2017/02/02

Copel : オートクチュール・メゾン・コペルの進化




写真は、2016年末、Breakfast at Tiffany's を地で生きつつあるコペル(こと上原さん)@ニューヨーク。現時点でフェイスブックもインスタグラムもやっていないコペルは、直接の顧客のもとへ行きます、たとえ海外であっても、全体観が合っていれば。。職人を抱えた小さなメゾン=注文服の商いなりに、コペル・ブランドの信念に強く感じ入ってくださる100人のミューズたちとの出会いを世界を舞台にして、コツコツつくりあげつつあります。ある意味、王道すぎて、昨今では非常識かもしれません。最高の顧客をさがしている、と。

積極的にこちらが動くと、作り手は意思的に最高のクライアントと出会うことができるはずだ、そういう信念で動いています。マーケティングも信じていない。データを信じてブティックで服を畳んでぼんやり外を見て未知の顧客の来店を待っているスタイルは、ちょっと信じられないとコペルは考えています。受身で待つことを前提とした従来のアパレル的なマーケティング・データも机上の空論、ひじょうに空虚に感じる、と。運命は受身でなく、自分でつくれるはずだ、と。僕もCopel Advisor:顧問として動いています。




こちらは、昨年末のメゾン・コペルのアトリエ長、製作長の星さんの講演@文化服装学園byファッションスタディーズ。フレッド・アステア似のおだやかな紳士ですが、われわれファミリーの例外に漏れず、一般的なアパレル業界の常識からすると、強烈に異端的・反時代的なマインドで日々仕事に臨んでいます。つまり、新しいタイプの職人です。エドワードのきわめて英国的な装いを纏って(そらもちろんタイドアップして)、ニュールック時期前後、オートクチュール黄金期のすこぶるフランス的なドレスを製作しています。

皆、星さんの仕事ぶりには、“伊勢神宮からの風”とあだ名をつけていて、製作中の彼が放つ清浄な空気感には、サボり症のぼくも身が引き締まる思いがしています。まるで、純喫茶ウエストの厨房に貼ってある『真摯 ( しんし )』 、あるいは紳士、あるいは神事、といった風情です。製作伝票一枚仕上げるのにも、ふうふういってしまう、自らを恥じざるをえません。




ほぼ直前に帰国したコペルも参加、一瞬登壇しました。学生の方、先生の方、みなさま真剣に聴いておられました。星さんの語りも、いわゆる英国的なaffectation : 訥々とした、少々放送事故一歩手前の心配芸含みの高度な“間”が行き交うスタイルは星さんならではでした!今、テレビ文化が浸透しすぎていて、それがひとつの基準になっているので、皆せっかちに沈黙を埋めますが、それでは、情報を行き交っても、間や空白からくるニュアンスや情感はとどきません。沈黙したければ、そうすればいい、ヴィトゲンシュタインでなくても個人的にはそう思います。

コペル最高の相棒である、星さんは、シャツブランド 『 Astair : アステア 』 も展開しています。今日も納品でしたが、セミウィンザーの立体的な佇まいとか、ふんわりしてすばらしかったですよ。剣先9センチがウエストコートにパシュっと収まっていました。この全体の長さのバランスとかスーツのVの開き、ウエストコートのVの開きとの係り結びとか、そのあたりの形作り方、仕様、バランスはほとんど語られませんが、超大事で、視覚インパクト大なんですよね。。。丁寧にオーダーして実を取りましょうぜ(現実の全体のルックにフォーカスしましょう!)、と常々強調しています。




しばしば、星さん特集もしようと思っています。人生を愉しむ才能に溢れる星さん、コペルが一気に起こしたデザインを、これまた一気に形にする。思い切りのよさ、潔さ、一筆描きの精進はふつうのコントロール能力ではないので、日々の自分の感性との付き合い方が成績表のように出ます。無意識に足を運んだ旅先の景勝地の地平線の風景が一本の自然な線として描かれたり、ふと立ち寄ってカフェの窓辺でお茶をゆっくり飲んでいた叔母さまのジプシーテイストの装いがインスピレーションになったり、一年前に観たお気に入りの恋愛映画だったりと、すべては普段の習慣や暮らしの中で五感に収まったものがアウトプットされるだけですね。

昨年は金沢に二度ほど、紳士の装いについてトーク・ライブする機会があって、そこで参加いただいていた小西さん(いまでは企画を一緒にプロデュースいただくパートナーですが)から、東京でオススメの既成スーツのお店を教えてください、という質問に(本音で正直に語る、を売りにしているのですべからく率直に)こたえたのですが、1.バタクさん、2.天神山さん(1.2.どっちがどっちか曖昧)と応えました。その質問があった数日後に、骨董通りのハンバーガー屋で偶然バタクの川部氏に会ったので、訊いてみたところ、伊勢丹時代はやっていましたが、今はやっておりません、とのことでした。。。コペルこと上原さんとのめずらしい一枚です。。




で、2回目にはラルフ・ローレン、ブルックス・ブラザーズ、ポール・スチュワートのファッション要素のできるだけ少ないもの、という答え方をして、われながら、つまらない・気が効かん・ぼんやりしたダサい答えやなあ~と自己嫌悪になったことを記憶しています。気の効いたこたえを逆におしえていただきたいです。お客さん連れて行くので。。。まあ、ぼくも作ってはいるわけですがね。

そういえばコペルは、もともと老舗といえる都内の英国古着ヴィンテージ・ショップに勤務していました。彼女のお父様もすこぶるお洒落な方で、ツイードの輸入のポール・スチュワートのジャケットをさらっと軽やかにお召しでパーティーも来られていました。高校生時代にマックでバイトしハンバーガー大学を卒業し店長まで出世した(学生時代も)勉強そっちのけで学校以外の世界が好きだった娘に手を焼いていた、という噂ですが、なんらか生きる哲学をおしえていたのではないでしょうか。




心のふるさとといえる神楽坂、お兄さん分でもあるクライアントのU氏といっしょに。コードレーンの3ピースにエドワード別注のアルニス・タイをされています。靴もライトブラウンのコーレスポンデント・シューズを挿しておられます。コペルこと上原さんの個性溢れる逸話はつきませんが、たしかこの数日前か前日だったか、あまりに友人知人からの(心配からか)連絡が多かったので、メンドクサイならいっそ捨てちまえばいいんじゃないの?というアドヴァイスにインスピレーションを受けて一瞬で決心してそのまま水辺に投げ捨てました。


映画なら、遠くに放物線をえがいて、劇的にちゃぽーんと水しぶきが立つところでしょうが、案外現実はもっさりしていて、中途はんぱに投げ損ねて、ごく手前の物に当たって、ごく手前の水辺にぽとんと、落ちたという顛末でした、、、。まあ、乱暴ですが腹がきまってる人だなあ、と大物の片鱗を感じた記憶があります。そういえば、今期オリジナルのネクタイも完成してきました。ドレスアップした時代のスポーツがテーマだったので、2色の太めのレジメン・タイばかりを企画製作しました。個人アカウントのヤフーで販売する予定です。グリーンやヴィンテージ・ブルーや、グレイなど、難しい色目ですね。レジメンの向きは英国斜です。(税込み\23,760) 大剣9cm、小剣5cm、ネック4cmの職人泣かせです。。




骨董通り、FIGAROにてU氏と。ひさびさの近況アップデート兼ねた新年会をぎりぎり1月31日に(笑)人生論やロマンス話で盛り上がり、エンドレスなひとときでした。ありがとうございます。おしゃべり好きのわれわれの良きトーク仲間。オーセンティックな装いがどれだけ威力があるか、御自身の実体験でお教えくださり、大いに励みになっています。トラッドの着こなしのあらゆる変化球も着たおされるので、調子に乗ってコードレーンやシアサッカースタイルをぐんぐん推し進めてしまった一昨年でした。コペルの世界進出にもいち早く注目されて、皆でファミリーの暖かさを持って乾杯に溢れる一年であることを誓った愉しい夕べでした。。。