いがある、コクがある



深い森のやや暗い緑を思わせる生地。たしかシガーのソムリエのような方は、そのシガーを表現するときに『湿度の高い深い森の暗闇、やや湿った落ち葉を踏み 分けながら歩いている時に静かに漂ってきた森全体の香り、、、』みたいに言うのかもしれない。“生地のソムリエ”としては(今作った)、ワインやシガーに 負けないようなシンプルでもっとエレガントな表現を編み出したいものだ。実際触るのが一番だが。



この秋冬は茶系、とはよく言われている。ネクタイにしても茶と青という組み合わせはとてもあわせやすい。土と水の色だからだろうか?シックに決まるし、は めていて落ち着く。スーツにしても、ヤヤもすると妙に張り切っているように見られるストライプスーツも、青と茶の組み合わせなら地味派手で個性的。そして このスーツで職場からフェルメールを観に来てもキマる、というオチでした。



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